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クリニック継承・M&Aにおける「基本合意書(MOU)」の役割を解説!

  • 医療継承コラム

こんにちは。メディカルプラスです。
本日は「基本合意書(MOU)」についてお伝えいたします。「そもそも基本合意契約とはなにか?」「最終契約の前にわざわざ締結する必要はあるのか?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。本記事では基本合意書とは何かということから、基本合意契約における重要なポイントについてご紹介いたします。クリニックM&Aをご検討中の方の参考になりましたら幸いです。

基本合意書とは

基本合意契約(Memorandum of Understanding, MOU)は、売手と買手候補者が結ぶ合意文書です。クリニックM&Aのスキームにおいては通常トップ面談を経て、売手側と買手側の双方が「M&Aに向けて交渉を進めたい」という意向が一致すると、これまでの交渉過程の中で固まっている合意事項を確認し、書面により締結するのが基本合意契約となります。イメージとしては、結婚前の「婚約」のようなもので、双方がM&Aを最終契約まで進める意思を固め、具体的な条件について合意したことを示します。

基本合意契約書の一般的な記載条項

それでは、基本合意契約書にはどのような記載条項があるのかご紹介いたします。一般的には以下の内容について記載されるケースが多いです。


➀.M&Aの基本的な内容

取引当事者の氏名(法人名)およびM&Aの対象となる事業所名とその所在地
譲渡スキーム:個人ならば事業譲渡、法人ならば出資持分の譲渡または基金返還請求権譲渡について記載します。
実行スケジュール:最終契約をいつまでに締結するのかという期限を記載します。
取引価格


➁.関係者の処遇

従業員の採否(事業譲渡の場合):医療法人の場合は包括継承のため採否ではなく処遇に関する条文が記載されます。処遇とは新たな雇用主となる買手側が対従業員に対し、最終譲渡契約日以降の雇用条件を提示し、雇用継続を希望する従業員の雇用を継続するといった内容が記載されます。


➂.デューデリジェンスの実施

基本合意書締結後、買手側が各専門家(弁護士、公認会計士、税理士など)を通じて、売手側の事業(医療法人)の買収監査を希望する場合、売手側は買収監査に協力することを記載されることが一般的です。監査の対象となるのは主に財務、税務、法務、医療体制、経営状況などが該当します。


➃.費用負担について

当M&Aに要する費用、一例といたしまして弁護士、公認会計士、税理士その他専門家に対する報酬等は、売手側および買手側それぞれの費用で負担をすることを記載します。


➄.独占交渉権

基本合意契約締結に伴い、売手側が買手側に付与する権利であり、買手側が独占的に交渉できる権利の範囲と期間を記載します。売手側は定められた期間内は他買手候補者との商談を進行することができなくなります。


➅.秘密保持義務

当M&Aにおける契約内容を秘密保持することを記載します。


上記以外にも、前院長の引継期間や条件、前院長の管理医師としての継続勤務の可否、契約違反における違約金などが合意事項として記載されるケースがあります。
基本合意契約書は最終譲渡契約締結に向け、一定段階基本合意契約締結までに合意したことを書面にまとめたものであり、原則として一部の条項を除き法的な拘束力を持つものではありません。基本合意契約締結後、デューデリジェンス(買収監査)の結果や最終交渉過程において交渉が決裂し、最終譲渡契約締結まで至らないこともあります。
なお、ご参考までに基本合意契約締結後、残念ながら破談となってしまった要因をいくつかご紹介いたします。

・買手側に債務があり、当初予定していた資金調達がうまくいかず破談。
・最終譲渡契約直前で買主側が売主側へ取引価格の減額求めるといった事態となり、売主側が自身のクリニックをお任せできないかもしれないという心情を抱かれたため破談。

前述のような事態により破談となってしまうことありますので、双方で協議が必要な事項は基本合意契約締結前に整理されることをおすすめいたします。

法的拘束力について

前述の条項には一部を除き原則として法的拘束力は持っていません。ここからは、法的拘束力は何に付与されるのかをご紹介いたします。


➀.独占交渉権

前述のとおり、売手側が特定の買手側に対して一定期間、他買手候補者との交渉を排除する権利を与えるものです。期間については双方の合意の上で定められますが、クリニックM&Aにおいては基本合意契約締結から1~3ヶ月とする事例が多く見受けられます。ここからは基本合意契約において独占交渉権を条項に記載する意義を買手側、売手側の視点でご紹介いたします。

