【特別座談会】 クリニック「継承開業」経験者の声 ~ 第三者医院継承で踏み出す未来への一歩~ インタビュー
クリニック継承開業経験者:特別座談会 ~オープニング~
堀江聖夏(以下、堀江):それでは、皆さんよろしくお願いいたします。司会進行を務めさせていただく、フリーアナウンサーの堀江聖夏(ほりえみな)です。そして、メディカルプラスの神子(かみこ)さんです。よろしくお願いいたします。
神子誠(以下、神子):株式会社メディカルプラスの神子です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
堀江:先ほどはクリニックを譲渡された方々の座談会でした。今回は譲り受けられた方々の座談会になります。
神子:貴重なお話が聞けると思いますので、とても楽しみにしています。
堀江:(すでに)お会いされた方も、いらっしゃいますか。
神子:実は渡邉先生は私がサポートさせていただいております。
堀江:そうなのですね。今日はじっくりゆっくりお話を聞きできたらと思っております。よろしくお願いいたします。それでは皆さん、第三者医院継承はご存じでしょうか。日本にはこの第三者医院継承という選択肢がありますが、その情報が不足している医師が少なくありません。開業検討中の医師、実際に継承開業を考えている方々、また、第三者医院継承について聞いたことがない方も多いと思います。本日はこの座談会をご覧の方の中にも当てはまる方がいらっしゃるかもしれません。そして本日は実際にこの医院を譲り受けられた方々の声をお伺いする特別座談会を設けましていただいております。本日はよろしくお願いいたします。
良かったという成功体験だけではなく、実際に初期の期待との違いなどをお話いただきましたら、医院継承に関心を持つ医師の皆さまへの新しい視点の提供と大きな励ましになるのではないかと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
医師のご紹介
堀江:それでは早速、本日ご参加いただく医師の皆さまのご紹介です。「医療法人社団plusW」理事長兼「中野駅前メンタルクリニック」院長の大土広将先生です。続いて「医療法人社団ミネルバ理事長」兼「なかはら内科クリニック院長」の岸智先生です。続きまして「医療法人社団五条会理事長」兼「iこころクリニック日本橋」院長の渡邉功先生です。本日はよろしくお願いいたします。
そして、渡邉先生をご担当されたのが神子さんということで、改めてよろしくお願いいたします。今日、このような座談会となりますが、なんと渡邉先生と大土先生はお知り合いだという。それはここ(メディカルプラス)きっかけではなくて?
渡邉功先生(以下、渡邉先生):そうですね。
堀江:どのようなきっかけでお知り合いに?
大土広将先生(以下、大土先生):2人とも精神科でクリニックさせてもらっているのですけど、精神科クリニック院長のサークルみたいなのがありまして、それを渡邉先生がつくられた。そこに呼んでいただき、今に至ると。
堀江:「メディカルプラスでご縁があった」ということですか?
大土先生:メディカルプラスは全然知らなかったです(笑)。
渡邉先生:最近「実はそうだったんだ」って(笑)。
堀江:最近お知り合いになったのですね。サークル…何をされるのかちょっと気になります。後ほどズバリお聞きしたいと思います。では本日はよろしくお願いいたします。
質問➀「開業のきっかけは?」
堀江:最初の質問「開業のきっかけ」からお伺いしたいと思います。大土先生、開業の最初のきっかけは何でしょうか。
大土先生:きっかけですか。もう縁があったからだと思います。継承の方が楽だなと思い探していたのですが、ここに不意に転がり込んできました。それでやってみようと思った形です。
堀江:第三者継承の継承が不意に来たのか、メディカルプラスさんのご案内が来たのか。
大土先生:継承の話がきました。
堀江:それはいくつもあったのですか。
大土先生:いや、一つだけです。
堀江:例えば「新規開業」なのか、それとも「継承する開業」なのかということで言うと、もう最初から継承の方が?
大土先生:(いろいろ)楽だろうなと。やれるのであれば継承がいい、とは思っていました。
堀江:岸先生の開業のきっかけはどうでしょうか?
岸智先生(以下、岸先生):僕も元々地域の医者をやりたかったんです。ただ、勤務医時代の方が長いわけで。2014年に留学から帰国してから専門医を全部取得し終えた後、「では夢である開業をしようかな」と。そうするとやはり自分の強みとなるもの、例えばそれが専門医の資格を取得したりが(開業しようと思うに至った)きっかけだった、というところです。
堀江:渡邉先生はいかがでしょうか?
渡邉先生:開業のきっかけですよね。私は勤務医をしていた時に子供が3人いまして。ちょうど2017から2018年くらいに3人目が生まれた時でした。都内に住んでいたので、養育費であったり、持ち家もその時点で買っていたので、かなりアルバイトもしながら勤務医をしているという形で。自分の時間が全然持てないという中で「このままだとちょっと過労死しちゃうんじゃないか?」(笑)ということで。そこで、ある程度こう自分の時間を取れるような体制を作ろうと考え、2019年に日本橋に開業することにしました。
堀江:最初は33歳の若さで開業を。
渡邉先生:そうですね、33歳。2019年で開業しています。
堀江:その若さで開業されて。なかなか珍しいと思いますが、最初は継承開業ですか?
渡邉先生:最初は新規(開業)です。
堀江:その後に継承開業をすることに?
渡邉先生:そうです、今クリニックを3つ持っています。3つ目から神子さんにお世話になって継承開業、という形です。
堀江:1つ目と2つ目は新規で、 3つ目で継承開業にされた理由はなんでしょうか。
渡邉先生:最初に日本橋にクリニックを新規開業して2年ぐらい運営していく中で、分院展開も視野に入れるようになりました。色々な情報を見ていると、M&Aという手段が医療業界でもクリニックなどに適用されることがあると知りまして。(M&Aという手段は)企業や上場会社…株式会社などの関わり方を想像していましたが、医療の中でもそういった形が取れるっていうのを知って興味を持っていました。そんな中、非常勤で勤務している事務所の方が、たまたま掲示板というかメルマガみたいな場で情報を得て「こんな情報がありますよ」と。多分去年、今年の終わりか冬ぐらいですかね、メルマガだったかと。
堀江:1,2院を開業される中で「第三者継承」はご存じなかった?
渡邉先生:継承(開業)というのは精神科ですと…精神科は、その患者さんは先生についていくものだという固定概念というか、そういうイメージがありました。引き継ぐということに、精神科医としてはイメージが浮かばなかったです。精神科や心療内科もそういう風に継承されている事例などを見たりして「ちょっとチャレンジしてみようかな」ということで、アプローチさせてもらいました。
堀江:神子さんどうでしたか、新規開業に続いて継承された渡邊先生は。
神子:やはり新規開業とはまたちょっと異なる視点で検討していただかなければいけない要素が幾つかあったので、その辺りを渡邉先生とやりとりをさせていただきながら着実に進めていったのではないかな、というような記憶を思い出します。
堀江:医局や大学病院に働かれている先生達にとって、この第三者継承を知らなかという方も多いのですね、今お話を聞いていると。そこに対してどうアドバイスやお話を切り出して、神子さんはお話しされていくのですか?
神子:そうですね。私共はどちらかというと、お問い合わせをいただいてからの方がきっかけとしては多いです。ただ思い悩んでいる先生はやっぱりいらっしゃるのかなとは思っています。新規開業の良さもありますし、継承開業の良さもあると思いますので、私共はどちらを否定肯定するわけではなく、やはり先生方が今理想とされているものについて、どちらがそのニーズを満たせるのかというようなところからのお話なのではないかなと。
堀江:神子さんから何かご質問はございますか?
神子:大土先生は継承開業・新規開業でご検討されるきっかけといいますか。例えば、勤務医時代にご苦労があったので開業に踏み切るなり、何かそういった選択をされるまでの背景を、お聞かせいただけますか?
