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勤務医と開業医の違いを徹底比較!

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こんにちは。メディカルプラスです。いつも医院継承コラムをご覧いただきありがとうございます。
ホームページをご覧になられている方のなかには、これからクリニックの開業を御考えの方も多くいらっしゃると思います。クリニック開業の動機は人ぞれぞれですが、開業には様々なリスクが伴います。そもそも開業が最善の選択肢なのか?悩まれてなかなか開業に向けた一歩が踏み出せない方もいると思います。本コラムではこれから開業を考えている方に向け勤務医と開業医の違いについてお伝えいたします。

勤務医と開業医の「割合」は?

まずはじめに、医師総数における勤務医と開業医の割合についてみていきたいと思います。全国にはどのくらいの医師がいて、そのうち開業医はどのくらいいるのでしょう。
厚生労働省の「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、令和2年12月31日時点の全国の届出「医師数」は339,623人となっています。そのうち「診療所の開設者及び法人の代表者」が72,586人となっていますので、全国の医師総数のうち21.3%、実に「医師5人のうち1人が開業医」という計算になります。

→参考資料:厚生労働省提供【令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況】

開業医選択の「動機」とは?

続いて勤務医がクリニックの開業を選択した動機について、みていきたいと思います。
少し古いデータになりますが、日本医師会が全国の開業医(診療所及び病院の開設者)を対象に実施したアンケート結果(2009年9月集計)を参照すると、開業の動機上位5位は以下の通りです。

■開業の動機

1位 理想の医療の追求(42.4%)
2位 将来に限界を感じた(35.1%)
3位 経営も含めたやりがい(26.3%)
4位 精神的ストレスに疲弊(21.0%)
5位 過重労働に疲弊(18.6%)

「理想の医療を追求したい」というポジティブな開業動機が1位で、次いで「将来に限界を感じた」「経営も含めたやりがい」という自身のキャリアチェンジを考えた動機が続きます。さらに「精神的ストレスに疲弊」、「過重労働に疲弊」という精神的・肉体的な辛さを背景とした開業動機が21%と、あらためて勤務医の就労環境の厳しさが浮き彫りなっている印象です。

加えて同アンケートでは、開業の平均年齢について「41.3歳」との調査結果が出ています。さきほどの勤務医と開業医の割合では「医師5人に1人が開業医である」とお伝えしましたが、年代別の勤務先の割合は以下のようになっています。

■年代別:勤務先の割合

医師総数(病院・診療所) 病院勤務医 診療所勤務医 診療所に勤務す医師の割合
総数 323,700人 216,474人 107,226人 33.12%
29歳以下 31,609人 31,300人 309人 0.97%
30歳-39歳 66,210人 61,157人 5,053人 7.63%
40歳-49歳 67,406人 49,194人 18,212人 27.01%
50歳-59歳 67,525人 39,030人 28,495人 42.19%
60歳-69歳 56,951人 25,116人 31,835 55.10%
70歳以上 33,999人 10,677人 23,322人 68.59%

上記調査結果には開業医のみのデータはなく、「診療所に勤務する総医師数:107,226人」には「開業医:72,586人」に加え、「診療所の勤務医:34,640人」が含まれておりますが、勤務先の傾向をみるには十分なデータです。
診療所に勤務する医師は、49歳以下では同年代全体の14.26%にすぎませんが、50歳以上の年代では同年代の52.78%の医師が診療所に勤務しています。前述したクリニックの開業動機にもあったように、病院勤務の過酷な就労環境を背景に、50歳以上の年代では50%以上の医師が診療所に勤務しているということがわかります。

