眼科クリニックの開業 ~市場の現状と今後~

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医院継承(承継)、クリニック売買、医療法人M&Aのメディカルプラスです。今回は「眼科クリニックの開業」をテーマにお伝えいたします。理想とする医療を実現するため、いつか自分のクリニックを開業したいという夢をお持ちの先生は少なくないと思います。眼科クリニック開業の魅力とメリット、開業にともなうリスクや課題、そして成功へと導く戦略を解説いたしますので、ぜひご一読ください。開業は決して簡単ではありませんが、適切な準備と戦略を持つことで、経営の安定と理想の診療が実現できる可能性が高まります。本記事が、眼科の開業を検討されている先生・医療法人さまのお役に立てましたら幸いです。

眼科クリニックの開業市場とニーズの把握

1-1. 眼科市場の現状と今後

近年、高齢化の進行やデジタルデバイスの普及により、眼科診療の需要は増加傾向にあります。特に白内障や緑内障、ドライアイ、近視矯正治療などのニーズが高まっています。また、在宅ワークの増加により、VDT(Visual Display Terminal)症候群と呼ばれる目の疲れや視力低下を訴える患者も増加しており、眼科の重要性はますます高まると推測されます。

厚生労働省の「令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、日本における医療施設に従事する眼科医の総数13,554人とされています。そのうち診療所に従事する眼科医8,471人と推定されています。これは全眼科医の約62%にあたり、内科医に次いで診療所で働く医師が多い診療科となっておりますが、一部の地域では眼科医不足が問題視されています。こうした背景から新規開業の余地は十分にあり、特に眼科医が不足している地域での開業は、地域貢献と収益性の両面で大きなチャンスとなります。

1-2. 競合分析とターゲットの明確化

開業にあたり診療圏調査は非常に重要です。開業予定地域にどれだけの競合眼科クリニックがあるか、またその診療内容を調査分析し、そのエリアにおける未充足のニーズを把握することが大切になります。一例となりますが、

① . 高齢者向けの白内障手術に特化したクリニック
② . 小児眼科に力を入れたクリニック
③ . コンタクトレンズやレーシック手術を強みとするクリニック

といったように、ターゲット層(高齢者、子供、働く世代など)を明確にし、競合と差別化できる強みを強調することで、開業後の集患力を高めることができます。地域の医療ニーズを適切に把握してターゲットに合った診療方針を打ち出せば、成功する可能性は十分です。本腰を入れて調べる前は「どこで開業しても競争が激しい気がする…」と漠然とした不安を抱かれるかもしれませんが、適切な準備をすることで、しっかりと地域に根差したクリニックを築くことができるでしょう。

眼科開業の魅力とメリット

2-1. 勤務医より収入が上がる可能性

参考までに労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」から勤務医の平均年収を見てみましょう。少し前のデータになりますが大変充実しており充分参考になりますので、ご紹介いたします。こちらのデータによると、眼科医個人の平均収入1,078万円となっています。一方で開業医全体の年収はどうでしょうか。令和5年に実施された中央社会保険医療協議会の「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査)報告」によると、眼科クリニックで働く医師の平均年収は31,656千円で、全診療科目平均年収29,001千円より高めとなっています(ただし個人クリニックのみ、医療法人は含まず)。これは外来診療収益やその他の医業収益から給与や医薬品費、設備賃借料などの経費を引いた損益差額となります。

この様に開業最大の魅力として、経済的な面が大きいことが分かります。前述したとおり、勤務医の平均収入1,078万円に対して、眼科開業医の平均年収は3,165万円と約3倍と大きな違いがあります。特に白内障手術や近視矯正治療を積極的に取り入れることで、更に大きな年収を得ることが可能です。さらに、経営が軌道に乗れば、勤務医時代よりも収入が大幅に増えるケースが多くあります。収益の増加は、最新設備の導入やスタッフの待遇改善にもつながり、より良い診療環境を整えることができます。

2-2. 診療方針の自由度とワークライフバランス

勤務医の場合は病院の方針がありますので、自分の理想とする診療スタイルを実現しにくいこともあります。しかし開業すれば、「どんな治療を行うか」「どの患者層をターゲットにするか」など、すべてを自分で決められます。診療時間や休日も自分の経営方針に基づき設定できるため、プライベートとの両立もしやすくなります。勤務医時代に比べて自由な時間を増やし、家族との時間を大切にすることも可能になるでしょう。

