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連載コラム第5弾 開業医が廃業前にすべきこと ~医院継承の実際~

  • 医療継承コラム

当社仲介により埼玉県草加市の「柳島クリニック」を継承開業されました、吉川英志先生に寄稿いただきました連載コラム『クリニックを継承開業した経験から見えた医院継承とは?』より、第5弾「 開業医が廃業前にすべきこと~医院継承の実際~」をお届いたします。ぜひ最後までご覧ください。

医院第三者継承の利点

この度の東京五輪などのメイン会場となった国立競技場の設計に参画されるなど、現代日本を代表する建築家のおひとり隈研吾氏の個展が東京国立近代美術館で開かれています。氏は以前に丹下健三氏を第一世代とする戦後日本の建築史を、世界的建築家である磯崎新氏の著書に書評という形で記されておられ、その奥深さに感銘を受けました。その磯崎新氏の奥様であり、やはり世界的芸術家でおられる愛子さんと私が出会ったのは、自宅近くで在宅診療をしていた頃であります。
一連の作品テーマは「うつろひ」、バルセロナの五輪広場など世界各地のご自身の作品を集めた芸術作品集などを手渡しで頂戴しました。「うつろひ」とは、私なりに解釈させて頂きますと、鴨長明や平家物語の古典に通じる「無常」あるいは「衰え」のような意味があるのでしょうか。

最近になって医師の先生方の訃報が立て続けに届きました。この年になると同年ないしずいぶん若くして亡くなられる先生もいらして、医師会、同窓会、自宅近くの先生、科目も眼科、小児科、精神科など様々で、皆様ご親族が後継されたり、知人の後継者がいらしたようで幸い医院は継続されておられます。
その一方で、閉院・廃業のお知らせも時々情報として目にしますが、医師会理事会からの報告であったり、職員募集などを出しておりますと、職員さん直接あるいはまた人材紹介を通してのオファーなどから事前に、医院の閉院予定を知ることがあります。急な病に倒れるなど一寸先は分からないのが人生ですから、医師でも急病などで閉院というのはある意味不可避でありますが、ある程度の年齢に達しますと、体力・気力的にもそろそろ限界を感じ始め、生涯医師というのは理想ですが、医療の進歩、足腰や感覚器の衰え、将来の大きな病気のことなど考えるに、そろそろリタイアすべきかと思う時が訪れます。
実際リタイアを考える年齢として、70歳代前半後半を想定している開業医の先生方が多いようで、ほぼ半数の割合に昇るそうです。

それでは、医院はどうしましょう。患者さん、職員を如何しましょう。自身や家族も含め、少々不安になったりもします。選択肢は2つ、力尽きるところまでやって廃業するか、もしくは医院継承するかのいずれかです。先の職員募集の話になりますが、急な閉院での新規採用希望、ただ前の医院で長く勤務され、給与への要求が高くなり過ぎ採用に至らない方も少なからず経験があり、また、医院廃業に伴って、薬剤情報だけ持参され新規に受診される患者さんなどもおりまして、廃業の余波は職員、患者さん初め多くの皆さんへ負担をかけ、地域医療に至っては、無くてはならない社会資本であったことが痛感されます。更に、閉院・廃業には意外とコストが掛かります。特に、レントゲン機器の運搬、紙カルテやレントゲン写真の5年以上の保管場所の確保、機器・什器の処分、賃貸物件の原状回復(これは居抜き利用であればコストは低くて済みますが)などを考えますとざっと数百万でしょうか。