大土先生:大きな病院に勤務していると、どうしても様々なしきたりや規則があります。そういうものはなかなか壊せなくて「自分の色」が出しづらい、というようなところを感じていました。開業すれば自分の個性を反映した医療が提供できるようになる一方で、クリニックを経営しなければならないという責任もありますから、ビジネスと医療のバランスが崩れちゃいけないなというのはもうずっと思っていまして。なかなかそのバランスを取るのが難しいな、とずっと思っていました。そんな中で色々なクリニックのモデルを見ながら、自分の技量を重ね合わせて何とかやっていけそうだなと思えたことと、あとは…やっぱりクリニックって「最前線」なので。最前線のクリニックに課される役割ってあると思うんです。その役割に対して、僕の医療が追いついているなという自信…「自信」って、ないと駄目だと思うんですよね、おこがましいですけれど。その自信がないとやっぱりクリニックはできないと考えていましたが、そういうものが追いついてきたので、じゃあやってみるかという思いになりましたね。
堀江:経営についての不安もあったかもしれませんが、一歩踏み出す決断ができたのですね。
大土先生:そうですね。
質問➁「継承開業を選んだのはなぜ?」
堀江:開業には「新規開業」「継承開業」がありますが、「継承開業を選んだのはなぜか」ということでお聞きしていきたいと思います。大土先生、あらためて。
大土先生:単純にやることが少ないだろうと思っていました。そこです。
堀江:岸先生はどうでしょうか?
岸先生:開業したいと考えた時、その「継承開業」というものがまず思い浮かばなかったんですね。新規開業のイメージしかありませんでした。メディカルプラスさんのようなコンサルであったり、卸がやっているような開業支援や税理士がやっているような開業支援、不動産会社など、色々なコンサルがあって。何社か聞いてみたんです。基本的に新規開業の話からされるんですけれども、そうするとやはり1年半から2年ぐらいは色々設計図から契約から含めてかかりますと。時間軸がちょっと長いなと。自分はもともと循環器内科の医者だったんですけど、そうすると何かそこまで待ちきれないなということがありまして。メディカルプラスさんから「実はこういうM&Aで引き継ぎのようなシステムがあるんです」という話を聞いた時に、そんなの知らなかったというところから始まって。担当の濵田さんからいろいろお話を聞くと、これはすごく魅力的だな、時間もそんなにかからなくて、かつ自分の縁を得るところがあればいいかなと。それで継承開業になりました。
堀江:大土先生も岸先生もスピード感を大切にされています。大土先生も年末年始に話が進んでいます。12月から始まって1月5日に話があり、もうそれで契約を…
大土先生:よくご存じですね。はい、1週間で決めました(笑)。
堀江:やはりスピード感が大事ですか?どうでしたか、渡邉先生。
渡邉先生:そうですね。私は3つ目のクリニックで「継承」という形に結果的になりましたが。最初(1院目)は逆に全くゼロイチじゃないですけど、日本橋で(クリニックを)作って、次に虎ノ門(2院目)という形でやってきました。新規・継承を考えた場合、あまりそういったこだわりはどうなのだろうみたいな気持ちもあって。今後分院展開するにあたって、より効果的にスピード感や効率性などを考えた時に、継承というのを今回やってみて、かなり時間とコストがやっぱり全然…結構違いますね。
新規開業のリスクについても、ゼロイチでいろいろ支援してくれたりします。業者さん卸さん薬局さん。まず「信頼できるか?」みたいに怖かったりもしますし、不動産の内装で結構失敗されている先生の話も聞いたりするので。我々メンタルクリニックはイニシャルコストが低いですけど、とはいえその内装についても、1,000万円、2,000万円と必要になります。そういった所はかなり恐怖が付きまといます。継承ですとそういったリスクは軽減され、ある程度も中身も見えています。今回やってみてスピード感とコストの面、あとは「透明性」という部分ですか。その辺は非常に良かったなと。今後展開していくにあたっては非常に強い武器になるのかなと。
堀江:展開していくにあたっては継承開業の方がコスト・パフォーマンスの面、またスピード感を持っていかれるといったところですか。
渡邉先生:その先生の趣味趣向、もちろん理念もあると思いますけど、非常に選択肢としては強い味方になると思います。
堀江:新規開業と継承開業、どちらもご経験されている方ってそんなにいらっしゃらないですか?
神子:医療法人で開設、継承を検討していただいている先生においては、新規開業から入っていただいているケースの方が多いのではないかなと思います。渡邉先生においては、分院を開設するという中で、今回継承を選択していただいているということですね。
堀江:神子さん、インタビューでお聞きしてない以外のもっと具体的な内容で、新規開業のメリットデメリットをお聞きしたいなと思います。
神子:新規開業であればこう立地であったりですとか、それこそ内装であったり医療機器であったり、もちろんスタッフの面もご自身で好きなように選択をして開業する、と。一方、継承開業というのは売上や患者さんが既についている一方で、もう固定されているものを一定のもので引き継ぐといったところもあるかと思います。大土先生からまずお聞かせいただきたいのですが、継承開業をする上での、ご自身が感じたメリットとデメリットについてお聞かせいただければと。
大土先生:メリットはやはりスピード感だとは思います。もうそこに尽きるかなと、僕の場合はですね。デメリットは、僕は恵まれましたけど場所が選べないというのは、結構大きなデメリットにはなるのかなとは思います。それくらいですかね。後は僕の場合、前任の先生が体調不良でクリニックを売りに出すというパターンでした。そうすると「待ったなし」ですから引き継ぎもうまく行かなかったし、先生とはお会いもできなかったです。縁…タイミングが合えばすごくいいのでしょうけど、タイミングが合わないと。だからやっぱり物件というか話も見つからないのだろうなと思います。
堀江:岸先生いかがでしょうか、メリットとデメリットですが。
岸先生:担当の濵田さんから、そのメリットデメリットの面をたくさん説明されました。最大のメリットは今お話があったように多分時間軸のところで、もうそこに現物があるので、自分でそこに納得して気に入れば手を上げることができるということ。もちろん今継承しようとしているクリニックの業務業績や、そこに入っている患者さんが自分で今度引き継ぐことがちゃんとできるかなども全部知ることができるので、そこが一番大きいメリットだと思います。新規開業って、それこそいろんなコンサルの人から「最初の2年間はすごく苦しい時期を送りますよ、通帳とのにらめっこが始まります」ですとか言われます。最近ここ半年でも僕の後輩が二人開業しましたが同じ悩みを抱えています。そういった意味で、必要最低限の収入と患者さんと収入があるというところが、大きなメリットだと思います。
多分デメリットは、きっとそのクリニックの元々先生が好きでいた患者さんが、いかに去っていかないかというところだったと思います。そこのデメリットもちゃんと担当の濵田さんが教えてくれて、引継ぎ期間を作ってもらいました。1ヶ月くらい隣の診察室に僕を入れてもらって、そこで患者さんをちょっと担当させてもらったりしました。それでそこのクリニックの流れをうまく引き継げることができました。デメリットをうまくメリットに変換することは可能だったかな、とは思っています。
堀江:その引き継ぎ期間というのは、自分から例えばこの1カ月間、その医院に非常勤で入りたいということはできるのですか?