2-3. 地域医療への貢献と専門性の発揮

昨今の高齢化社会においては、その人口に準じるように白内障や緑内障の患者が増えていることもあり、眼科診療の需要が年々高まっている傾向があります。こういったなかでクリニックを開業すれば、身近な医療機関として頼りにされ、地域に貢献することができます。また特定の治療に特化することで専門性を発揮「〇〇ならこのクリニック」と認知されることで医師としてのやりがいを感じることは、開業医ならではの醍醐味とも言えます。

眼科開業のデメリットとリスク

3-1. 高額な初期投資

開業するにあたり誰もがまず考えるのが、資金の話です。開業には多額の資金が必要になります。物件取得費、医療機器、内装工事、人件費などを含めると、数千万円単位の費用がかかります。そうなりますと自己資金だけでは足りず、金融機関の融資を利用するケースも少なくありません。先日弊社で眼科の継承開業をご支援した際に、一部の医療機器の入替と新規導入の検討があったため、見積りを依頼しました。それが約2,500万円と高額であったことも記憶に新しく、資金面は大きな課題と言えるでしょう。

眼科診療に必要な機器には、視力検査機器、眼底カメラ、OCT(光干渉断層計)、視野計、手術設備(白内障手術機器など)があります。最新の機器を導入することで、より精度の高い診療が可能となりますので、眼科開業は、他の診療科に比べて機器購入費が高額になる傾向があります。開業前には詳細な資金計画を立て、無理のない借入額を設定することが重要です。また、開業後の収益が安定するまでの運転資金も考慮する必要があります。

3-2. 経営の責任とリスク

勤務医時代との大きな違いは診療だけではなく、「経営者としての責任」が伴います。責任の守備範囲が勤務医とは異なり全方位となりますので、集患対策や資金管理、スタッフの採用・育成など、幅広い業務に対応しなければなりません。経営の知識やリーダーシップが不足していると、売上が伸び悩み資金繰りの悪化につながります。またマネジメントで躓けば、スタッフの離職に繋がるリスクもあります。

マーケティングについても指揮を執ることになります。効果的なマーケティング戦略を考えるにあたり、「ウェブサイトやSNSの活用」「地域広告の出稿」「Googleマップの登録やSEO対策」などを行うこと、つまり今後は「オンラインからの集患」を考えていかなければいけない時代です。また待ち時間の短縮、スタッフの接遇向上、予約システムの導入など、デジタルを効果的に活用し患者さんの満足度を高める施策を実施することで、口コミや紹介による集患にもつながります。

3-3. 休みを取りにくい

開業直後は安定した患者数を確保する必要があるため、長期休暇を取りにくくなります。特に一人医師体制の場合、休診するとその間の収益がゼロになってしまいます。しかし事前に代診医を確保したり、スタッフの業務を適切に分担したりすることで、負担を軽減できます。経営が安定すれば、勤務医時代よりも自由に休みを取れるようになるケースも多くあります。

眼科開業戦略:成功するためのポイント

4-1. 新規開業の魅力

ゼロから開業することは、「自分の理想を実現する場を創造できる」ことが最大の魅力です。勤務医時代には実現が難しかった診療のスタイルや医療サービスを、自らの意思で一から作り上げることができ、以下のような自由度があります。

➀. 最新の医療機器を自由に導入できる
最新技術を活用し、より質の高い治療を提供することが可能です。

➁. 診療時間や診療スタイルを自由に設定
地域の患者層に合わせて、例えば働く世代の患者層が多いエリアでは、夜間診療・土日診療の時間帯を充実させたり、患者とのコミュニケーションを重視した診療スタイルも実現可能です。開業すれば、一人ひとりの患者に十分な時間を割き、信頼関係を築くことができます。

➂. クリニックのブランディングが可能
地域密着型のファミリー眼科、手術特化型クリニック、コンタクトレンズ・屈折矯正専門のクリニックなど、クリニックのコンセプトやターゲット層に応じたブランディングが可能です。また、内装デザインも自由に決められるため、温かみのある雰囲気や高級感のある空間など、理想のクリニックを形にできます。

4-2. コストカットの工夫

開業コストを抑えるためには、以下のような工夫が有効です。

➀. 中古医療機器の活用
眼科の医療機器は高額であるため、最新機器でなくても、中古で十分な機能を備えたものを導入することでコスト削減を検討しては如何でしょうか?特に、高額とされる手術機器や検査機器は中古機器でも品質の良いものがあるため、コストを大幅に抑えることができます。また、メンテナンス契約についても信頼できる業者を選ぶことで安心して使用することができます。

➁. リース契約の活用
医療機器の費用を一括で支払うのではなく、リース契約を活用することで初期投資を抑えることを検討しては如何でしょうか?最新機器は日々進化するため、リース契約により定期的に最新機種へと更新できるメリットも魅力です。また、リース契約は経費として計上できるため、税制面でもメリットがあります。

