地方クリニックの後継者不在状況やM&A動向とは

この記事をシェアする

医院継承(承継)、クリニック売買、医療法人M&Aのメディカルプラスです。
本日は「地方クリニックにおける後継者不在状況やM&A動向」をテーマに、お伝えいたします。
高齢化によって全国的にクリニックの第三者継承のニーズが高まっている昨今、都会での第三者継承についてのデータは耳に入るものの、地方における第三者継承のデータがなかなか入らず、「地元での継承開業はどうなんだろう?」「都市部にこだわる必要はあるのだろうか?」等お考えになっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、統計・調査データをもとに、地方における医業M&Aの動向をご説明して参ります。本記事がクリニックM&Aを検討されている方にお役に立てましたら幸いです。

深刻な医業経営者の高齢化

厚生労働省発表の「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、全国のクリニックに従事する医師・歯科医師(診療所開設者および勤務者の合算)それぞれの平均年齢は高齢化のため上昇傾向にあり、医科においては平成14(2002)年58.0歳、平成24年(2012年)58.7歳、令和4(2022)年60.4歳、歯科においては平成14(2002)年48.6歳、平成24年(2012年)51.6歳、令和4(2022)年54.8歳となっています。

ではクリニック経営者(開設者もしくは法人の代表者)に絞るとどうでしょう。
全国のクリニックの開設者又は法人の代表者の平均年齢は、医科においては平成14(2002)年59.5歳(従事者の+1.5歳)、平成24年(2012年)60.2歳(従事者の+1.5歳)、令和4(2022)年62.5歳(従事者の+2.1歳)、歯科においては平成14(2002)年51.1歳(従事者の+2.5歳)、平成24年(2012年)55.1歳(従事者の+4.5歳)、令和4(2022)年59.1歳(従事者の+4.3歳)となっています。この30年間の推移は下記グラフをご参照ください。

医療機関の休廃業・解散件数の推移/医院継承(承継)、クリニック売買、医療法人M&Aのメディカルプラス

上記から、特にクリニックの休廃業・解散件数が顕著に増加していることが分かります。具体的には、クリニックは10年前比で約2.4倍、20年前比で約10.5倍に、歯科医院も対10年前比約2.8倍、対20年前比で11倍に、それぞれ激増しています。このことからクリニックおよび歯科医院において後継者の不在が非常に深刻化していることが読み取れます。
実際、同資料によると、日本医師会の「医業承継実態調査」(2020 年 1 月)では、クリニックにおける後継者は、「後継者候補がおり、承継について意思確認済みである」が 21.6%であるのに対し、「現段階で後継者候補は存在しない」が 50.8%、「後継者候補はいるが、意思確認していない」が 27.7%を占め、過半数の施設において後継者候補が存在しない状況となっている』とあります。この結果を地方別に見てみると、以下のようになります。

後継者の有無と意志確認の状況/医院継承(承継)、クリニック売買、医療法人M&Aのメディカルプラス

どの地域においても、後継者が確定しているという割合は高くても30%程度となっており、地域問わず後継者不在の状況に直面していることが分かります。更に、後継者不在の背景をみてみると、「医師のこども・親族がいない」54.3%、「医師の子供・親族がいるが、承継の意向が無い」25.5%、「医師の子供・親族がいるが、継がせたくない」6.1%、「その他」14.0%となっており、後継者不在のクリニックのうちおよそ8割が身内に後継者となり得る対象そのものがいないということが分かります。

医師の地域偏在について

医師の偏在とは、特定の場所や診療科に偏ってしまっていることを言います。医師の偏在に関する問題については、地域面と診療科目面とともにありますが、本コラムでは「地域偏在」について触れていきます。
「地域偏在」と聞くと、人口密度の高い都市圏には医師が多く、首都圏から遠い地方や郊外で医師不足が起きているというイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。しかし、実際はそうとは限りません。偏在を把握するには、単純に在住する医師の総数を見るのではなく、人口10万人当たりの医師数が参考とされています。

厚生労働省が発表している「令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、人口10万人に対する医療従事者数が多い3県は、医科の場合、徳島県335.7人、高知県335.2人、京都府334.3人、歯科の場合は東京都116.1人、徳島県112.6人、福岡県105.1人でした。一方、人口10万人に対する医療従事者医師数が少ないのは、医科の場合、埼玉県180.2人、茨城県202.0人、千葉県209.0人、歯科の場合、青森県55.9人、島根県57.1人、滋賀県57.3人となっています。47都道府県のなかで最も人口が多い東京都は歯科では最も多い都道府県ですが、医科は324.6人と5番目の多さ、大阪府は医科288.5人で16番目、歯科88.0人で7番目の多さとなっています。