一方、医院継承ではこれらの不利が解消されると同時に、事業譲渡による価額を少なからず受け取ることが可能です。以上のような利点から、近年は事業の第三者継承を考える開業医の先生方が増えているようです。およそ60歳以上の医院長の70%に明確な後継者がおらず、全国的な数字にしますと実に2万5千件に相当し、特にその割合は東北、中国地方などで高い傾向があるそうです。さて、こういった先生方は、収入や病気など自身の先行き不安は当然ですが、前に述べました通り良いことずくめに思われます「第三者継承」に、如何なる不安を感じるのでしょう。
ずばり「実現できるかの可能性」の他、「信頼できる相談先・相談相手」「後継者のスキル」、加えて「譲渡金額」への心配が多いようです。要するに第三者継承が可能かどうかに対し半信半疑であり、あとは、後継者、譲渡・譲受相互を結ぶ仲介業者・アドバイザーといった「人」の問題と、「カネ」の問題に集約できるように思います。

医院継承専門の仲介業者・アドバイザーの重要性

ここで、第三者医院継承の「実現の可能性」ですが、既にコラム第1弾に書きました通り、決断時期、準備期間には要注意ですし、必要以上の「思い入れ」や「欲」に溺れなければ大いに可能性はあります。後は、譲渡する側と後継者との交渉をもって譲渡価格にお互いが合意することが基本的成り行きですが、そこにどうしても必要な存在が医院継承専門の仲介業者でありアドバイザーということになります。ここを仲介せず個人で後継者を探す場合、あるいは知人、銀行、不動産会社などを通した場合、内輪で完結できれば良いのですが、さもなければ継承は実現しません。
理由はコラム第1弾で述べました通りで、

①市場が狭く買い手情報の数が重要である点
②完全な機密情報の扱いである点
③幅広く深い専門知識を要する点
④交渉でお互い言いづらいことを代弁できる能力
⑤トラブル時の対応

などが要求されるからです。

個人での後継者探しは、特に機密情報が公になり、コラム第1弾で述べましたように公開オークションになりかねません。すなわち、職員や患者さん、地域社会に継承の事実が漏れた時点で第三者継承はご破算となります。そういった意味でも、第三者継承への漠然とした不安の第一に「信頼できる相談相手・相談先」がありました通り、医院継承専門の仲介業者でありアドバイザーが必要不可欠であります。

ここで仲介業者やアドバイザーについて言及しておきますが、医師の皆さんが認識している「人材紹介会社」とは一線を画すものであるとご理解ください。大多数の医師の皆さんが彼らに対して良いイメージを持っていません。医師やパラメディカルを募集したり、実際に医師で転職されたご経験のある先生方でさえそうだと思います。情報だけの対価にしては高額過ぎる仲介料(雇用側)、単なる人材転がし、などなど批判的意見には枚挙にいとまがありません。
原因は恐らく、医師一人のキャリア、人生のかかる転職という重大事に上辺だけの関りしか持てない、あるいは人一人を深く知ろうとしないまま仕事を斡旋する浅はかな態度、などがその理由なのでしょうか。ここで批判やその理由を追究しても仕方ありませんが、繰り返し確認しておきたいのは、医院継承専門の仲介業者でありアドバイザーは、彼らとは全く異なる世界の専門職であり、医院継承の中心的存在であるという点です。医院継承サイトでこういった言い方は憚られますが、あくまで医師の立場からですので誤解の無いようお願いします。
しかし、医院継承を扱う仲介業者を一括りに考えることは危険で、各社異なった職員・人材を用意しておりますし、システムや仲介料金体系もかなり差があるのが現実です。ネットで市場、つまりは需要や供給の範囲を広げて、最終的に責任ある業者のアドバイザーへ繋ぐというようなことは普通です。更に、ことばの独り歩きですが、商取引におけるブローカーや土地斡旋における地上げ屋など、相互を取り持つ真っ当な仕事でありながら、どこか悪いニュアンスで使われる言葉もあります。医院継承に関しましては基本、継承仲介業者・アドバイザーといった言葉で統一させて頂きます。これらを念頭におかれた上で、さあ医院継承相談の始まりです。

譲渡(売り手)側の相談

譲渡(売り手)側はまずどの仲介業者に相談をもちかけるか、ここは大きな運命の分かれ道です。
買い手側も、仲介業者への相談から開始ですが、売り手の情報が案件としてセールスされ、直接その案件(取り扱い業者)へ問い合わせという場合が多々あります。買い手側のアプローチは追って次々回以降に詳説します。