【買手側】
合意事項として明記された期間内に、買手側は融資など資金調達の準備、スキームの整理、買収監査、最終譲渡契約書に記載する条項の整理・確認といった対応をします。売手側が他買手候補者と一定期間交渉を進めることはないため、買手側は落ち着いて前述の対応に時間とコストを割くことができます。

【売手側】
一方、売手側においては譲渡する資産の確認と整理、買手側から買収監査の依頼があれば協力、最終譲渡契約書に記載する条項の整理・確認といった対応をすることになります。買手側を一人(一法人)に特定することで、交渉に集中することができるため、最終譲渡契約までにどのような準備、対応をすれば良いのか、最終譲渡契約以降はどのような行政手続きや対応が必要なのかを具体的に検討することができるので、円滑に交渉を進める準備が出来るのです。

以上のように、買手側は継承準備を整えるための準備時間、コストを要することから法的拘束力を持たせた独占交渉権を希望されます。売手側においては独占交渉権を合意事項とするのはデメリットに感じられるかもしれませんが、特定の買手に絞ることで最終譲渡契約の整理、準備に集中することが出来るのです。


➁.秘密保持義務

M&Aを検討するにあたり、M&Aを支援する仲介会社との秘密保持契約を締結致しますが、売手側と買手側の当事者間の契約ではないため、改めて基本合意書において秘密保持条項を定め、基本合意が秘密保持契約を兼ねるケースが一般的です。
それでは、売手側、買手側それぞれにおける秘密保持義務の意義についてご紹介します。

【売手側】
売主側においてはM&Aに関する情報の漏洩は、スタッフや患者様の不信感を招き、クリニックの経営に深刻な影響を与えることになります。
また、デューデリジェンスでは売主側は多くの秘密情報を提供することになりますので、秘密が守られる保証がなければ安心して情報を提供することはできません。

【買手側】
一方買手側としても、買手側が開示した情報を売主側に漏洩されることから守ることができ、加えて秘密保持義務を合意事項とすることで売主側に安心してもらうことができますので、デューデリジェンスにおいて積極的な協力を獲得することに繋がるのです。


以上の理由で「独占交渉権」「秘密保持義務」の2点は基本合意書において法的拘束力を付与した形で合意することが一般的です。その他にも、一例として「合意管轄」を条項に記載するケースもあります。民事訴訟法第11条において、「当事者は、合意により特定の裁判所を第一審の専属管轄裁判所とすることができる」と定められており、当事者が合意した裁判所以外で訴訟を提起することは、基本的には出来なくなるという法的拘束力を持っています。

基本合意書は、買手側が買収監査を行う前に締結されますので、買手側にとっては買収監査を通じて対象の内部情報を把握する前に条件面について法的な義務が生じる契約をすることは困難です。そのため、法的拘束力を付与すべき事項以外は、法的拘束力を付与せず柔軟に記載することになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。基本合意契約は一部を除き法的拘束力を持つものではありませんが、デューデリジェンス前の段階で売手側と買手側の双方で合意事項(取引金額、時期、スキーム、その他の双方の要求など)を明文化して認識を共有することを目的とし、合意事項の一部に法的拘束力を持たせることで買収監査や資金調達など継承むけた準備期間となります。
基本合意契約を締結することで、その後の交渉がスムーズに進みやすくなりますし、当該合意が最終契約の交渉の際のベースになることから最終契約むけた重要な節目であることはご理解いただけたのではないでしょうか。
しかし、売手側と買手側の双方にとって「何がM&A交渉における重要な論点となるのか」が、そもそも分からないことが一般的です。そういった潜在的な問題要素をなるべく早期に気づき洗い出すこともアドバイザーの重量な役割の一つとなります。専門のアドバイザーであれば資料やM&Aスキームを通じて、どういった問題が生じるかある程度は予見することできますので、ご不明な点等ございましたらお気軽にご相談ください。

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