神子:そうですね、お譲りされる先生と譲り受ける先生との間で相談をしながら、やはり譲られる先生もしっかり患者さんも引き継いでほしいという強い希望がありますので、そこにおいてお互い同じ目線でお話をすれば、おおむねこう協力していただけるのではないかなというふうに思います。
堀江:渡邉先生どうですか、メリットデメリットですが。
渡邉先生:まず1つ目は新規開業でしたので、患者さんが来るのかもうやってみないとわからない部分がありました。その点に関しては本当にブラックボックスというか、もう恐怖しかないですけれども。M&A 継承に関しては、実際に一日に何十名の患者さんが来るのかといったリストもいただけますし、ちゃんと(患者さんが)来ている、そして売り上げが立っているという確固たる実績がある(示してもらえる)ので。ドクターとの相性はありますけども、その導線もできているわけで、あとは技術だったり相性だったりということになりますが、(患者さんがいる)そこは非常に大きいですね。すごく大きい部分です。
デメリットに関しては、新規と比べて多分そこまで大きなことはないのかなとは思うんですけど、よく聞くのはやはり引き継ぎの問題です。ドクター同士でこだわりが衝突し頓挫するケースもあると聞きます。当院の場合は前任の先生も非常に穏やかな先生でスムーズに進みましたが、そのドクターとの相性や人間関係の難しさは避けられない部分なのかなと。また例えば医療法人ごと買うみたいな大規模案件は未経験なので、借金がどのぐらいあってどういう引継ぎでなどで、税理士さん・弁護士さんは場合によって関与することもあると思います。逆に引き継いだ結果デメリットになるということも、M&Aなのであるのかなと。その辺ですかね。
堀江:具体的な財務状況についても後程お聞きしていきたいと思います。
質問➂「検討期間はどのくらい?」
堀江:「検討期間は?」といったご質問をしていきたいと思います。スピード感を持って、それでもやっていきたいと思いますが、具体的に何件くらいの案件を検討されたかといった点で、大土先生どうでしたか。
大土先生:ひとつです。
堀江:それはもうピンと来たんですか。
大土先生:そうですね。
堀江:実際見に行かれたのですか?
大土先生:クリスマスくらいに話がありまして。年が明けて前任の先生の奥様とお会いさせていただいて、そこで決まったという形です。
神子:トップ面談の際に、意思決定をする材料などがあったりしましたか?
大土先生:場所を見ただけで「ここだな」と思っていたので。僕の中で決まっていたんですよね。だからもう選んでいただく側だったので、何とか笑顔を絶やさず(笑)お話しをしました。
神子:トップ面談の時に意識されていたことが何かありましたか?
大土先生:粗相のないように安心感を与えるような(笑)。ちゃんとネクタイでいきました。
神子:ありがとうございます。岸先生はいかがですか?
岸先生:実は、僕もすごく短かったです。継承の話は、もうメディカルプラスさんからの話でしたが、(大土先生と)同じように直感で決めました。ただやっぱり懸案事項として、駅から遠い。よく「駅チカの方が絶対いいぞ」とクリニック経営の中で鉄板事項にありますが、約1.2キロ離れているところでした。ただそれなりに競合のクリニックがなかったりもしたので、僕もピンと来てご縁を感じて。ここで行こうと思いました。ですから(検討期間は)実はすごく短かったです。
神子:ちなみに期間はどれぐらいでしたか。
岸先生:どのくらいだったでしょうね、もう2017年なので結構昔の話ですけど、1か月くらいですかね。お話が来て3か月ぐらいだったので、そんなに検討しなかった気がします。
神子:何かトップ面談の時に気をつけられたことですとか、ありますか?
岸先生:気をつけることですよね。なんか今って情報化社会で、ホームページを開くと、その先生の人となりというのがある程度を見ることができるので。ただ口コミって思い切り振り切れているから(笑)。どれが真実かってなかなか難しい話ではあるんですけれども、ちゃんとそこの地域に思い入れがあって、駅近ではないけれども、そこの場所で開いたっていうそこの多分思いが一致していたというのもありますし。そういった意味でそんなにトップ面談だから気を遣うとかいうこともなく、多分僕と同じ価値観なのだろうなと思いながら挑みました。
堀江:よほどのことがない限り、場所をみて人とお会いして良いと思ったら、そこで決まりということですね。渡邉先生は?
渡邉先生:私は3つほど検討させていただいたのですけど。多分今回の案件を見てからは、もう1週間以内。この情報を見た瞬間「あ、ここ濃厚」とゴーサインが出ていて。現場も実際に見に行かせていただいて、1か月以内ぐらいに前任の院長先生とお会いするまでは、もうとにかく急げという形で。時間が大事かなと思ったので、そこの部分でしたね。
堀江:実際は現地の面談の前に、目に見えてない…例えば病院の財務状況やその資産、負債の部分というのは見学行かれる前にわかるのですか?
神子:まず情報開示をさせていただく際に、既存のクリニックの患者さん数であったりですとか、売り上げであったり、どういった資産があるのか、譲渡の背景などということをアドバイザーからまずはお伝えさせていただいたうえで、それぞれの先生方がお引き継ぎすることが可能かどうかということを検討していただいたのではないかなというふうに思います。
堀江:例えばここは毎月どのぐらいの売り上げがあって利益が出ているので、このぐらいで回収できるというのも、その場でわかるのですか?
神子:そうですね。まずアドバイザーの方から収益力、利益がどれぐらいあって、こう返済していく期間というのが恐らくこれぐらいではないでしょうか、というような簡単な御案内はさせていただいているのではないかな、というふうに思います。
堀江:ちなみに今お聞きしたお話ですと、例えば大土先生には「中野」というご縁、そしてタイミングがあったと思います。そうった売り上げの部分などは見られたりしたのでしょうか。
大土先生:見せていただきました。本当に決める1週間で。最初にメディカルプラスの濵田社長と会った時に、見せてもらったと思います。
堀江:そこの部分も皆さま加味した上で、場所や先生との相性であったり、ほかに何を見ていましたか。それこそ今Googleの口コミですとか、それ以外に目に見えるもので調べる方法はありますか?
渡邉先生:私の大きな決め手は診療時間。午前中しかやってらっしゃらなくて、徐々に縮小モードに入られていって。週5日で午後も空けたら単純に利益は倍になるという形だったので。凄く分かりやすい部分ですね。
堀江:その診療時間も大きく影響してきますか?
神子:そうですね。やはりこう先生方もだんだんこう年齢を重ねてくると、ご自身の体調があって、少しずつこう先細りというか、診療時間を短くしていったりだとか、曜日を短くしたり少なくしたりだとかっていうことがあると思いますので、そこが開設したからまるまるすぐにということではないかもしれないですが、大きな伸びしろであることには違いないかな、というふうに思います。
堀江:立地も良くて条件も良ければ、面談しに来る方の人数も多いですか?1人2人ではなく例えば5人とか。
神子:そうですね。中にはこうたくさんの候補者の方が手を挙げるようなケースがあったのではないかなと。岸先生いかがでしたか。
岸先生:何かその話ありましたね、「先生、ほかにも手を挙げている先生がいますけれども」(笑)。まぁあるでしょうね、とか思いましたが。そういう心理的なところで、そこで選んでもらえればいいなというのはもちろんありますね。もうおっしゃる通りでやっぱり財務状況って結構大事で、そこの話って多分開業しようかなと思った先生って、例えば内科であればどのぐらいかかるというのはもうある程度推察できるんですね。でそうすると、1日どのぐらいの患者さんが新規開業だと1年目2年目3年目でこれぐらい増えていくぞという予想もある程度つくわけなんですね。そうすると僕の継承したところは、そうしたところはやっぱりちゃんと自然的想像通りの計画どおりの増え幅だったので、多分このまま僕が引き継げばその後また伸びていくのだろうな、というようなところがありました。そういったデータは契約すれば情報提示していただけるので、そういう安心感はありますね。
神子:既存のクリニックの外来の患者層について気になる点はありましたか?大土先生、いかがでしたか?
大土先生:気になりますけど、特に精神科はですね、やはり医者についている患者さんが多いので。気に入らなければ違うクリニックに行くだろうし、気に入っていただければ続けてくださるでしょうし。というところで、淡々とやっていくしかないかなというふうには思っていましたけどね。何人来ているとか、そういう情報はありましたけど、言葉を選ばずに言えば、あまり期待していなかったというところはあるとは思います。
堀江:岸先生はいかがでしょうか。
岸先生:今、すごくいい質問だなと。私、そこの秋葉原の病院で勤めていたんですね。そうすると、そこを中心に江戸川区だったり、足立区だったり、いろんなところに勤務外勤という形で行くんですけれども、患者層全然違いますね。そうすると、いま僕が継承したクリニックは、川崎市の武蔵小杉というところで、これから人口が増えていくというけっこう稀な地域なんですね。今もどんどんマンションが建ち、今後もまた建つというような感じのところで。そうすると、僕たちみたいな40代とかの働き世代の人たちがいっぱいいるので、一緒に歳を取っていかれる。だから、そういった意味ですごくいいところかなとは思います。
神子:渡邉先生はいかがですか?
