STORY 02
未来へつなぐ医療 ~地域とともに歩む継承の物語~
第10章 受け継がれる診療所
譲渡契約締結から4ヶ月後、恵三の最後の診療日を迎えた。
早朝から多くの患者が訪れ、受付には感謝の花が次々と届けられた。中には30年以上の付き合いという患者も多く、別れを惜しむ声が絶えなかった。
スタッフ一同から贈られた花束を手に、恵三は感慨深げに言葉を紡いだ。「皆さんと妻の支えがなければ、ここまで続けることはできませんでした。本当にありがとうございました」
昌子の目には、わずかに涙が光っていた。開業以来、看護師長として、事務長として、そして何より妻として佐藤内科を支え続けてきた日々が、走馬灯のように駆け巡ったに違いない。
清水は深々と頭を下げ、決意を述べた。「佐藤先生が築いてこられた信頼を大切に守り、さらなる発展に全力を尽くします」
佐藤内科の継承を通じて、創業時の想いは確信へと変わった。医院継承は地域医療の継続という課題に対する解決策の一つとして新たな道筋を示していた。それは地域の医療インフラを守り、次世代に引き継ぐ重要な第一歩。持続可能な地域医療の実現に向けた新たな可能性を示すものだった。