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居抜きクリニックでの新規開業なら初期費用は大幅ダウン?~そのメリット・デメリット~

  • 医療継承コラム

こんにちは。メディカルプラスです。今回のコラムは「居抜き開業で費用は大幅ダウンする?」をテーマにお送りいたします。

当社には毎日多くのドクターや医療法人様から「医院を譲渡したい(売りたい)」、「医院を譲り受けたい(買いたい)」というお問い合わせをいただきます。なかには「クリニックは既に廃業しているので居抜きで開業したいというドクターを紹介してほしい」というご相談を受けることがあります。当社はクリニックの事業承継仲介をしていますので、こうした廃院済みの居抜き物件はお引き受けしておりませんが、世の中にはクリニック向け居抜き物件として募集しているテナントが多々あり、また実際に居抜き物件で開業するドクターもおりますので、一定のニーズはあるといえます。では「新築開業」「居抜き開業」、はたまた「継承開業」にはどのような違いがあるのか見ていきたいと思います。

一般的な開業物件はスケルトンから内装を新築

まずはじめに、一般的なテナントビルでの新規開業について触れておきたいと思います。通常クリニックで使用するテナントビルはスケルトン状態で物件の引き渡しを受けることが多く、そこからテナント側(借主側)で内装工事を実施します。
スケルトンとは、内装がなく建物の躯体(床、壁、天井)だけの状態(コンクリート打ちっぱなし)になっていることです。ここから借主側で壁・床・天井、それから照明器具・エアコン・水回りなどの工事を行います。内装工事にかかる平均的な期間は1.5カ月~2カ月程度で、工事期間中も家賃が発生するケースが一般的です。新築開業には以下のようなメリット・デメリットがあります。

新築開業のメリット

・制限を受けることなく一から自由にレイアウトやデザインすることができる。
・新築なので開業後長期間内装設備を使うことができる。

新築開業のデメリット

・初期投資が大きくなる(坪単価60万~80万円×床面積)
・設計から内装工事完成までの時間がかかる(設計を含めると半年程度)

新築開業の一番のメリットは設計デザインの自由度です。予算の許す限り、自身思い描く理想のクリニックを設計士と共に図面に落とし、一から創り上げていくことができます。また内装の税法上の償却期間は15年程度ですが、実際は償却後もまだまだ使うことができ、開業後改修工事を行わずに長期間に渡って内装を使用できるという点も新築開業のメリットであるといえます。

一方デメリットとしては、開業までの時間がかかるという点があります。一般的に設計から建築までに半年程度の期間を考慮する必要があります。
加えて一から内装を新築するための建築コストが必要になります。東京オリンピック特需で高騰していた建築コストはオリンピック後も下がることなく、建築業界の慢性的な人手不足や、新型コロナやウクライナ情勢による物流の停滞などを背景に高騰し続けています。具体的には50坪のクリニックを新築する場合、坪単価70万円として3,500万円ほどの初期投資が必要になります。内装工事期間中の賃料も考慮するとさらに100万~150万程度のコストがかかります。

クリニック開業物件を選ぶポイント

居抜き物件で大幅コストダウン

続いて居抜き開業についてみていきます。一般的なテナント(新規開業)がスケルトンでの引き渡しであるのに対し、居抜き物件は前の借主が設置した内装や設備が残っている状態で引き渡しを受けます。クリニック向けの居抜き物件には、前のテナントがクリニックだった物件もあれば、事務所や飲食店など他業種だった物件もあります。前のテナントがクリニックだった場合、同じ診療科目であればそのまま内装を使え、他科であっても必要に応じて一部修繕し、大半はそのまま使えるケースも多いと思います。事務所の居抜き物件であれば、精神科など水回りの設備やレントゲンの設置が不要な診療科目であればそのまま使用できるケースもあるでしょう。前テナントがクリニックだった居抜き物件には、内装だけでなく、医療機器や処置台、待合イス等の設備までついている物件もあり、立地や内装レイアウトなど自身のイメージと合う物件と巡り会えれば、大幅に開業コストを抑えることができる可能性があります。居抜き開業には以下のようなメリット・デメリットがあります。

居抜き開業のメリット

・開業コストを大幅に抑えることができる
・開業までの時間を短縮できる
・行政の許可を受けやすい
・前クリニックの認知度を引き継げる

居抜き開業のデメリット

・レイアウトの自由度がない
・老朽化している
・瑕疵が隠れている可能性がある
・前クリニックのネガティブな評判を引き継ぐ可能性がある

居抜き物件の最大のメリットは開業コストを大幅に削減できることです。
加えて通常半年程度かかる設計から内装工事の期間を短縮することができるのも大きなメリットです。
また前テナントがクリニックだった場合、レイアウトを改修しなければ、行政の許可がスムーズにおりる可能性が高いです。ただし前クリニックが古いクリニックだった場合、例えば診察室と処置室の間に仕切りを設け患者さんのプライバシーに配慮するようになど、現在の医療法に適した指導を受けることもあります。前クリニックの認知度を引き継げるという点においては、例えば地域住民の間で「前○○クリニックだったところに、新しいクリニックが開業したみたいよ」という形で、「もともとクリニックがあった場所」として認知されていますので、新築開業と比較してクリニックの認知が広まるスピードが速いことが期待できます。前クリニックに通院していた患者の来院がどの程度見込めるかは、前クリニックの移転の有無や、廃院後の期間などによって変わります。前クリニックが近くのテナントに移転している場合、患者さんをそのまま連れていきますので居抜き開業後の来院はほぼ見込めません。
また廃院後の期間についてですが、一般的にクリニックを廃院するときは、前院長が紹介状を書き、近隣の医療機関に患者さんを引き継ぎ、そこが新しいかかりつけ医になります。新しいかかりつけ医が決まるとその医療機関に対して、「対応が悪い」「距離が遠すぎる」など何らかの不満がない限り転院するケースは稀です。よって廃院から一定期間経過している場合は前クリニックの患者さんの来院は期待しない方がよいでしょう。