渡邉先生:前任の先生が女性の先生で、その先生につく(患者さん)がいまして、スタンスというか細やかさだったりは違ったりするので、その点の相性みたいな不安はありました。結局今の先生も非常勤で残ってくださることになり、そこはそのまま患者さんも継続していただくという形になりました。実際やってみて、現状新規でやっていたクリニックと、(引継ぎを受けた溝ノ口の)クリニックで似ているので、安心できるかなと。
質問➃「引き継ぎはどのように?」
堀江:次は「引継ぎはどのように?」といった点を深掘りをしていきたいと思います。この引継ぎの期間が結構大変で、不安に思うこともあったりしたのではないでしょうか。大土先生、引き継ぎの期間はどうでしたか?
大土先生:前任の先生が倒れてしまったので直接話すことはなくて。奥様と一緒にお二人でやられていたこぢんまりとしたクリニックでしたので。奥様がうちの事務を一人連れて行きまして、その事務の人にいろいろやり方とかレセコンの使い方とか教えてくれたりしていましたけど。もう一番困ったのは事務の人じゃないかなと思います。医療に関しては、僕らはもう医療しかできませんので、そこに関してはあんまり困ったことはなかったんですけど、事務の方が大変だったなと思いますね。
神子:具体的な事例などありますか?
大土先生:クリニックでいろんなやり方がきっとあるでしょうけど、今回来てもらった事務の方は、医療事務自体が初めてだったので。薬の名前ももう何か外国語にしか見えないし、相当大変だったみたいですね。
堀江:やはり引継ぎのご苦労はあるのですね。大土先生のように「引継ぎの期間がない」ということもあるのでしょうか。
神子:そうですね。やはりまだ健康である際に検討していただいている先生もいらっしゃれば、やはりこう体調を崩されてしまって、急いで探していらっしゃるというようなケースもあって。もうまさに大土先生はそういったケースを検討いただいたのかなと。
堀江:そういった場合だともうご自身で事務の方と(やりとりを)?
大土先生:そうですね。手探りでそれはそれで楽しかったと言えば楽しかったですけど、多分あまり参考にならないかもしれないですね。
堀江:スタッフの引き継ぎとかはいかがでしたか?
大土先生:奥様だけだったので。奥様の仕事を事務の人にしてもらうという形だったので、分かりやすいは分かりやすかったと思います。でも覚えるのはやはり大変だったと思います。
堀江:岸先生はいかがでしょうか?
岸先生:継承した日が11月下旬だったのかな、2017年の。で、実は僕が外勤に入れさせてもらいましたが、今の電子カルテもIDが今それなので、今この話思い出していました。だからそこから約1か月少しぐらいの引き継ぎ期間があったんですね。だからそこで隣に元々いる院長先生がいて、その患者さんとのテンポだったり、事務との流れの導線だったりとか、いろいろ見ることができたので。ですから1か月ぐらいあったので十分できましたね。その後の流れも事務的なところとか看護師の流れとか、全然僕は変えようと思ってなかったので。むしろ僕がそれを、本当に内容全体を継承したという形で。そういう感じだったんです。
堀江:非常勤で週何日勤務(だったのでしょうか)?
岸先生:週1だったですかね。週1でいかせてもらって。
堀江:具体的にその院長さんの動きをみてですか。患者さんの引継ぎはどのように?
岸先生:そうですね 。隣に未来の患者さんがいるわけで、実際に僕も患者さん当たらせてもらったりするわけで。そうするとどこで悩んでいるのか電子カルテなので、今までも内容も全部見ることもますし。こういう患者層なのだなという安心感も、もちろんありますね。
堀江:電子カルテは導入されたのは岸先生?
岸先生:いや元々ありました。全部もう本当に何も変えずに、内装も変えずスタッフも変えず、患者さんも変えず、屋号も変えず。医者だけが変わったという(笑)。
堀江:先ほど譲渡される先生のお話をお聞きしていたら、そういう事務作業というかその(諸々の)パスワードなど「細々したものをちゃんと受け渡すことができなかった」と話されていて。電子にするっていうのも一つのアイデアでしょうか。電子カルテにしてしまえばその一つで済む。ありがとうございます。渡邉先生は?
渡邉先生:そうですね、元々クリニックは紙カルテでした。当院になってから、今本院の方で使っている電子カルテで統一しよう、電子化を進めるというところです。私も本院の方の診療はありながらだったので、私の限られた時間ではということで事務さん中心に結構動いていたので、事務さんへの負担はすさまじかったのではないかな、と。頭が上がらないです。でも神子さんのサポートもいただいて、何とか(形にはなっているかなと)。LINEグループを作って(そこに)院長先生も入れて今時な感じで進めています。
ただ引き継ぎといっても一瞬でできるものではないので、2か月ぐらいかかりますかね。その先生にも直接週に2回ぐらいはLINE電話をしていましたね。メッセージを送ってLINE電話していました。やっぱり直接コミュニケーションを取ってはいましたね。譲渡される先生も(経営が)うまくいくかというのが、不安もひしひしと伝わってくるので。そこに応じつつ、あとは事務周りの部分の引き継ぎはもう事務さんにメインで動いてもらって。結構大変だったと思いますが「なんとか」という形でしたね。
堀江:お互いの情報交換をいかに沢山するかも大事ですね。この引き継ぎをスムーズ進めるポイントはありますか?
神子:譲渡契約書を締結するまでは(先生方は)直接コミュニケーションを取るのではなく、アドバイザーを介してコミュニケーションを取っていたかと思いますが、譲渡契約後のコミュニケーションをいかに早くとりつつ、先生と物事の進め方を決めるかというのが、結構重要なポイントではないかなとは思います。
堀江:例えば渡邉先生の場合はグループを組んだりして、すぐにコミュニケーションが取れるとおっしゃったと思いますが、中にはそういうアプリを使ってない方も多いと思います。そういう場合は直接的なやり取りをしている方もいらっしゃるんですか、先生同士で電話して。
神子:コミュニケーションツールで使えるものは、恐らく全て使っていただいているのではないかなと思います。電話であったり、メールアドレスであったり、そういったものが主ではないかなと思います。
堀江:距離感というものが凄く大事になってくるなと思いますが、そこも調整しながらやり取りをされているのですね。
神子:大土先生は譲渡された先生が体調を崩されて、そういったコミュニケーションがなかなか取れないケースです。
大土先生:本当に医療の引き継ぎ自体は問題ないです。事務の方の引き継ぎは奥様に本当に電話を逐一かけたりしていました。患者さん一人一人について確認したいことが沢山あるので。精神科は公費といって、保険で面倒な話が沢山あります。奥様に直接電話をしたり区役所に電話したり、都庁に電話したり。いろんな人に助けられてというか。(事務の)引き継ぎ大変だったと思うので。
神子:そこが苦労されたポイントですかね。
大土先生:僕じゃなく、チームの人が苦労しました。
堀江:薬局の方にも助けてもらったのですね。
大土先生:はい。薬局も近くによくしてくれる薬局があって。色々教えてもらったりしました。人に恵まれたと思います。
神子:岸先生はいかがでしたか?引継ぎ期間中のコミュニケーションなどについて。
岸先生:メールで逐一やらせてもらいました。というか週1回行っていましたので、そこでちょっと立ち話的な感じで「これどうしましょうかね」とか、色々やっていました。課題があって、内科でも消化器内科なんですね。僕は循環器と糖尿病内科なので、ほんの些細なところですけど、消化器内科の患者さんもやっぱり重症そうな人とかいるんですね。あと内視鏡をやっているようなクリニックですが、私は(内視鏡が)できないので「いい先生ちょっと紹介してもらえませんか」と知り合いの先生に外勤で来てもらって、内視鏡をちょっとやってもらったというような、そういうやり取りはありましたね。メールもできますし直接会っても(引継ぎはできていた)そこで色々ことが運びやすかったと思います。
神子:何か引継ぎ期間中にご苦労された経験とかありますか?