医院継承を扱う仲介業者を選ぶポイントは2点です。

①仲介手数料
②親身になってくれるパートナーであるか

①は解りやすいですが、②を言い替えますと業者がズバリ「人」を見ているか「カネ」を見ているかです。
ここでは、譲渡(売り手)側が譲渡の相談を開始して、仲介業者が案件として医院概要書を作成し、それをもとに譲受(買い手)候補者をリサーチし、実際の交渉へ至るまでの過程をおさらいしておきます。

相談後の継承実現の可能性ですが、当然すべてが対象とはなりえませんで、事業が継続していて、収益が出ていることが大前提となります。また、経営形態により、個人経営の場合と旧医療法人(出資持分あり)のいずれかに区分され、それぞれ営業権と不動産などの資産を加えた事業譲渡対象資産、あるいは医療法人出資持分の譲渡であり(法人資産はそのまま引き継がれます)、それらに見合った対価としての譲渡価額が算出されます。
医院継承に値すれば、今後の医院継承の具体化に先立って、秘密保持契約を締結しますが、先の機密情報の漏洩の防止に必須です。
続いて提携業務委託契約の締結となります。この契約の意味は、仲介手数料の確認と医院継承の仲介を1社のみにお願いし、決して他社、他ルートでのダブルブッキングは致しませんといった誓約(専任契約)ですが、手数料体系同様、各社で若干の相違があり(非専任契約など)注意が必要です。
ここまでで概ね売り手と仲介業者間の契約は整いましたが、仲介手数料および譲渡価額といった医院継承の「カネ」にまつわる所は、まとめて次回に詳説させて頂きますので、今回は売り手側の各種資料の提出と、譲渡案件としてのまとめ上げについて続けます。

譲渡(売り手)側の準備

資料は概ね、土地・建物・施設、設備・備品など資産、リース・債務、職員情報、金員の動きなどに大別され、賃貸借契約書・医院平面図、譲渡資産明細、リース契約書・借入金返済予定表、従業員名簿・職員給与台帳や給与明細、レセプト総括表・自費診療売上書類・確定申告書などの整理、提出で、そこに評価が加わり財務状況がまとめられます。経費科目によっては多少の修正が加えられることによって適正に評価され、修正された損益表が示されます。以上に加え、譲渡希望時期、希望条件(例えば従業員の継続雇用など)、希望譲渡価格、譲渡スキーム(事業譲渡(営業権+資産など)、出資持分譲渡)が加わり、案件化ないし商品化されます。

これら詳細は先の通り、決して公にされることなく、ネットなどでよく見かけます以下、○○案件、○○府、○○科、売上〇億円、利益〇〇〇万円、継承理由:後継者不在、といったような個別の医院が判別困難な形での情報として提供され、譲受候補者のリサーチへと続いていきます。

医院第三者継承のすゝめ

以上、医院第三者継承における「人」と「カネ」の部分、初回は「人」に焦点を当て、譲渡(売り手)側と医院継承仲介業者との関係と手続きの流れをおさらいしましたが、次回は医院継承の「カネ」の部分、次々回以降は譲受(買い手)側と仲介業者、更には3者間の交渉から譲渡契約成立に至る過程をおさらいしようと思います。
先日私も他社さんの自動シュミレーションソフトで自院の譲渡価格を計算してみました。パラメーターは4項目のみ、1日の来院患者数、標榜科目、所在都道府県、個人・法人の別であり、結果かなり幅の広い数字が出て参りましたが、当たらずしも遠からず感心しました。

このコラムをきっかけに、今後医院継承を具体的に考え、または新たに医院継承に関心を持たれた先生がおられましたら誠に幸いです。その際は是非、医院継承専門のメディカルプラスさんのアドバイザーに気軽に相談されては如何でしょう。

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