これはあくまで全国平均であり、実際に過疎地では医療サービスの継続が難しい地域もありますので、この結果では一概には言い切れません。実際、厚生労働省「医師の偏在指標」によると、人口10万人当たりの医師数は、①医療需要及び将来の人口・人口構成の変化②患者の流出入③へき地等の地理的条件④医師の性別・年齢分布⑤医師偏在の種別(区域、診療科、入院・外来) の要素が考慮されていないため、統一的に図るものさしにはなっていないとの指摘もあります。そのため、「地域偏在」とは都市部と地方というくくりでの差に限らず、あくまで地域差といえるでしょう。今後、現在・将来人口を踏まえた医療ニーズに基づき、地域ごと・診療科ごと・入院外来ごとの医師の多寡を統一的・客観的に把握できる、医師偏在の度合いを示す指標が導入されることで、都道府県内で医師が多い地域と少ない地域が可視化され、各都道府県において具体的な医師確保対策が期待されています。

地域偏在の状況が生じている背景

そもそも、このような地域偏在の状況が生じている背景として真っ先に挙げられるのが、若年世代医師の都市部志向です。都市部だけに集中しているとは言い切れませんが、人口密度が高く利便性の良い地域に若年世代医師が集まりやすいのも事実です。厚生労働省「今後の医師偏在対策について」によると、医師少数区域の生活や教育環境について問題視されているとともに、若手医師のタイムパフォーマンスやコストパフォーマンスに関する価値観の変化も背景に考えられます。また30代以降の世代の医師でも、子の教育環境を考慮して都市部での生活を希望する医師や、専門性の高い治療に携わることへの志向のある医師が高度医療を提供する施設での勤務を希望するケース、出身大学県への定着の低下も多く見られます。

これにより生じているのが、自由開業制の下、現在東京都内を中心とした大都市でのクリニックの飽和状態です。診療科目によっては半径500m以内の競合が非常に多く、超激戦区となっています。このような状態から、財務省の財政制度等審議会「我が国の財政運営の進むべき方向」では、地域偏在対策の1つとして地域別診療報酬の活用(医師過剰地域の 1 点当たり単価(10 円)の引き下げを先行させ、それによる公費の節減効果を活用して医師不足地域の対策を強化する)が挙げられており、今後大都市部での新規開業には制限がかけられる可能性も十分推測ができます。

*総合的な対策に対する医師目線での意見書はこちら
一般社団法人日本医学会連合「医師の地域偏在是正に向けた総合的な対策に関する意見(2024年10月16日)https://www.jmsf.or.jp/uploads/media/2024/10/20241016145830.pdf

開業立地でお悩みの際は地方という選択肢もご検討を

開業をご検討の際、経営的視点から立地は非常に重要なポイントになります。確かにご自身の通勤における利便性を考えると大都市という選択肢一択になりやすいのかもしれません。しかし開業するからには何が何でも成功したいと思うことも確かでしょう。そのためにも、是非都市以外にも継承候補の門戸を広げていただき、市部にも目を向けてみてください。人口がある程度多いにもかかわらず医師数が不足している地域=競合僅少地域はたくさんあります。そういった地域で地に根を張ってクリニックを盛業させるとともに、これからの地域医療の発展の一角を担えるとしたら、大きなやりがいがあると思いませんか。また、長年地域医療を支えてこられたクリニックを継承することによって、地域医療の継続にも貢献できるとしたら、いかがでしょうか。

ご縁があれば、都市部にこだわらなくともご自身の理想に合った継承開業をすることが十分実現可能です。もし、少しでも地方クリニックの継承開業にご興味がございましたら、是非一度、継承開業アドバイザーにご相談されますことをおすすめいたします。

医院継承に関する無料相談実施中

メディカルプラスでは地域医療の継続と発展に貢献することを理念に掲げ、クリニック特化の継承支援を提供しております。専門性高いノウハウと、これまでの実績に基づいた豊富な成功事例をもとに継承をサポートいたします。無料相談を実施しておりますので「誰に相談すればよいかわからない」「何からはじめればよいかわからない」といったお悩みについてもぜひ【✉お問い合わせ】からお気軽にお問い合わせください。

【会員登録】はこちらから
クリニック譲渡案件と、譲受希望者条件が閲覧可能になります。また最新の譲渡案件・継承開業に関する情報をいち早くお届けいたします。情報収集の効率化にお役立てください。
この記事をシェアする
会員登録(無料) 案件の詳細閲覧、資料ダウンロード、
非公開案件のご案内が可能になります。
効率的な情報収集にぜひお役立てください。
会員登録無料 ご登録いただくと最新の案件情報
をいち早くお届けいたします。
ご相談・お問合せは
こちら