岸先生:多分、やっぱり僕じゃないですよね。事務だと思います。今保険の話をしましたけど、特に聞いている方々はきっと医療関係のドクターだと思いますが、診療報酬の内容が変わる。すると今まで内視鏡の診療報酬で算定していたのが、今度僕だったら糖尿病でインスリン注射とかちょっと特殊な算定をしないといけない。そこの部分が医療事務は勉強をし直さないといけないというところがやっぱりあったので。そういうところは多分、苦労したと思います。
神子:勉強をするために時間を作るなど、何か試行錯誤されたことはありますか?
岸先生:お互いに「こういう患者さんが増えますので」と。治療行為や疾患名に対する想定される診療報酬の算定のところをリストアップして、「こんなのが多分出るので、ちょっと勉強しておいてください」というような感じでやっています。
神子:渡邉先生は、ご連絡はLINEやLINE電話ということですが、引き続き期間中にご苦労されたことはございましたか?
渡邉先生:そうですね。レスポンスを早く返すという感じですかね。その時点で分院がふたつあったので、結構経営もてんてこ舞いの中での3院目で。まだ続く可能性はあるんですけど。いろいろ管理を見ながらの「事務さん疲弊しないかな?」とか「院長先生大丈夫かな?」とか、とにかく(レスポンスを)速く返すというところですかね。先生としてどういう理想で迎えたいというのは、東京と神奈川だったので、直接お会いする機会がそこまで私も作れなかったので。実際何でしょう、先生の理念みたいなものは、電話だけだとなかなか(伝わらない)文字だけだと伝わりづらい部分もあって。そこについて結構ひやひやしていたというのはありますね。
堀江:このお互いの不安要素を取り除いて安心できる環境を作るというのが、凄く大事になるんですね。
質問➄「継承後のクリニックは?」
堀江:それでは「継承後のクリニックの状況」をお聞きしていきたいと思います。スタッフさんを引き継がれた方は。大土先生はどうでしたか。
大土先生:元々のクリニックはもう院長と事務おひとりだったので。事務の方(奥様)はお辞めになられましたから、総入れ替えという形になりました。
堀江:岸先生は?
岸先生:僕の場合は医者だけが変わって、ほかは全部、従業員は揃っているというような形でした。
堀江:例えばコミュニケーションなど相性はどうでしたか?
岸先生:基本的に僕は合わせることができるんです。そこのクリニックのカラーを損なうことなく、僕がアジャストしていく。ですから何も多分変わっていないと思います。
堀江:余談ですけど、岸先生のインタビュー動画(※メディカルプラスホームページの『お客様の声』)で、循環器内科は決定断が早い、合わせることができるとおっしゃっていて。「循環器内科の先生ってそうなんだ」と勝手ながら思っていますが。岸先生のお人柄も大きくありますよね。渡邉先生どうですか?
渡邉先生:そうですね。先生と事務さんが5人ほどいらっしゃったのと、あとスポットで看護師さんがいらっしゃいました。当院に引き継いだ後はその先生がちょっと勤務を縮小した形でそのまま残っていただくのと(その中から)事務さんが2名ほど残っていただいて。事務さんにとって半日から1日勤務時間が増えるところですので、どうしても継続が難しいという方が半数以上いらっしゃった。そこに対応できる事務さんには来ていただくみたいな形で。今診療時間を拡大していくにあたっては法人のスタッフ、都内のクリニックのスタッフにサポートしていただいたり、看護師さんに見ていただくような形で。
堀江:やっぱりそのスタッフさんとの相性・コミュニケーションもありますよね。院長だけではなくて地域の方々、患者さんとの相性もありますよね。神子さん、具体的にはどうですか。
神子:やはり新しくこう切り替える際に、雇用主が変わるというところも大きな要因で、お引継ぎできる・できないというようなケースがあるのではないかな、と思います。
堀江:ズバリ継承前と比較して、売り上げというのは増えていますか。掘り下げた点になりますが、大土先生。
大土先生:前のクリニックはもう院長先生のご体調が悪かったので、あまり診療できていなかったのですが、1日に20~30人くらい診ていたかと思います。
堀江:それはすごく多い?
大土先生:1日としては少なくて、僕に代わって今3,4倍(の人数)にはなっています。その分収入は上がっているかと。
神子:どのくらいの速度というか時間感覚で、その現状まで上がってきましたか?
大土先生:わりかし早かったと思います。
神子:何かそこまで成長する中でのポイントはありましたか。
大土先生:何でしょうかね。とにかく掛かってきた電話を全部取るみたいな。とにかく集患。患者さんを集めるというのが一番のテーマだったので、掛かってきた電話は全部対応していく。できる限り対応していくという形で、患者さんはどんどん増えていったかなっていう気はします。
堀江:元々いらっしゃった患者さんにプラスして、新規も増えたということですね。岸先生はいかがですか。
岸先生:メディカルプラスさんからここは色々税理士含めて、「このぐらいのペースで、多分患者さんが上がっていく。で、それに伴って収益も増えていくだろう」と。ある程度予測はできました。前院長とのやりとり引き継ぎのところで一番ありがたかったのは、実は医師会の先生を一緒に同行してもらって紹介してもらったりとか、基幹病院の院長先生とか紹介してもらったりとか。結構連携って凄く大事なので。もちろんクリニックから大きい病院の連携もそうですし、その反対を逆紹介と言いますが、そこで増やしていかないといけない。そうすると、やはり患者さんはメディカルプラスさんが提示していただいたそこ(予想)よりもやっぱり増えていって、2年目ぐらいで法人化することができました。
神子:大土先生と岸先生に、法人化をした理由とその背景など、今後の少し展望みたいなところも含めてお伺いいたします。大土先生?
大土先生:お金の話が一番大きいかなと思います。税理士さんが医療法人とかクリニック専門でやっている税理士さんにもついてもらっているので「売り上げがこれくらい伸びていくのであれば法人化していく方がいいですよ」と言われましたので、もうその話に乗っていくという形で。あまり悩まずやったと言うか信じてやった感じです。メリットはやっぱり税務関係、とりあえず今感じるのはそこかなと思います。
神子:継承されてからどのくらいで法人化されましたか?
大土先生:法人化は最近です。(法人化しようとすれば)すぐできたはできましたが1年以内にしない方がいいという話があり、税理士さんと相談しながら2年くらいでやりました。
堀江:岸先生はいかがですか?
岸先生:悩みましたね。税制上のメリットは凄く法人化の方が大きいですよね。ただ、逆に個人の方がそのお金の使いやすさの自由度が少し大きいので、そこの兼ね合いをずっとこの悩みながら過ごしていた覚えがあります。ある程度分院を視野に考え始めた時に「個人よりも法人の方が良さそうだ」ということになりましたので、そこで法人に決定しました。
堀江:分院をされるとなると法人化がいいのですね?
神子:渡邉先生いかがでしょうか。継承された後に売上であったり、患者様の数であったり。
渡邉先生:継承すると決める時点で、まず診療時間を拡大するというのと、あと立地的にも非常に期待できる場所だなと思っていました。実際に継承をしてみて、初診の問い合わせは…そうですね、比較的そのまま今、日本橋・虎ノ門に比べると多いですね。電話であったり、ウェブ予約もできるんですけど、流入は非常に多いという印象があって。結構予測していた通りに進んでいるかなというところではあるんですけど、私も実際に溝ノ口の診療で携わる形になったら、逆に(既存の)本院や分院の方で、患者数がちょっと苦戦中みたいなところもあります。3つでの収益という部分を医療法人としてはトータルとして考えなくてはいけないので、そこを今非常に試行錯誤しながら、ドクターの人員配置・自分の人員配置を考えています。
堀江:割合的には例えば第三者継承されて法人化されるのか、それとも個人でいらっしゃるのか、どっちが多いですか?
