東京都の医院開業動向

診療所・病院数、医師数etc. 首都東京は日本最大の医療集積地。

日本の首都であり中心都市である東京都は、世界有数の医療機関や先端医療施設が集積し、全国から多くの患者が訪れる我が国最大の医療集積地です。高度医療から地域医療まで、都市ごと、地域ごとに異なる医療ニーズが存在し、多様なクリニック開業の機会が広がっています。また、人口の高齢化が進む一方で、都市型の子育て支援施策も充実しており、あらゆる世代に向けた医療サービスの需要が高まっています。ここでは、東京都における医院開業のポイントや市場動向を、データを交え解説いたします。

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1.東京都の基本情報と特徴

●年齢別推計人口

東京都の年齢別人口推計(2020年~2050年)を見てみると、2020年時点では、0~14歳が11.2%、生産年齢人口にあたる15~64歳が66.1%、65歳以上の高齢者が22.7%を占めています。

日本の医療の中心地である東京都でも少子高齢化は確実に進行しており、医療や福祉サービスの需要は年々高まっています。首都東京には最先端の医療機関や高度専門医療センターが数多く集まり、全国から患者が訪れる広域医療拠点として機能しています。その一方で、生産年齢人口は徐々に減少し、高齢者人口は2050年には29.6%に達する見込みです。特に2035年以降は高齢者人口の増加が加速し、都市型高齢者医療の重要性がさらに高まることが予想されます。また、0~14歳の人口割合は比較的安定しており、大幅な減少は見られません。これは、高い都市機能や子育て支援環境の充実が要因と考えられます。

今後、東京都では医療提供体制の更なる効率化と都市型高齢者医療の充実が重要な課題となります。首都圏全体を支える日本最大の医療拠点としての役割を維持しながら、働き手不足や社会保障費の増大への対応が求められています。

東京都:2020年~2050年の年齢別推計人口分布 医院継承メディカルプラス
*都市と自然が融合する全国一の医療集積地

●面積

2,194.07㎢(全国第45位)〔2024年1月時点〕

●人口

全体:14,038,000人(全国第1位)〔2022年10月時点〕

特別区:9,720,000人〔2022年10月時点〕

●特別区

23区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区、江戸川区)
※特別区は東京都にのみ存在する独自の行政区分であり、それぞれが市に準じた自治体機能を持つ一方、都が広域行政を担います。

●都庁所在地

新宿区

●都内の市区町村数

23区26市5町8村(計62市区町村)

●気候

東京都の気候は温暖湿潤で、一年を通して四季の変化がはっきりと感じられます。夏は高温多湿で、時には熱帯夜になることもあります。冬は穏やかで、雪が降ることは少ないです。春と秋は特に過ごしやすく、多くの人が外出を楽しみます。

●観光

東京都は日本の中でも特に観光地として人気が高く、古い歴史を持つ寺社仏閣から最新のファッションや文化が楽しめる街まで、幅広い魅力を持っています。例えば、浅草の浅草寺や、若者の流行の発信地である渋谷、アートとエンターテイメントの街六本木など、訪れる人々を魅了するスポットが満載で常に時代と共に変化をしています。

*外苑から望む、風情ある二重橋こと正門石橋

●歴史

東京都は、江戸時代に徳川家康によって幕府の本拠地とされて以来、日本の政治と文化の中心地として発展してきました。江戸時代には、全国から人や物資が集まり、独自の文化が花開いたことで、現在の東京の礎が築かれました。明治維新後、「東京」に改称され、多くの近代化改革が行われ、国際都市へと変貌を遂げています。

●自然

東京都は大都市のイメージが強いですが、都会の中には日比谷公園や新宿御苑、代々木公園、上野公園といった大規模な公園が点在し、四季折々の自然が楽しめます。また緑豊かな地域も多く含まれており、多摩地域や奥多摩などでは、豊かな緑に覆われた山々や清らかな湖沼、ハイキングやキャンプに適した公園があります。海を越えて伊豆七島や小笠原諸島などの島々を見ると、固有の生物や美しい海が広がっており、都市以外の様々な顔を持っています。

