医院開業時に足かせになる不動産投資とは?
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こんにちは。メディカルプラスです。本日は「医院開業時に足かせになる不動産投資とは?」というテーマについてお伝えしていきたいと思います。
不動産投資を行う医師が増えている
当社には、医院継承を御考えのドクターから日々多くのお問い合わせをいただいております。ドクターとの面談では、いつ頃の開業を考えているか?どのような開業コンセプトで開業したいと考えているか?エリアはどのあたりで考えているか?といった基本的なことから、具体的な案件商談の段階では、事業収支シミュレーションの作成や資金調達のために、拠出できる自己資金の金額や、保有資産、借入状況についてもお話を伺います。
このときに住宅ローンや自動車ローンのほかに、不動産投資のため数千万円から多いケースでは数億円の銀行借り入れをされている方もおられます。特に近年は高属性のサラリーマンや公務員など不動産投資を行う方が増え、不動産投資ブームともいえる活況を見せており、それに伴い不動産投資を行う医師も増加しています。投資対象となる不動産は地方の一棟マンションから木造アパート、都内のワンルームマンションまで幅広い不動産が投資対象となっています。
医師が不動産投資を行う背景
次になぜ医師が不動産投資を行うのか?という点についてお伝えしていきます。勤務医・開業医とも他の仕事よりも勤務時間が長く、また他の職業に比べ年収が高いため、所得税や社会保険料が重くのしかかり高年収の医師になると約50%もの税金と社会保険料が徴収されるため、何も対策をしなければ資産を積み上げていくことが出来ないという背景があります。加えてこれは医師に限った話ではありませんが、日本では少子高齢化が進み、労働世代の負担は増加する一方です。もはや高度経済成長期のように右肩方上がりの所得増加を期待することもできません。こうした将来への不安を背景に若いうちから不動産投資で資産形成を考える方が多いようです。
医師が不動産投資を行う主な理由
上記で述べた背景に加えて以下のような理由により不動産投資を行うドクターが増えています。
①所得税・住民税の節税ができる
②医業・給与所得以外の副収入が得られ、資産形成ができる
➂医師は年収が高く、失業リスクが低いため金融機関から資金調達しやすい
④物件管理は不動産会社任せの為、時間や手間がかからない
⑤相続税対策・生命保険代わりになる
勤務医の注意点
勤務医の場合、節税対策として不動産投資を行うにあたり、将来開業を検討しているのであれば過度な不動産投資は控えた方が良いでしょう。その理由として、開業する際に自己資金で開業できる人は少なく、大半の勤務医は銀行融資にて資金を調達します。
不動産投資を行ううえで、大事なポイントは不動産事業単独のキャッシュフローです。不動産事業単独のキャッシュフローとは、所有する不動産から得られる家賃収入から管理費、修繕費、銀行への元利金、その他諸経費を差し引いた金額がいくらあるかということです。
ここがしっかりとプラスになっていれば、不動産投資単独でキャッシュフローが回っていることになり、つまり不動産事業として成立していることを意味しますので、銀行評価において大きなマイナスにはなりません。しかし実態はキャッシュフローが回っていない不動産投資の方が圧倒的に多いのです。キャッシュフローがマイナスということは、例えば家賃100万円に対して、管理費や銀行返済の合計は120万かかり、毎月-20万円の状態ということです。キャッシュフローが回っていないならそもそも不動産投資をする人なんていないのでは?と思われる方も多いかもしれませんが、医師は年収が高いため、医師としての給与所得と不動産投資による赤字を損益通算し税負担を減らすことで、不動産投資による赤字額よりも得られる節税効果の方が大きくなります。
収益不動産を販売・仲介する不動産会社はこうした節税スキームを提案し、勤務医や高属性のサラリーマンに収益不動産を販売しています。本コラムではこうした節税スキームを決して否定しているわけではなく、確かにこうした節税スキームを使うことで損益通算後の手残り額を増やすことができます。しかし、この状態を銀行がどう考えるかというと、不動産事業の赤字を勤務医の給与で補填して何とか資金が回っている状態であり、つまり体調不良やケガにより給与収入が得られなくなる=資金繰りが回らなくなるとみなされます。こうした資金状態のドクターに開業資金を融資すると、開業資金として融資した運転資金が不動産投資の返済に回ってしまうのではないかと銀行は考えます。
借入金額や月々のキャッシュフローによっては開業資金を融資する前提条件として、保有不動産の売却を求められることもあります。このときに借入の残債以上の価格で売却することができれば、問題ないのですが、多くの方は買うときに高く買ってしまっているため、残債以下でしか売ることができず、売っても借金だけが残ってしまうケースが大半です。
まとめ
不動産投資そのものを否定するわけではありませんが、将来的に開業を考えている場合、節税対策だからと言って過度な投資を行ってしまうと、いざ開業という段階の資金調達で思わぬ困難が生じる可能性がありますので、不動産投資は慎重に判断されることをお勧めいたします。
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