神子:いま先生方にお話しいただいた通り、法人化するメリットデメリットのご判断の中で法人化されていくのではないかな、という風に思います。
堀江:あくまでもご自身の判断で決めていかれるのですね。継承直後見込んでいた患者数ですが渡邉先生は増えていて、大土先生・岸先生はいかがですか。
大土先生:患者さん数は、もう稼働時間も増えているので増えないと駄目でしたから。増やさないと借金を返すことができません(笑)。もう集患をとにかく頑張りましたね。
堀江:勤務時間も変わってくるので、その分患者さんも増えている。岸先生も?
岸先生:例えばコロナ禍ってありますよね。ここ2,3年でしたよね。だから、実はコロナ前の内科って風邪診療がメインですが、患者さんお一人当たりの単価というのを実は想定することができるんですね。そうすると数こなさないといけないという背景もあり、自分の強みをそこに生かさないといけなくて。例えば糖尿病でインスリン導入とかすると、例えば普通の高血圧とか循環器よりも単価が随分跳ね上がるんですね。そこで多分クリニック経営で課題なのは「患者数を増やすのか」「患者一人当たりの単価増やしていくのか」、そういうどういう病気を持った患者さんを増やしていくのかという、マネジメントのところが僕なりにすごく楽しいなと思いながらやっています。もちろん地域のために、全然拒まずやるのですけれどもね。
堀江:そこの第三者継承を成功させるポイントってたくさんあると思います。どういうところが具体的にありますか?
神子:そうですね、もうこれはぜひ先生方に。皆さま成功していただいているかと思いますのでお聞かせいただきたいです。
堀江:前院長の意志を引き継ぎながら、今の時代に合ったものを導入することには、なかなか難しさもあると思います。例えばマネジメントの部分に力を入られたりとか、他にはどういった点に力を入れたりしましたか。例えば大土先生であれば、勤務時間を変えたことも?
大土先生:(クリニックの環境に)お仕事されている方(の患者さん)がすごく多いので。仕事終わりに来られるようになるべく遅くまで空けておくとかは、普通にやらないといけない、と思います。あとはインターネットを見て皆さん来ますので、SEO対策はしっかりしました。口コミもやらないといけないのでしょうけど、口コミはあまり見るとへこむのかもしれないので(笑)ほとんど触っていないですが、あれもやはり重要みたいですね。インターネット対策もやりました。
神子:予約システムとかは入れましたか?
大土先生:はい、患者さんがなるべくエントリーしやすいように。電話をかけるのは精神科だと結構ハードルがあるので、ネット予約は必須なのかとは思います。患者さんがちょっと多くなってくるとネット予約もなかなか難しくなるので、電話が増えちゃったりはしますが、それはそれで違う対策の仕方があると思うので。最初のスタートはですね、もうとにかく患者さんが来やすいようにハードルを下げてというか、そういう考え方でやっていこうかなとは思います。
堀江:前はネット予約がなかった?
大土先生:なかったです。
堀江:先生のご判断なのですね、ネット予約の導入可否は。例えばカルテをいきなり電子カルテに全部しますとか、それこそ(クレジット)カードの導入をしますとか、前の院長先生は嫌がるかなということも中にはいらっしゃると思いますが、そういうことはなかったですか?
岸先生:やはり大きく変えるのは色々と、多分従業員も患者さんも、結構ストレスですよね。当院は実は「いつでもいらっしゃい」という(スタンスです)。コロナ禍では発熱外来はちょっと予約制だったんですけど、それ以外はもう全部「いつでもお時間が空いている時にいらっしゃい」というような窓口を広げたクリニックです。集患にいたっては、僕達の世代ってITって結構好きですよね。口コミと仰ってましたけれども、そこも実はやはり「人」ですよね。その患者さん、例えばインフルエンザのときにうちに来て、そこであの先生が良かったからお父さんを連れてきたとか、息子を連れてきたとか。そういったパターンの方が実は多くて。そこからこう、広がっていくケースも。例えば個人情報をある程度管理すると、地図上でどこら辺から患者さんが来院しているという、そういう(マーケティング的な)こともできます。そうすると、ある患者さんの口コミで、もうそこのマンションからほとんど来ているような状態にもなるので、ネットのそこ(口コミ)よりも、もうその方が多分強く伝わる。そして増患にはうまくいくのかなというふうに思います。多分これは僕だけじゃないですよね。スタッフが多分うまくやってくれるような感じがするので、そうすると居心地が良くなるんじゃないかなと思います。
堀江:確かにネットだけじゃなくて、本当にリアルなコミュニティ内の口コミって大事ですよね。渡邉先生いかがですか?
渡邉先生:院長先生はもう半日のみ限定していたので患者さんを断らざるを得ない。初診もキャパシティが決まっているので、そういう話も引継ぎの段階で(院長先生から)「断っているんですよ。(渡邉)先生はたくさん受け入れてください」みたいなね、エールをいただいていたので。そこは少し見通しがついたらという部分があったのと、元々はやはり電話のみの予約の受け入れだったので、WEB予約、電子カルテに内蔵しているWEB予約システムを導入しました。ホームページ業者さんとも3院とも同じような形にしてITの部分を作り上げたので、そこはスムーズに患者さんも入りやすいのかな、と思います。
堀江:ITを強化し今の時代に合わせていくのは大事ですね。次の質問に移りたいと思います。
質問➅「継承前に戻ったら?」
堀江:「継承前に戻ったら?」という質問になっております。これはもっとこうしておけば良かったなと、今になって思うこともお聞きしていきたいです。大土先生は継承してどのくらいですか。
大土先生:いま2年半です。
堀江:じゃあ継承前に戻ったらどんなことをしてみるかとか。
大土先生:反省点みたいなものが実はあまりなくて。戻ったら…ちょっと精神科という科の特徴はやっぱりあるので、最初はちょっと僕、ブレがあったと思います。前の先生のやり方というかスタンスに寄り添うような感じでいましたが、もう少し自分の色を出していかなければと。ちょっとだけブレがあった時があったので、継承前の僕に言えることがあるとすれば、自分の色を出しなさいと言うかもしれないですね。特殊かもしれない。
堀江:自分の色を出すには何が?どう色を出していったのですか?
大土先生:精神科医療って再現性のあることが言えないと駄目で、今日と明日で同じこと言えないと駄目なんですよね。もちろん医療は進んでいくので、多少変わって行きますが根っこは変わらないというか。ブレない自分…やっぱり寄せていくと自分じゃなくなってくるので、再現性がなくなることがちょっとあって。すると患者さんも戸惑ってしまいます。そういったところでそのままの自分の色を出していく。それは我儘じゃなくて自分のやり方というか、治療の得意な部分だとは思うので、そこかなと。
堀江:継承後は自分の院ですものね。岸先生はどうですか?
岸先生:先ほど申し上げましたが、元々消化器内科のクリニックで内視鏡をしていました。1週間に一回来ていただいて、継いでやっていたんですけど、途中でやっぱり「中途半端はいけないな」と思いまして、内視鏡の器具を売却しまして。それに代わるような形で循環器の器具を入れたりしたんですけど、今思えばやっぱり内視鏡って大事なんですね。内科って医師会から委託されて健康診断をやるんですけれど、胃がん検診だけ違うところにお願いするというところでワンストップではなくなってしまったので、あの時の自分に「手放しちゃいけないよ」って言っておきたかった(笑)。自分色を付け過ぎて逆にちょっとバランスが行かなくなったというのを感じました。
神子:ちなみに岸先生、内視鏡の診療も可能ですか?
岸先生:僕は循環器だったり糖尿病だったり、本当に内科なので。内視鏡クリニックってあるんですけど、それってやはりスペシャリストなんですよね。そういうドクターを二診に入れてやってもらいつつ、僕は僕でやっといた方が、多分今の自分だったらすごい良いクリニックなんだろうなというものがありまして。そうするとあの時の自分に、もう少し頑張ってね、手放さなきゃよかったと。患者さんが辛いですよね。胃カメラだけ違うところに行かないといけないの?という煩わしさがあるのかなと思います。
堀江:渡邉先生どうですか?
