STORY 02
未来へつなぐ医療 ~地域とともに歩む継承の物語~
第2章 開業支援に見た医療の未来
医療ビル開発では、複数のクリニックをテナントとして誘致する。各テナントの開業支援では、開業に必要な準備を一つひとつ着実に進めていく。診療圏調査に基づくニーズ分析から始まり、事業計画策定、資金調達、内装設計、医療機器選定、ホームページ制作、スタッフ採用、内覧会実施、取引業者の選定まで、開業までの全行程をサポートする。
経験を重ねる中で、開業を成功に導くためには、適切な初期投資の設定が何より重要だと実感していた。設備投資は必要なリターンを見極めて判断し、過剰投資は避ける必要がある。例えば、スタッフ用の椅子一つとっても、メーカー品を新品で購入すると1脚数万円するところを、良質な中古品であれば数千円で調達できる。同様に、スタッフルームの備品や院長室の什器など、適切な中古品の活用により、数十万円単位でのコスト削減が可能となる。
一方で、診療単価の向上や集患につながる設備投資は積極的に検討する必要がある。例えば、需要が見込める医療機器への投資は、それに見合うリターンが期待できる。患者は最新の医療機器による検査・診断を望んでおり、それはクリニックの特徴や強みにもなる。
開業後の成否を分ける要因として、立地条件は特に重要である。交通の利便性、視認性、人の流れなど、様々な要素を総合的に評価する必要がある。しかし、近年は開業に適した物件が減少傾向にあった。この背景には、日本の人口動態と開業医の増加という構造的な問題がある。人口減少が進む一方で、クリニックの数は増加を続けている。人口10万人あたりのクリニック数は平成11年の57.6件から令和4年には79.4件と約1.4倍に増加。特に都市部ではこの傾向が顕著だった。