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こんにちは。メディカルプラスです。
今回は、「開業医の手取り年収ピーク」をテーマにコラムを展開してまいります。多くの方々が、年数が経過するごとに年収が増えていくとお考えかもしれませんが、統計などの広い観点から見ると、実際のところは少し異なります。開業医の年収ピークは通常開業から5~9年目に訪れ、その後はゆっくりと減少していく傾向があります。この現象の背後には、クリニック経営に関わるさまざまな課題が潜んでいることが要因となっています。今回の記事では、開業医の年収とクリニック経営の課題との関わりに、焦点を当ててみたいと思います。ぜひご一読ください。
開業医の平均年収は?
まず、開業医の平均年収についてご説明いたします。厚生労働省提供の令和元年公表の「第22回医療実態調査」によれば、典型的な開業医の平均年収は2,807万円、一方、勤務医の平均年収は1,491万円となっています。この差は1,316万円に達し、開業医は勤務医と比較しておよそ1.88倍の年収を得ていることがわかります。所得税、住民税、社会保険料の控除後における実際の手取り額を比較すると、開業医の手取りは約1,675万円であり、一方、勤務医の手取りは約1,015万円で、差額は660万円となります。このため開業医は、勤務医の手取り所得を約1.65倍上回っていることが分かります。
同じく厚生労働省提供の令和3年公表の「第23回医療実態調査」の報告によると、開業医の平均年収は2,699万円となり、前回調査から108万円減少しています。同様に、勤務医の平均年収も1,467万円となり、前回調査から24万円減少しています。ここで注目すべきは、開業医と勤務医の両方が年収を減少させている点ですが、その減少幅は開業医の方が大きいことが見て取れます。
この2年間の変化を考える上で重要なのは、新型コロナウイルスの流行です。感染拡大を防ぐために行われた不要不急の外出制限により、多くの患者が診療を控えたことから、多くの医療施設の収入が減少し、開業医の年収も減少しました。これが大きな影響を及ぼした要因であることが推測されます。それでもなお、開業医は勤務医の約1.83倍の年収を維持していることになります。
【参照】厚生労働省
・第22回 医療経済実態調査
・第23回 医療経済実態調査
なぜ開業5~9年目以降は、年収が下がっていくのか?
開業医の年収が5~9年目で最高点に達する背後には、大きな要因が3つあります。
① . 院長自身の体力やモチベーションの低下
② . 新たな医療機関の設立による患者の分散
③ . 医療費抑制政策の進行
これら3つの要因は、「内的要因」と「外的要因」に分けられ、これによってクリニック経営の直面する課題が全体的に見渡せるようになります。ここからその2つの軸に沿って、さらに掘り下げていきたいと思います。
内的要因から見る開業医年収の減少
開業して間もない段階では、院長の年齢は若く、モチベーションも高いため、例えば1日に50人以上診察するケースがあったとしても難しくありません。働けば働くほど年収が増えていく時期と言えるでしょう。
30年ほど前にはこういった層、つまり「30代での開業」が主流の傾向もありました。しかし最近では年齢相応の落ち着きを持った「40代以降での開業」が増加しています。ベテランに足を踏み入れる年齢になってからは、無理のきいた若手時代と同様の勢いを保ち続けられるかというと難しい、といった面が出てきます。年数の経過により体力や気力の衰えが顕著になると、1日の受診患者数の制限や新規患者の受診を断ったり、診療時間を減らしたり、休診日を増やしたりして対応せざるを得ません。
開業資金等の借入金を返済し終える10年目あたり、おおよそ50歳を超える頃から、開業当初の勢いがなくなる方が多いようです。その結果、開業して10年ほど経過した時期から、徐々に年収が減少し始めると考えられます。
外的要因から見る開業医年収の減少
次に、外部の要因による年収減少を2つの視点から詳しく説明します。
一つ目として、開業後10年ほど経過すると、周囲に競合するクリニックが多く出現し、それにより患者が分散してしまうことが挙げられます。競合クリニックが新規開業したばかりの段階では、集患に苦労するかもしれませんが、徐々に口コミが広がり、患者数も増え始めます。このようにして競合が集患に成功した後に対策を講じても、その効果は限られており、一度減少した患者数を元に戻すのは難しいと言えるでしょう。
また二つ目として、診療報酬や医療費負担の改定など、医療費抑制政策による患者数減少の影響も見逃せません。特に高齢者のクリニック来院が減少しており、医療費抑制政策が深刻な影響を与えています。高齢者の医療機関離れは、クリニック経営にとって大きな懸念事項です。
患者数の減少は、クリニックの財政状態を悪化させます。通常の企業なら業績の悪化に対して人員削減や経費削減を実施することがありますが、医療機関の場合、看護師や事務員の削減は簡単ではありません。また、医療法人の場合、不動産投資などによる医療行為以外の活動から収益を上げることも禁じられています。患者数の減少による収益悪化の影響は、院長が自らの給与をカットして対応することが多いようです。
クリニックM&Aも選択肢のひとつ
このように、クリニック経営は10年目を迎えるあたりから、徐々に難しさが増していき、開業医の年収も減少傾向に陥ることが、お判りいただけたと思います。開業医人生を俯瞰で見た時、クリニック経営が順調なうちに、クリニックの将来について考える時間を持つことをおすすめいたします。
ひとつの手段として、クリニック経営が順調なうちに、クリニックM&Aによる譲渡、つまりクリニックM&A(合併・買収)を選択肢に入れるケースが増えています。クリニック経営が順調なうちに譲渡をすれば、多くの開業希望者の目に留まりやすく、商談に発展する可能性が高くなります。また、譲渡価格そのものも高額になる傾向があることも早めの譲渡をおすすめする理由の一つです。クリニック経営の悪化が表面化した後では、譲渡価格は低くなりますし、商談そのものも少なくなる傾向があります。
院長先生が長年にわたって大切に運営されてきたクリニックを、満足のいく後継者に引き継ぎ、創業者の価値を譲渡対価として受け取るためには、引退時期だけでなく、医業の収支や患者数などを含めた譲渡の適切なタイミングを考慮されることが重要です。
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