*高層ビルに囲まれたオアシス新宿御苑

●産業

東京都は日本の経済活動の中心であり、金融、出版、電子商取引、ファッション、食品、技術など多岐にわたる産業が集積しています。特に、世界的にも有名な企業の本社が多数置かれており、グローバルなビジネスの拠点としても機能しています。これにより、多くの雇用機会が生まれ、全国から人が集まっています。

●特産

東京都の特産品としては、歴史ある江戸前寿司や、その時代に合った食べ物やスイーツなどが最新のトレンドとして国内外へと発信されます。また、職人技が光る伝統工芸品も多く、江戸切子や江戸木目込人形などがあります。食文化においては、新鮮な海の幸を活かした料理が人気で、特に「寿司」は世界中で知られる東京の象徴的存在です。さらに、最先端のファッションやアートも東京の魅力の一つとされています。

2.東京都の診療所数と推移

厚生労働省:「令和5(2023)年 医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」によると、全国の病院数が8,122施設であるのに対し、東京都の病院数は637施設(対全国7.84%)となっています。また、全国の一般診療所数が104,894施設であるのに対し、東京都の一般診療所数は14,894施設(対全国14.20%)となっています。診療所数の過去10年の推移を見ると、2,114施設の増加となっており、以下の通り推移しています。

東京都過去10年間の診療所数と病院数の推移 医院継承メディカルプラス

3.東京都の医療施設に従事する医師数と推移

厚生労働省:「令和4年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、全国で医療施設に従事する医師数は327,444名であるのに対し、東京都の医療施設に従事する医師数は45,562名(全国の13.91%、全国1位)となっています。東京都の医師数は過去10年で4,793名増加しています。また、人口10万人あたりの医療施設に従事する医師数は324.6人で、2014年の304.5人と比較すると20.1人増加しています。過去10年の東京都の医療施設で働く医師数は、以下の通りに推移しています。

東京都:過去10年間の医療機関医師数および10万人対医師数の推移 医院継承メディカルプラス

4.東京都の医療圏の特徴

東京都の医療圏は区中央部、区南部、区西南部、区西部、区西北部、区東北部、区東部、西多摩、南多摩、北多摩西部、北多摩南部、北多摩北部、島嶼の合計13の二次医療圏から成り立っています。子どもの医療費助成や出産時の支援が行われており、少子化対策として子育て世帯を対象とした医療費助成が充実しています。所得制限なく中学3年生までの子どもの医療費が助成されており、特定の区では18歳まで自己負担が軽減される制度があります。また、出産時の助成金も各区が独自の支援を行っています。

東京都23区

東京都23区内の大病院では病床数の多い順に東京大学医学部附属病院、東京女子医科大学病院、杏林大学医学部付属病院、東京慈恵会医科大学附属病院、帝京大学医学部附属病院となりますが、その他にも有数の大学病院が多くあります。

23区内の医療圏(区中央部、区南部、区西南部、区西部、区西北部、区東北部、区東部)の特徴としては、以下が挙げられます。

①. 大規模な総合病院へのアクセス環境

特に区中央部は、東京の中心に位置し、多数の総合病院が存在します。特に、看護師数が多いことで知られ、病院の効率化が進んでいます。その他のエリアでも基本的にアクセスが便利で、複数の大規模な総合病院が存在していることから、高度な医療サービスが提供されており、地域住民にとって非常に利便性が高いといえます。

②. 地域の医療機関の連携

区中央部では、地域内の医療機関が互いに連携を取りながら、高度な医療サービスを提供しています。これにより、急性期から慢性期、療養期までの一貫した医療が行える体制が整っています。その他のエリアでも地域医療機関の連携が進んでおり、特に在宅医療支援が充実していることから、地域住民が自宅で適切な医療を受けることができる環境が整っております。

東京都23区外

東京都23区外の大病院では病床数の多い順に杏林大学医学部付属病院、東京都立多摩総合医療センター、井之頭病院、青梅慶友病院、武蔵野赤十字病院となります。特に多摩地区の医療圏(西多摩、南多摩、北多摩、北多摩南部、北多摩北部医療圏)の特徴を以下に挙げさせていただきます。

