医療法人M&Aにおける退職金の意義とは?
INDEX
医院継承(承継)、クリニック売買、医療法人M&Aのメディカルプラスです。
本日はクリニックM&Aにおける退職金についてお伝えいたします。この記事は、クリニックM&Aによるクリニック譲渡をお考えの方を対象としています。なお、いまだに主流である旧法の出資持分ありの医療法人を旧法の医療法人のまま譲渡(出資持分譲渡)するスキームを前提にご説明いたします。
旧法の医療法人譲渡対価の額
医療法人のクリニックM&Aの場合、継承前から医療法人が保有している資産や負債をすべて引き継ぎます。資産とは、将来の収入をもたらす経済的資源であり、負債は将来の支出をもたらす経済的義務とされています。したがって、資産と負債の差(純資産)は、将来的に医療法人が得られる正味資源ということになり、譲渡金額のベースとなります。
しかし、資産計上額は取得原価など過去の支出金額に基づいて評価されていることも多く、将来得られる収入額とイコールではありません。また、貸借対照表にオンバランスされていない診療に関する責任や、労務管理等の責任も引き継ぐことになります。そこで、財務デューデリジェンスによって将来のキャッシュフローやリスクを予測・評価し、のれん価値を純資産額に加算することで、譲渡対価の額を決定していきます。
「資産-負債+のれん代」が譲渡価格となるイメージです。
譲渡対価を退職金で受け取るという選択肢
譲渡価格は先述のような手続きを経て算定されます。ですから、将来性が高く、経営が順調にいっている医療法人ほど、高い譲渡価格として評価されます。譲渡側としては、なるべく高く譲渡したいと考えますよね。しかし、いくら将来性がある医療法人であったとしても、あまりにも譲渡価格が高ければなかなか買手は付きづらく、クリニックM&Aそのものが成立しづらくなる傾向があります。この様な場合には、戦略的に譲渡価格を抑えることが有効です。
対策方法の一つとして、譲渡対価を退職金として受け取るという選択肢が挙げられるでしょう。過年度よりプールしてきた利益部分から退職金を支払うことで、出資持分の評価を下げることができます。結果として譲渡価格が抑えられることになるのです。
退職金として受け取るか、譲渡対価として受け取る
そこで気になるのが、退職金に相当する金額を「退職金として受け取る」のと、「譲渡対価に含めて受け取る」のとでは、どちらがお得なのかという点ではないでしょうか。これを考えるうえでは、次の2つの観点から検討する必要があります。
●クリニックM&Aという取引に対する影響
●あなたの手元に残るお金に対する影響
クリニックM&Aに関しては、退職金として受け取れば、その分譲渡価格が抑えられますので、買い手側の負担を軽減できます。それによりクリニックM&Aが取引として成立する機会は増えるといえるでしょう。
一方、売手の手元に残るお金については、ケースバイケースでの判断が必要です。というのも、これまでの勤務状況によって所得税の計算への影響が変化するためです。ですから、どちらがお得である、ということはこの場で申し上げることができません。知っておいていただきたいのは、クリニックM&Aを進める際に、税額算定への影響なども考慮したうえで、入念な準備を進める必要があるという点です。こうした準備を軽視してしまうと、結果として大きな損失を被るリスクも考えられるのです。
クリニックM&A無料相談実施中
当社は医療機関に特化したM&A仲介会社として、お客様に寄り添って、なるべく多くの創業者利益を確保できるためのご提案を行うことが可能です。また、多くの買い手様の案件を抱えていますので、希望条件の買い手様とのマッチングを、なるべくご希望のタイミングで成立させられます。本記事では、旧法の医療法人のまま譲渡するケースを前提に執筆しましたが、もちろんそれ以外のケースも対応可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
当社では無料相談を実施しております。医院継承(承継)、クリニック売却買収、医療法人M&Aをお考えの方はこちらより【✉お問い合わせ】お気軽にお問い合わせください。
クリニック譲渡案件と、譲受希望者条件が閲覧可能になります。また最新の譲渡案件・継承開業に関する情報をいち早くお届けいたします。情報収集の効率化にお役立てください。
人気記事
-
譲渡 譲受
医療機関の休廃業・解散が過去最多、倒産の12.9倍
こんにちは。メディカルプラスです。今回の記事では、昨今の医療機関の休廃業・解散をテーマに展開してまいります。令和6年4月17日に帝国データバンクより発表された「医療機関の休廃業・解散動向調査(2023年度)」にて医療機関の休廃業・解散が過去最多であることが報告されています。過去に弊社HPでも同機関より発表された「医療機関の休廃業・解散動向調査(2021年)」について取り上げ、記事を掲載いたしまし -
譲渡 譲受
最新版:進む医師の高齢化 ~開業医は何歳で引退?医師平均年齢から見る後継者問題~
こんにちは。メディカルプラスです。医師は医師免許を持っている限り生涯現役働くことができ、また自分自身で引退時期を決めることが可能な職業ですが、どのくらいの年齢がボリュームゾーンで、またどのくらいの年齢で職業人生からの引退を考えるのでしょうか。今回の記事では、高齢化が進んでいると言われている医師の平均年齢をみるとともに、クリニック後継者問題とその関連性についてみていきたいと思います。そもそも医師に -
譲渡 譲受
開業医の年収事情 ~ピーク到達のタイミングとは?~
こんにちは。メディカルプラスです。今回は、「開業医の手取り年収ピーク」をテーマにコラムを展開してまいります。多くの方々が、年数が経過するごとに年収が増えていくとお考えかもしれませんが、統計などの広い観点から見ると、実際のところは少し異なります。開業医の年収ピークは通常開業から5~9年目に訪れ、その後はゆっくりと減少していく傾向があります。この現象の背後には、クリニック経営に関わるさまざまな課題が