【第三者医院継承事例】東京都江戸川区×小児科 最終譲渡契約調印
こんにちは。メディカルプラスです。
この度、東京都江戸川区にあります小児科クリニックの最終譲渡契約調印がありましたので、レポートとしてご報告いたします。地域にお住まいの小さなお子様とそのご家族にとって、身近な医療機関がどれだけ大切な役割を担っているか、あらためて考えるご支援となりました。本レポートが、第三者医院継承をご検討中の院長先生、また継承開業をご検討中の皆さまのご参考になりますと幸いです。
本譲渡案件の特徴
当該クリニックは東京都江戸川区に位置し、駅から2~3Km離れた場所の住宅エリアに開業、20年以上にわたる小児科診療で地域に根差して長年親しまれてきた個人医院です。院長先生は小児科診療のみならず、乳幼児健診や予防接種にも幅広く携わり、ご家族に疾患の説明や帰宅後の看病方法まで丁寧にお伝えする診療スタイルを貫いてこられました。日々の診療の積み重ねが地域医療の向上につながることを願い、長年にわたり尽力されてきました。
院長先生が継承を具体的にお考えになられたきっかけは、大きく二つの要因がありました。一つは、以前からご勇退の時期として目標としていた節目の65歳が少しずつ目前に迫ってきた事、もう一つは、医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進展による影響です。特に後者のデジタル化の波は、勇退時期を決める大きな決め手となりました。
2024年7月、院長先生から「年内で閉院すべきか、あるいは年内という短期間限定で後継者の探索をすべきか」とご相談をいただきました。当社ではすぐにクリニックに訪問し、現状を詳しくお伺いいたしました。初回面談の印象としては、既に閉院のご選択意思の方が強かった事が思い出されます。しかし、「具体的な候補者との商談が成立するまで費用をいただかない」という当社の方針から、正式に候補者探索のご依頼をいただき、医院継承という選択肢を並行して進めていく事となりました。
閉院という選択肢も決して簡単なものではありません。これまでクリニックを頼りにしてきた多くの患者さんのためにもこの場所を残した方が良いのではとの想いが交錯し、大変悩まれたご様子でした。その中で、「この場所を残すことで地域医療の継続に貢献したい」という院長先生の強い想いが継承という選択を後押ししました。院長先生にとって初めてとなる継承ですので、「継承が本当にできるのか?」、「本当に後継者が見つかるのか?」という気持ちがある中での後継者探索でしたが、良縁が見つかり2024年12月末に最終契約に至りました。
本案件の特徴は以下の通りです。
【クリニックの特徴】
- 開業後20年以上の診療実績を持つ小児科クリニック
- 医療テナントビルに属しておりクリニックの視認性が高く、地域での認知度がある
- 駅からは離れているものの、複数のバス路線が利用可能で、その本数も多いためアクセスは良好
- これまでなかったホームページを新たに作成し情報発信を強化することや、ネット予約システムを導入することで、これまで以上の集患が期待できる
- 小児科診療に加えて新たな診療科目を追加することで、発展的な集患が見込まれる
【本案件の難易度が高かった点】
- 閉院まで4~5ヶ月というタイムリミットがあった
- 駅前ではなく、最寄り駅から距離がある立地であった
- 紙カルテを使用しており、継承後に電子カルテを導入する場合にコストが発生する
【成約の決め手となった点】
- 後継者が期日内に見つかった場合、院長先生が当初予定していた閉院時期の延長をご検討くださったこと
- 今回の後継者は分院展開を目指す医療法人であり、「駅前立地型」だけでなく「地域密着型」のクリニックも継承検討対象としていたこと
- 基本合意契約後、後継者となる医療法人側で次の管理医師の採用が進み、その目途が立ったこと
- 譲渡価格が、短期間の継承をスムーズに進めるため低額に設定され、後継者が電子カルテ導入コストなどにも資金の見通しを立てやすかったこと
本案件は、2024年7月のご相談から約5か月後に成約となりました。