渡邉先生:(しばし間)…あんまりない(笑)。細かいオンライン資格確認などの手続きが今ストップしてしまっているので、そこを考えるというところですね。
堀江:この5年でコロナがあったじゃないですか。医療業界も大きく変革期だったと思いますが、予測できない部分もありましたよね。全員の先生とのコミュニケーションや、前の先生からなかなかうまくコミュニケーションができなかったということはなかったですか。
岸先生:コロナが起こる前だったので、良かったなと思っています。コロナ禍だと(皆さん)どうでしたか?
神子:そうですね。やはりコロナ禍になった際に売り上げが大幅に減少してしまって、お譲りすることが困難になってしまっているケースなんかもありまして。そうすると収入より支出が増えてしまっているので、それを維持していくことがそもそも困難なので、お相手が見つかるまでの間にやはり事業を閉鎖しなければならないなどで、譲渡希望の先生で困っているケースもありましたし、継承しようと(譲り受けようと)いう先生においてもなかなか事業収支が追いつかないとなると、ちょっと一歩踏み込むには勇気がいるというような、そんなようなことはあったかなと。そういった中でもやはりコロナ禍でも何らかの対策をして、売り上げを維持させていらっしゃるような先生方もいらっしゃったので、ケースバイケースです。さまざまな内容があったかと思います。
堀江:でも、今はだいぶ落ち着いてきていますか?
神子:もう先生方、コロナの影響というのはいかがですか。
岸先生:僕のクリニックはなかったですね。2019年から20年の間ですよね。実は川崎市で率先して(コロナ患者を)受け入れていた医院の一つだったんですよ。「川崎市何人」と出ていたら多分、半分ぐらいうちのクリニックから出していただろうな、と思う時期もありましたね。多分みんながやらないことをやった方が地域のためだし、そこがまた認知度が広がるいいチャンスだったので。今お話があったようにそこでこう臆病になっちゃうと、多分収益が落ちるでしょうし、そこで結構スタッフと相談しないといけない部分もありましたけど。僕実は感染してないんですよ。3ヶ月にいっぺん採血して抗体取っていて、今まで3,000人近くに診断をつけてきたんですが、一切(かからなかった)。なので、ちゃんとやれば自分もサバイブできるぞっていう時期がありますね。
神子:ちなみに渡邉先生は分院を開設されるということで、医療法人で開設されたかと思います。そうなりますと保健所の手続きとは別に、定款変更のお手続きなんかもあったかと思います。その辺で反省点ではないんですけれども、初めての経験の中で何か気付きであったりですとか、もっと時間を前寄りに読んでおかなければいけなかったなみたいな、何かそういった意味での反省点とかもあったりされますか。
渡邉先生:今回分院自体も2回目で、税理士さんも流れは私も見ていて慣れている部分もあったので。比較的スムーズにやってくださっていましたが、やはり前任の院長先生にもちゃんと進んでいるかといった部分を、私を通して税理士さんからの情報を院長先生に共有しないといけない部分がありまして。ゴールが明確に見えない部分もある中での並走だったので。「大丈夫です」となだめながらで、そういった部分はちょっと今回違ったのかなと思ったんですよね。でも大きな遅延もなく、無事に進んではいきました。
質問➆「ズバリ!今だから言えること」
堀江:今だから言えることということで、ズバリなご質問をしていきたいと思います。具体的にこれからもう一度開業するとしたら、もう渡邉先生は2度されておりますけれども、継承開業を選ぶかといったご質問です。選ぶ方は挙手を!(全員挙手)…大土先生(一瞬)考えられましたが(笑)。選ばれますか?
大土先生:(案件との)出会い次第なのかなと思います。
堀江:岸先生も?
岸先生:多分、内装とか自分の思い描いたクリニックをつくりたいとか、ゼロから自分の実力を試したいっていう場合は、きっと新規の方がいいと思うんですよね。幸運なことに僕の継承のクリニックは(出来てから)2年ちょいくらいのものだったので、それなりに内装もきれいで。多分僕が企画設計でやると決めるよりも良いクリニックで。そういった意味でも、全然継承の方がいいんじゃないかなと思います。
堀江:ちなみに岸先生、企画設計はご自身で…
岸先生:いや基本新規の場合はこう、設計士と相談しながらやるものですから。家を作るようなものですからね。だからむしろそういう労力もなく、逆に継承の方が楽かなと思います。
堀江:そして渡邉先生はもう新規開業されて、やはり継承開業がいいということですか?
渡邉先生:どちらも経験した上で、圧倒的にコストと労力も違いますかね。新規の部分、(岸先生が)おっしゃった設計の部分や、内装業者さんの打ち合わせが出てくるので。そこは継承だと。
神子:忖度がなければいかほど(笑)?
渡邉先生:私の性格として、経験もいろいろしたいので。新規も(経験)しましたし継承もしましたけれど、経験も大事ですし同時に先人に学ぶという部分も大事だったと思うので。成功事例からちゃんと経営に落とし込んでいくというのは、大事にしたいかなと思います。
堀江:新規で開業された時は、初月の売上や患者さんが来るが来ないかといった精神的な不安もあるかと思います。開業されてから不安などはなかったですか?
岸先生:ある程度、例えば1か月処方・2か月処方をされている患者さんは「次いつ来るだろうな」というのがある程度想定できるので。そういう「患者さんが来ない」という心配がないところが、(先ほど)メリットデメリットの話もありましたけれども、多分そこが一番大きいメリットですね。安心感が半端ないというか。
渡邉先生:私は逆に新規ですけれども、それでも本当に0人とか2人とか3人とかいう日が続くので、そこは「オイ、大丈夫か?」みたいな(笑)これどうなんだろうみたいな感じで。微増していくようなところではあったんですけど、今回継承で7月オープンだったその時点で、患者さんの予約が入っているのを見ての安心感(笑)。やっぱりある程度収益が、そこでもうほぼ決まっている安心感があるので、これは結構違いますね。
岸先生:振り返ってみると継承するタイミングが、例えば内科だったりすると、この風邪のシーズンってすごく良いタイミングなんですね。ワクチン接種とかでもう名刺代わりの形でお会いできるので。だからもし依頼主とタイミングがうまく合わせられるのであれば、やはり秋から冬にかけてのシーズンの方が、認知度向上には内科的にはいいのかな、と今思いますね。
堀江:科によって何月がいいとかありますか?
神子:やはり繁忙期と閑散期がありますからね。精神科・心療内科の領域でいうとありますか?
大土先生:五月病とか言われますけど、あまり関係なく、もう満遍なくいらっしゃいます。閑散期とか繁忙期の波はあんまりないかなと。
堀江:今だからこそ、この第三者継承を「やって良かった!」と思った点はありますか?
渡邉先生:やっぱりスピード感だったりを経験できたので、今後の分院の展開4つ目だったり、説明っていうところのスピード感も変わってくるのかなというところです。あとはやっぱりメディカルプラスさんのノウハウという部分。もう本当に色々神子さんにも毎日電話して(笑)。もちろん継承のこと以外もお聞きしていて、今後の展開とかもちょっと聞いたりとかして。「クリニックと携わっている会社って貴重な存在。強い味方になるな」という部分があったので、新しい世界の知ることができたのは非常に大きかったというところがあります。
神子:クリニックを継承いただいた際に、クリニック名について、実はこう何か思いがあるんじゃないのかなというふうに思うんですね。クリニック名を踏襲するのか、あるいは変えるのか、皆様、ちょうどご経験がそれぞれあるのではないかなと思いますので。大土先生は?
大土先生:前の先生の名前がついていましたので、無機質なあまり押し付けのない名前ということで「中野駅前メンタルクリニック」と決めました。
神子:岸先生はいかがですか?
岸先生:やっぱり「自分の名前を付けたいな」ともありますよね。ただ、もうそれだけ地域に認知度があるようなクリニックの場合、逆に変更するデメリットもあるのかなと思いながら、そこのジレンマを抱えつつ、(川崎市)中原区の「なかはら内科クリニック」なので、ネットで(検索に)引っ掛ける時もそれなりに上がってきますし。そういった意味でもう昔の名前を使わせていただいた方がメリットの方が大きいのかな、と思いながら(そのまま)やりました。
神子:ご選択はいかがでしたか?