→参考資料:【日本医師会 開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査】

勤務医時代と開業後の「負担」比較

続いて勤務時代と開業後の「負担」の違いについても、先ほどのアンケート結果を見てみましょう。診療面と管理面、それぞれの上位5位までの調査結果は以下の通りです。

■診療面

勤務医時代の方が負担だった業務(n-1984/複数回答) 開業後の方が負担になっている業務(n-1984/複数回答)
1位 当直(44.5%) 1位 レセプトの作成・チェック(52.2%)
2位 時間的拘束(37.7%) 2位 自身の医療水準の維持(49.5%)
3位 診療に関する会議等(17.2%) 3位 レセプト以外の書類作成(38.3%)
4位 自身の医療水準の維持(16.5%) 4位 時間的拘束(28.5%)
5位 レセプト以外の資料作成(15.7%) 5位 医療機関との連携(23.4%)

■管理面

勤務医時代の方が負担だった業務(n-1984/複数回答) 開業後の方が負担になっている業務(n-1984/複数回答)
1位 経営に関する会議等(16.2%) 1位 スタッフの採用(65.1%)
2位 スタッフへの教育育成(14.5%) 2位 機器等のメンテナンス(48.5%)
3位 官公庁等への届出(6.3%) 3位 スタッフの教育・育成(48.3%)
4位 スタッフの処遇・評価(5.8%) 4位 スタッフの処遇・評価(46.8%)
5位 機器等のメンテナンス(4.0%) 5位 経理・会計(46.8%)

「診療面」比較

診療面では、勤務医時代に負担と感じていた業務の多くは「当直(44.5%)」、「身体的拘束(37.7%)」と、身体的負担の割合が多い結果が出ています。対して開業後の方が負担となっている業務は「レセプト作成・チェック(52.2%)」、「自身の医療水準の維持(49.5%)」となっています。
病院勤務医の場合、レセプト作成・チェックは医事課スタッフが担当することが多くみられます。しかし開業後は、院長自らレセプト作成・チェックを行わねばなりません。調査結果からは「事務作業が開業医の大きな負担」となっていることが見て取れます。
次いで開業後の方が負担となっているのは「自身の医療水準の維持(49.5%)」です。勤務医時代は設備面・症例数等の環境により医療水準の維持はそれほど負担になっていなかった一方、開業後は約半数の医師が医療水準の維持に負担を感じているということがわかります。

「管理面」比較

続いて管理面では、勤務医時代に負担と感じていたのは「経営に関する会議等(16.2%)」、「スタッフへの教育育成(14.5%)」となっております。しかしいずれも回答比率は20%未満で、多くの医師はそれほど負担感を感じていない様子が見て取れます。
一方開業後になって負担を感じた業務としては、「スタッフの採用(65.1%)」、「機器等のメンテナンス(48.5%)」、「スタッフの教育・育成(48.3%)」、「スタッフの処遇・評価(46.8%)」、「経理・会計(46.8%)」という結果が出ています。全体の7割近くの開業医がスタッフ採用業務を負担に感じ、伴い採用後の育成・教育・処遇・評価などの人事労務に関する事項で、約半数の開業医が負担に感じていることがわかります。
スタッフの処遇評価については、勤務医時代の負担項目でも4位ですが、開業医の負担感とは比較になりません。診療面・管理面いずれにおいても、勤務医と開業医では負担と感じる内容が異なることがお判りいただけると思います。

開業医の銀行借入について

次に開業医の銀行借入の状況についてみていきましょう。
先ほどのアンケート結果では、全体の50.7%は銀行借入が残っており、そのうち開業後5年以内のクリニックでは全体の85.8%において銀行借入が残っている状況です。開業医の銀行借入については第23回医療経済実態調査にデータが掲載されており、こちらのデータでは全国の診療所の長期借入金の平均金額は2,794万円となっており、3,000万円近くの残債を抱えるクリニックが開業医の平均的なモデルと言えそうです。

→参考資料:中央社会保険医療協議会(令和3年11月)【第23回医療経済実際調査 P310参照】

開業医の「収入」は勤務医の約1.8倍

続いて勤務医と開業医の収入面の違いです。中央社会保険医療協議会(令和3年11月)第23回医療経済実態調査では、一般病院勤務の医師平均年収は1,467万円、一方で診療所開業医の平均年収は2,699万円となっています。開業医の平均年収は勤務医の約1.8倍となっており、ケース・バイ・ケースではありますが、クリニック開業は年収アップへの道という一面もあることが見て取れます。

開業医は過重労働?ストレスは?

