STORY 02
未来へつなぐ医療 ~地域とともに歩む継承の物語~
第9章 医療をつなぐ出会い
清水夫妻が佐藤内科を訪れたのは、穏やかな秋晴れの日だった。濃紺のスーツに身を包んだ清水は、やや緊張した面持ちで新潟銘菓の手土産を差し出した。
院長室での面談で、恵三は40年に及ぶ診療の歴史を語った。開業当時は周辺に何もない土地だったが、ある患者の勧めで決断したこと。その患者は今でも通院を続けており、その娘や孫までもが患者となっていること。そうした話からは、地域に根差した医療の真の価値が伝わってきた。
清水も自身の経歴と展望を語った。「専門である消化器内科の経験を活かしつつ、地域のプライマリケアを担うクリニックを目指したい。予防医療にも力を入れ、患者さんの健康管理に貢献していきたい」
その言葉には説得力があった。すでに3年前から先輩の小児科クリニックで研鑽を重ね、現在は皮膚科の研鑽も積んでいるという。継承後も学びを続け、総合的な診療能力を高めていく意欲が感じられた。
院内見学を行い、電子カルテへの移行など、いくつかの課題は残るものの、診療体制の基盤は十分に整っていた。
面談から1週間後、清水から継承への前向きな意向が伝えられた。「佐藤先生がこれまで築いてこられた信頼を大切に、より一層発展していけるよう尽力したいと思います。」と清水は話した。恵三も清水の人柄と診療に対する姿勢を評価し、後継者として快諾した。メディカルプラス創業から9ヶ月目にして、初めての成約が実現した。