岸先生:成功だったと思います。「平仮名で良かったのか、漢字が良かったのか?」とまた悩みますけど。今のままで全然いいんじゃないかなと思います。僕も大好きですし。
神子:渡邉先生はどうですか?
渡邉先生:名前はそのまま引き継いでいるんですけど、変えるとなるといろいろな手続きが発生してくるのを懸念しましたね。そのままで患者さんもそこに付いてきていますし、要望もニーズもあるということだったのでそのまま使わせて頂いて、現状は変えなくても大丈夫だったのかなとは思うんですけど。今3つ(クリニックが)あるので、統一した形でブランディングしていくのかそこは今後の数年の検討と思います。
堀江:(屋号を)変えるとなると手続きは大変ですか?
神子:そうですね。保健所の手続きもさることながら、いろいろな契約に紐づいていきます。その辺を検討される中でどうされるかというご判断だったのかなと思います。
堀江:前の院長先生が「ちょっと名前は変えたくない」と言った場合は?
神子:どちらかというと、名前を引き継いでほしいという感覚はあまりないのではないかな、というふうに私は認識しています。それよりもお引き継ぎする(譲り受ける)側でそこに価値を持つのか持たないのかというご判断のが、多いのではないでしょうか。
質問➇「今後の展望は?」
堀江:実はさきほど譲渡された先生方も「70歳までにはこうしたい」というビジョンがあったりしていて。これからこうしていきたいというビジョンは大土先生、ございますか?
大土先生:医療のニーズに応えるために、規模の拡大や分院展開などを考えるべきなのだろうな、やりたいなとは思っているんですけど。でも最初言ったみたいに医療とビジネスのバランスが崩れては、やっぱり良くないなと思っていて。当院のモットーは win-win-win なんですよね。クリニックもwinで、患者さんも当然winで、スタッフもwinであってほしい。このバランスが崩れるようであればやりたくないと思っています。お医者さん探しとか、もうそれが一番多分難しいですけど、手を抜きたくない・妥協したくないというところがあって。とにかく質を落とさないようにというのはすごく考えています。だから、ぐいぐいやる感じでは今はないです。
堀江:岸先生はどうですか?
岸先生:もう先生(大土先生)のおっしゃること、本当に僕もそうだなと思いながら、今話を聞いていて。いわゆるドクターを目的に来るのか、そのクリニックを目がけて来るのかは、また違う話になってきますよね。分院展開 は凄くしたいです。メディカルプラスさんは「ドクターを紹介してくれるような部門がある」という噂を聞いております。
神子:その話もうちょっと詳しく(笑)。
岸先生:(笑)なので、本当に信頼できる、そのクリニックの理念をちゃんとリズムとして踏襲してくれるようなドクターがいれば、やっていきたいなとは思っています。
堀江:やっぱりその先生探しって大変ですか?
神子:渡邉先生ご経験があるかと思いますが、ぜひお聞かせいただけますか。
渡邉先生:ドクターは基本辞めちゃうものであるというか、そのリスクが高いですね。やはり看護師さんドクターといた資格業の方はスライドしやすいです。ですから当院としては、なるべく二診体制を作るような形でメインの先生と非常勤の先生みたいな形で穴がなく、ドクターを配置するような形にはしています。どこからかと言うと人材紹介会社もそうですけど、知り合いの先生方に助けてもらってという形もありますけどね。なかなかやっぱりマネジメントが難しい。答えが出ていない部分もあります。
神子:何かこうドクターが辞めないように対策というか施策というかは?
渡邉先生:「ありがとう」と「ごめんなさい」を言う(一同笑)!なかなかそうですね、トップダウンは難しい。現状できていないので、コミュニケーションを取って感謝を伝えるっていうところですかね。
堀江:分院されること自体難しいですよね。
神子:やっぱりドクターありきというところ、ありますよね。
堀江:もう一回繰り返す質問になってしまいますが、先生は(医師)はどこで探されましたか?
渡邉先生:人材紹介会社ですね。
堀江:そういうケースが多いのでしょうか?それとも例えば昔からのお付き合いで、大学時代の病院の時に一緒だったから、といったケースもあるのですか?
渡邉先生:私は両方ありますね。高校時代の同級生は精神科になって、今も分院長をしていただいたり。ただ同世代になるので、開業志向があるのでやっぱり期限付きというか、現実厳しいものがある。
堀江:新規開業された方が分院をされるのと、第三者継承をされた方が分院されるのでは、どちらの方に重みがあるのでしょうか?私の中では勝手ながらも、新規開業された方の方がやることが多すぎて、分院まで行きつかないとか思ってしまいます。そんなことはないですか?
大土先生:軌道に乗れば同じじゃないでしょうか。
堀江:どちらも軌道に乗ればなんですね、ありがとうございます。どうでしょうか。ズバリなお話ありますでしょうか?先ほども精神科のコミュニティに入ってらっしゃるとお伺いしましたが、中には「第三者継承をやってみたい」という方もいらっしゃいますか?(コミュニティに)既にお二人はいらっしゃるということですけれども。
大土先生:サークルですか。
渡邉先生
分院展開の話はよくしています。10人ほどメンバーがいますが、やっぱりドクターは同側っていうところで一番の課題感(を持っている)。後はそのドクターを雇って維持するというところですかね。
神子:開業されますと、なかなかドクター同士の横のつながりというのが薄くなってきてしまうような印象を勝手ながら持っています。いろいろな情報収集というのはどういった形で集められていらっしゃるかをお聞かせいただきたいなと思いますが、大土先生いかがですか?
大土先生:僕が開業したのがコロナ真っただ中だったので、勉強会とかも全然なかったですし、もう本当に横のつながりがなかったんですよね。一人でやっていて大丈夫なのかな?というような気持ちはすごくあって。その中でMRさん、お薬屋さんが面会に来ていてお付き合いしていてずっと会っていて、寂しいと伝えたんですね。で「じゃあ勉強会を作りましょう」と作ってもらえて。同世代の近所でやっている先生と一緒に、勉強会をネット配信でやりまして。そこから仲良くなって、精神科メンタルのクリニック院長のサークルに入れていただき、そこから広がった。自分からそういうのを求めていかないと難しい時期だったな、とはすごく思います。
神子:岸先生いかがですか?
岸先生:内科は結構医師会の繋がりが強いので、医師会に入っていると、例えば糖尿病分野とか循環器分野の先生が顔を合わせることができるので。それでやっぱり同じ年代の人たちが集まって、そこで「最近どう?」という話を色々することがありますかね。実はそういう繋がりって、医師会経由でのそういう繋がりがあるので、そこまで横のつながりに困ることはなさそうかなと思います。
神子:渡邉先生もいかがですか?
渡邉先生:経営の勉強会みたいな朝活とかセミナーとか。そういうのに参加してお互い興味を持った経営者さんだったり、医療法人の大学さんだったり、そういったところが合いそうなところを紹介いただくみたいな形で。そういったネットワークも構築を意識はしていますかね。医療法人に直結するものでなくとも興味だったり、今後の展望だったりを考える上でのそういった人脈みたいなものが大事かな、といったところですかね。
堀江:この座談会を見てくださっている方は、第三者継承に興味のある方が多いと思いますので、今日のこのようなリアルな座談会も参考にしていただきながらも、これからも第三者継承について深く調べていただけたらと思います。本日は皆さま、本当にありがとうございました。
神子:お集まりいただきまして、ご参加いただきましてまことにありがとうございました。はい、岸先生ぜひ人材紹介もやっておりますので、弊社ではこう成功報酬型で事業継承をサポートさせていただいておりまして、守秘義務もしっかり守っておりますので、ぜひぜひこれから継承開業を検討されていらっしゃる先生方においては、お気軽にご相談いただければと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
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