デメリットについては、既にある内装設備をそのまま使うため設計やデザインの自由度がないこと、また設備が経年劣化している場合は、開業後の突発的な設備の故障や瑕疵が見つかるなどトラブルが生じる可能性があります。一般的な居抜きは瑕疵担保免責、現状有姿で引き渡しとなるケースが大半ですので、開業後に設備の故障があった場合は、テナント側(借主側)が修繕、改修する必要があります。また前クリニックが経営不振で廃業した場合や、不正請求や医療訴訟、その他ネガティブな要因でニュースになってしまったという場合もあり得ます。この場合、こうした前クリニックのネガティブなイメージを引き継いでしまう可能性もあり得ますので前クリニックの評判はできる限り調べることをお勧めします。

患者の引継ぎがある継承開業

最後に継承開業についてお伝えしていきます。なかには継承開業は居抜き開業と同じだと思われている方もいると思いますが、居抜き開業と継承開業の最大の違いは患者さん(カルテ)の引継ぎがあるがどうかという点です。居抜き開業が廃院済みのテナントに残置された内装や設備を引継ぐのに対して、継承開業は現在診療継続中のクリニックを診療を継続したまま、内装設備にとどまらず、患者さんや従業員も含めクリニックの事業をそのまま引継ぎます。継承開業には以下のようなメリット、デメリットがあります。

継承開業のメリット

・患者さんを引継ぐため開業初月から利益が見込める
・開業までの時間を短縮できる
・従業員も引き継ぐため採用コストがかからない
・銀行融資を受けやすい

継承開業のデメリット

・レイアウトの自由度がない
・設備が老朽化している
・前院長と比較されてしまう
・コストとして営業権(のれん代)が発生する

継承開業の最大のメリットは患者さんを引き継ぐため、開業初月から利益が見込める点です。新築開業であれ居抜き開業であれ、開業後にコストをかけて様々な集患対策を行いながら患者さんを少しずつ増やしていく必要があります。クリニックが新規開業してから黒字化するまでの期間はおおよそ1年半と言われており、それまでの間クリニックの家賃や従業員の給料、水道光熱費、院長の生活費など運転資金から支払う必要があり、黒字化するまで運転資金は減り続けます。継承開業では、例えば今まで1日平均患者数50人のクリニックを継承すると、開業初日から50人の来院患者が見込めます。1日50人の患者さんが来院すれば、診療単価5,000円として、50人×5,000円×20日=5,000,000円/月程度の売上を見込むことができ、開業初月から利益を上げることができます。また引継ぎ期間を設けることで院長交代による患者さんの減少を最小限に抑えることができます。加えて昨今どこの医療機関も人手不足で看護師や技師などの専門職の採用に苦労していますが、継承開業の場合はこうした専門職の職員も引継ぎことができ、採用コストや採用後の教育コストを抑えることができます。さらに前クリニックの実績を引継ぎことができるため、銀行からの融資も受けやすいという点も継承開業のメリットです。

一方継承開業のデメリットについては、居抜き開業と同様に設計やデザインの自由度がない点、また設備が老朽化しているという点に加え、前院長と比較されることがある点、営業権(のれん代)が必要になるという点があります。
長年クリニックに通院している患者さんは前院長の診療方針を信頼して通院しています。院長交代後に急に診療方針を変えた場合に「前の先生はこうしてくれたのに」、「今までと同じ薬を処方してほしい」、「前の先生より検査が増えた」、「新しい先生はあまり話を聞いてくれない」などさまざまな声があがり、場合によっては転院を検討されてしまうこともあります。継承の最大のメリットは患者さんを引き継げることですので、診療方針を変える場合は患者さんとの信頼関係をつくりながら、少しずつ時間をかけて変えていくことをお勧めします。そうすることで患者さんを減らさずに診療方針を変えていくことができます。

また、当社に寄せられるご質問の中に「前院長のネガティブな評判があったとしたら、それを引き継いでしまうのではないか?」というご相談をいただきます。確かにすべての患者さんから支持されることは難しく、マイナスな評判を引き継ぐことはありえます。しかし仮にそうであったとしても、継承開業の場合はこれまでの来院患者数、さらにいえば売上・利益という経営上のエビデンスがあります。インターネット上で厳しめの口コミが確認できたとしても盛業しているクリニックは沢山あり、盛業しているということはそれだけ多くの患者さんに支持されているということですので、盛業中のクリニックであればネガティブな評判というのは、あまり気にする必要はありません。

最後のデメリットとして営業権(のれん代)がかかるという点があります。営業権とは、患者さんや従業員の引継ぎ、地域の知名度、信頼など目に見えない無形資産に対する対価です。営業権というコストが生じることはデメリットである一方、開業後の集患対策や従業員の採用で苦労することはなくなるというメリットを得ることができます。

継承開業とは?~継承開業のメリット・デメリット~

ここまで新築開業、居抜き開業、継承開業についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?それぞれのメリット・デメリットを理解していただいたうえで自身のスタイルに合った開業形態選択の一助になれば幸いです。

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