①. 大規模な総合病院へのアクセス環境

北多摩南部医療圏は、都心へのアクセスが比較的容易でありながら、自然環境も豊かなバランスが取れた地域です。大規模な総合病院や専門医療機関が集積し、高度な医療技術が提供されております。南多摩医療圏では、大学病院や総合病院が集積し、先進的な医療技術や設備が充実している。

②.地域の医療機関の連携

西多摩医療圏や北多摩医療圏、北多摩北部医療圏では、地域住民の健康ニーズに応じた地域密着型の医療機関が充実しており、地域の医療機関が連携しながら継続的で包括的な医療サポートが提供されております。

5. 東京都の医院・クリニック開業動向

①. 住居環境

23区内では多様な住居オプションがあり、都心部に近いため賃貸物件が多く、利便性とアクセスの良さが特徴で、住宅価格は高めです。23区外では、住宅価格が23区内に比べてやや低めで、広い住宅や一戸建てが多く見られ、自然が豊かなエリアも多いです。

②. 教育環境

23区内では高い教育水準で知られ、国際色豊かな学校や有名私立学校があります。教育機会が豊富で、学習塾や予備校も多く存在します。また、子育て支援が手厚く、医療費助成や出産支援が充実しており、公園や子育て施設が整っており、ファミリー向けのサービスが豊富です。23区外では公立学校の水準も高く、地域密着型の教育や、特色ある教育プログラムを提供する学校が増えています。また広い公園や自然に恵まれ、子育てしやすい環境です。地域コミュニティが強く、地元での支援が充実しています。

③. 交通アクセス

23区内ではJR、私鉄、地下鉄が網羅されており、都心へのアクセスが非常に便利です。主要駅周辺は特に交通の便が良く利便性が高いです。23区外では23区内への通勤・通学のための鉄道やバス路線が整備されているが、一部地域では交通手段が限られるエリアもあります.

日本医師会の「地域医療情報システム」には、より詳細な診療圏に関する情報が集約されており、参考値としてご活用いただけます(最新の地域内医療機関情報の集計値※人口10万人あたりは、2020年国勢調査総人口で計算)。こちらのシステムに2024年12月時点で掲載されている東京都の診療所数を見ると、13,798施設です。これを人口10万人当りの診療所数に換算すると、98.05→98.22施設で、全国平均の人口10万人当りの診療所数72.70施設を大きく上回っています。また東京都の人口10万人医療機関に従事する医師数は324.6人で、全国平均の262.1人を大きく上回っていることから、開業医のニーズの多くは東京都に集中している様子が伺えます。このように、東京都は診療所数・医師数が多いエリアということがわかります。

なお、診療所の標榜科目の中で、最も多いのが内科系の8,820施設、次に多いのは外科系(整形外科、脳外科など)の3,832施設です。逆に、最も少ないのは耳鼻咽喉科系の914施設です。

6.その他東京都の開業動向について

東京都の面積は47都道府県の中でも45位という順位ですが、人口では1位であり、その面積全体の28.52%を23区内、71.48%を23区外が占めています。診療所数も大変多く、東京都はまさに全国一の医療集積地と言えます。開業をお考えの方には、23区内、あるいは23区外のそれぞれの二次医療圏や地域の特徴を踏まえて、更なる医療の充実を図るべく診療圏の調査を行うなどして開業を検討することが重要となってくるでしょう。

23区内では8つの医療圏から成り立っており、有数の大学病院をはじめ高度な医療サービスが提供されている環境にあり、その他の総合病院へのアクセスや利便性が高く、医療連携も充実しております。

また、23区外においても医療圏ごとに中心となる大規模な総合病院が複数あることから医療連携が充実しております。診療所数や医師数が全国平均以上で人口も多い東京都においても、全国的な傾向と同様に高齢化の進展により、地域の医療ニーズや高齢化社会への対応、要介護が年々増加しております。今後の開業計画においては、新規開院だけではなく、地域の医療資源を引き継ぐという観点から継承開業も是非ご検討ください。


日本医師会提供の「地域医療情報システム」では、最新の地域ごとの医療機関情報や統計データをご確認いただけます。人口10万人あたりの数値は2020年国勢調査の総人口を基に計算されており、最新の情報に応じて数値が変動する場合があります。必要に応じて、随時ご参照ください。

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