➂. 物件選びの工夫
立地は開業の成功を左右する大きな要素ですが、エリアや開業形態によっては高額なテナント費用がかかることもあります。そこで物件選びのポイントを3つご提案いたします。

●ポイント1:「既存の医療モールへの入居」
集患効果が見込める一方で、賃料が割高な場合もあるので条件の精査が重要です。
●ポイント2:「住宅街の一角や商業施設の近くを選択」
患者となり得る地域住民の生活動線に面した立地を選ぶことで賃料を抑える。
●ポイント3:「居抜き物件を活用」
眼科クリニックの居抜き物件を活用すれば、内装費を大幅に削減可能。このように、物件選びを工夫することで、無駄なコストをかけずに集患力のある立地を選ぶことができます。

4-3. 継承開業のメリット

一方で継承開業には、新規開業にはない多くの利点がありますので、下記に3つのポイントをご紹介いたします。開業の選択肢としてご確認ください。

《継承開業のメリット》
➀. 既存の患者基盤を引き継げる
継承開業の最大の魅力は、すでに確立された患者基盤をそのまま引き継げることです。新規開業の場合、ゼロから患者さんを集める必要がありますが、継承であれば開業初日から一定の患者数が確保されており、収益の安定につながります。また、長年通院している患者さんは利便性を求めている事もあるため、新しい院長になっても継続して受診する可能性が高く、集患の負担が大幅に軽減されます。

➁. 設備やスタッフをそのまま活用できる
新規開業では、医療機器の購入・内装工事・システム導入など、多くの初期投資が必要ですが、継承開業では医療機器の経年劣化はあるものの、既存設備をそのまま利用できるため、開業コストを大幅に抑えることが可能です。さらに、すでに働いているスタッフを引き継げることも大きなメリットです。スタッフはクリニックの顔と言っても良いぐらい重要な人財です。また、経験豊富なスタッフが残ることで診療の継続性が保たれ、患者さんとの信頼関係も維持されやすくなります。何といっても、新しいスタッフの採用や教育の手間が削減できることは、大きなメリットと言えるでしょう。

➂. 地域の信頼をそのまま引き継げる
長年にわたり地域で診療を行ってきたクリニックには、患者さんだけでなく、地域社会との強い信頼関係が築かれています。継承開業では、その信頼をそのまま引き継ぐことができるため、新規開業と比べてスムーズに診療を開始することができます。また、地域のかかりつけ医としてのポジションをすぐに確立できるため、競争が激しいエリアでも安定した経営が可能になります。特に診療圏内に競合が多い場合、ゼロからブランドを築くよりも、既存の信頼を活用する方が成功の確率が高くなります。

継承開業とは?~継承開業のメリット・デメリット~

4-4. 継承開業は賢い選択肢

開業の負担を軽減し、安定した経営を目指すのであれば、継承開業は非常に魅力的な選択肢です。特に、初期投資を抑えたい方、早期に安定した患者数を確保したい方、地域の信頼を活かしてスムーズに診療を開始したい方には、継承開業が適していると言えます。身近な医療機関を頼りにしている慢性疾患の患者さんにとって、通いなれたクリニックが後継者不在により閉院することは、大変困るものです。安定した診療圏を引き継ぐことのほか、「その地域の医療を絶やさないことで社会的意義の高い医療を実現する」という面からも、ぜひ継承開業をご検討いただければ幸いです。

クリニック開業で継承開業を選択する社会的意義 ~もし身近な医療機関がなくなったら~

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いかがでしょうか。今回は眼科医院の開業についてお伝えいたしました。
新規開業は理想の医療を追及する手段としてとても有効です。しかしながら診療科の特性上、高額な開業資金が必要となることも一方では考えなければならない現実です。「身近にある医療を守る」という意義を含めた継承開業にも多くのメリットとデメリットがありましたが、今後開業をご検討される先生の参考になりましたら幸いです。弊社ホームページでは継承案件の情報を掲載しており、常時ご覧いただけます。また売主様のご都合によりサイト非公開の案件も多数ございますので、ご検討の際にお役立てください。

弊社は地域医療の継続と発展への貢献を理念に、クリニックに特化したM&A支援を行っており、今後も地域医療を途絶えさせないための啓発に力を注いでまいります。ご相談は無料です。クリニックを譲渡したい方、逆に譲り受けたい方、M&Aを検討しているが何から始めたらよいかわからない方、第三者継承とはどういうものか理解を深めたい方、後継者問題でお悩みの方、開業を検討中の方、第三者継承について知りたい方は、お気軽にこちらより【✉お問い合わせ】お問い合わせください。

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