アンケートには「開業された現在、勤務医や研究者時代と比べて、過重労働やストレスはどの程度ですか」という質問も用意されており、その回答結果も見ていきましょう。
労働時間については「かなり過重」と「やや過重」を合わせると41.6%を占め、「同じくらい」17.5%を合わせると59.1%となり、勤務時代より勤務時間が軽減されたと感じている開業医は約4割に留まっています。

次に精神的ストレスについては「かなり強くなった」と「やや強くなった」を合わせるとその比率は54.4%にも上り、「同じくらい」17.8%を合わせると72.2%になり、勤務医時代の方が精神的ストレスを感じなかった開業医は3割未満という結果が出ています。また「院長先生ご自身の今後に対する不安感はどの程度ですか?」という質問に対する回答では、66.5%の開業医が「経営全般について不安がある」と回答しています。
これらデータから、開業医の身体的・精神的な負担がいかに大きいかお分かりいただけると思います。

開業医の達成感や満足度は?

診療についての達成感は「高い※かなり高い・やや高い(48.1%)」、業務全般についても「高い(53.3%)」という結果で、約半数の開業医が達成感を感じていることがわかります。一方達成感からの満足度向上はあるものの、自身の医療水準についての回答は「低い※かなり低い・やや低い(38.6%)」となっており、開業医の4割近くが満足していない様が伺えます。上で「勤務医時代と開業後の『負担』比較」でも触れましたが、医療水準の維持については、満足度を軸としても勤務医より開業医の方が課題と感じていることが見て取れます。

開業医のメリットとデメリット

開業医としての新スタートを検討するうえで、ここまでお伝えしてきた内容をまとめると、以下のようなメリット・デメリットがあります。

開業医のメリット 開業医のデメリット
自身の理想とする医療を追求 採用などの人事労務マネジメント
やりがいや達成感の確保 借入金の返済
年収が増える(平均1.8倍) 過重労働と精神的ストレスの増加

勤務医と開業医の違いまとめ

ここまでアンケート及び調査データをもとに勤務医と開業医を比較してきました。いかがでしたでしょうか?理想と現実のギャップに戸惑われた方もいらっしゃると思います。
多くの医師が当直や当直を除く長時間の時間的拘束を始めとする病院の過酷な就労環境に負担を感じ、自身のやりたい医療の実現を目指し、夢と希望に燃えて開業を目指す一方、開業後は人事労務や財務・経理などの経営負担が重くのしかかってくる現実が明らかになりました。とりわけ開業後の最大の課題はスタッフの採用です。いずれも勤務医時代には経験のない経営管理業務が大きな負担になっています。 また約半数の開業医は借入を行っており、開業後5年以内の開業医は85.8%が借入を行っています。また全国の開業医の長期借入金の平均値は2,794万円となっています。

勤務医時代と比較し、思いのほか身体的精神的負担は軽減されないものの、収入面においては勤務医時代の平均1.8倍になり、経営者としてクリニック経営の全責任を負う開業医という仕事に対して約半数以上の開業医が達成感ややりがいを感じています。

個人的には開業医が負っている責任を鑑みれば年収1.8倍は低すぎるくらいだと感じます。開業医は年収を追い求めるだけでなく、経営やマネジメントなど勤務医にはない責任にもやりがいを楽しめる資質が必要なのかもしれません。収入面や当直が無く勤務時間が短いなど、安易な理由だけで開業してしまうと開業後に思いがけない苦労をすることは明白です。こうした開業医に求められる診療以外の経営管理やマネジメントが苦手な方は、無理に開業医を目指すのではなく、勤務医としての道を極めるという選択も一つの選択肢かもしれません。

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