STORY 02 未来へつなぐ医療 ~地域とともに歩む継承の物語~
第3章 佐藤恵三との出会い

2013年8月、歯科医師の佐藤悟(37歳)から問い合わせがあった。父・恵三(75歳)が営む佐藤内科の建替えを検討しているとのことだった。

佐藤内科は千葉市内で開業する地域密着型のクリニックである。かつては19床の病床を持つ有床診療所だったが、20年ほど前に病床を廃止。築38年を経て建替えの時期を迎えていた。悟は千葉市内の歯科クリニックに勤務医として勤めていたが、建替え後の医療ビルでの開業を視野に入れていた。歯科医院の飽和が指摘される中、地域での認知度が高い佐藤内科と同じビルで開業することによる相乗効果を期待していた。

プロジェクトは、佐藤内科、悟の歯科クリニック、既存の門前薬局であるみどり薬局に加え、もう1科のクリニックを誘致する計画でスタートした。しかし、計画を進める中で重要な課題が浮上する。銀行から佐藤内科の後継者について確認が入ったのだ。恵三は千葉大学医学部を卒業後、内科医として関連病院での勤務を経て37歳で開業。看護師である妻の昌子(73歳)とともに、38年間にわたり地域医療の最前線で診療を続けてきた。開業当初は入院患者も受け入れ、救急車の受け入れも行っていた。昌子は看護師長として、また事務長として診療所の運営を支えてきた。二人三脚で築き上げてきた診療所は、地域になくてはならない存在となっていた。

しかし、今回のプロジェクトでは35年という長期の借入を予定していた。恵三は75歳。返済期間中の相続発生は確実視される状況で、銀行にとって後継者の存在は融資判断の重要なポイントとなっていた。恵三には内科医の長男・博(41歳)がいたが、継承についての意思確認はなされていなかった。恵三は「博には博の人生があり、継ぐかどうかは本人の意思次第だ」と考える一方で、「内科医になったということは、将来的に継承する意思があるのではないか」という期待も抱いていた。

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