ご相談をいただいた直後から候補者探索を開始し、複数の候補者様にご関心をいただきました。しかし、立地を理由に辞退されるケースが続き、なかなか成約には至りませんでした。その後、院長先生から「そろそろ継承は難しいと思うので、閉院の手続きを進めようと思います」というご連絡をいただいたタイミングで、今回お引き継ぎとなった医療法人が現れました。そしてこの最後の候補者とのご縁が実を結び、成約へと繋がりました。
多くの院長先生にとって、クリニックの継承は初めての経験です。「本当にこのクリニックに関心を持ってくれる医師はいるのか?」「継ごうと本気で思ってくれる医師がいるのか?」「今の時代は駅前のテナントに開業したいという医師が多いのでは?」など、不安を抱えることも少なくありません。しかし今回の事例は、これまで20年以上という時間と歴史のなかで地域に馴染んだクリニックのM&A成功例で、必ずしも「駅前立地」が成功の条件ではないことを示しています。
今回のケースは「小児科」です。駅前立地であることが「便利」で、「多くの小児の患者さんを集患できる」とは限りません。ご家族目線で考えると、熱を出したお子様を自転車に乗せて家からすぐに通える距離にクリニックがあると、安心です。逆にお子様を駅前まで連れて出向く事が大変な場合もあります。「熱を出したお子さんを連れて通える距離にある、自宅からすぐ通えるクリニック」である点が重要なことがあるのです。
後継者となる医療法人側では、基本合意契約後に管理医師の採用を迅速に進め、医師の採用の目途が早々に立った事も最終契約に至る上で大きなポイントとなりました。
現在は医療法人の定款変更を進めております。当該クリニックの経営権が後継者に移譲した際には、これまで院長が築き上げられた医院と理念を継承し、デジタル化の推進を行いつつ、アレルギー疾患など更なる発展的な診療を目指していきたいというご意向を強く持っています。益々このクリニックの将来が楽しみです。また、今回の継承では双方の面談の機会であるトップ面談や対面面談の機会を複数回設けてお互いの意見交換を重ねたことが、短期間で成約に至った要因ともなり、双方の合意形成が迅速に進んだのではないかと感じております。
印象的なエピソード
最終契約調印後、院長先生との面談で伺ったエピソードが心に残っています。院長先生の勇退を知った、長年通っていた患者さんから「このクリニックが良かったのに」「継続して診療を続けてほしい」といった感謝の言葉をいただいたとのことです。これまで当たり前に続けてきた診療が、地域の方々にとってどれほど大きな意味を持っていたかを改めて感じられた瞬間だった、とお話しくださいました。お話を終えた院長先生の表情には、これまで地域の医療向上を目指してこられた様々な想いが込み上げているご様子を感じました。
現在、後継者の医療法人側からは、院長先生がクロージング後も引き続き診療に携わっていただけないか前向きにお話を進めておられます。弊社でも引き続き、クロージングを良い形で迎えられるよう、誠意をもってサポートを提供していきたいと思います。
医院継承に関する無料相談実施中
弊社では数あるクリニックM&A成約案件の中から、医師・医療法人さまのクリニック開業を検討する際、また業界における第三者医院継承啓発の一助となることを願い、一部をレポート公開しています。無料相談を実施しておりますので、医院継承(承継)、クリニック売却買収、医療法人M&Aをお考えの方はこちらより【✉お問い合わせ】お気軽にお問い合わせください。
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この事例を担当したのは、弊社アドバイザー 村越 周平です
国内大手企業と外資系企業で計11年間、医薬情報担当者(MR)として従事。新薬立ち上げや希少疾患の啓発といった経験を積むなかで、地域医療の課題に直面し、医療に直接貢献したいとの思いからメディカルプラスへ入社。どんな方にも壁を作らない親しみやすさで、多くの方々から信頼されるアドバイザー。プライベートでは二児の父として、温かく家庭を支えている。