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本コラムでは、コロナ禍に対応する社会情勢、各医療機関のコロナ対応による弊害、今後のワクチン供給について、書かせていただきます。
コロナ禍における社会情勢、ワクチン供給の見通し
新型コロナウイルス感染症が日本に上陸して約1年が経過しました。ダイアモンドプリンセス号の出来事が報道されている頃、未知のウイルス感染症に私たちを含めて医療関係者は脅威を感じていたと思います。しかしながら当時はまだ感染拡大が中国に限定されていましたし、世界中にこれほどまで感染が拡大することは予想できなかったでしょう。国内でコロナ第1波が到来して若年者の重症者やECMO(体外式膜型人工肺)なども注目を浴びました。
その後、少し時間をあけて第2波が起き、現在は第3波のピークからは新規感染者数はだいぶ落ち着いてきました。しかしながら非常事態宣言解除や長い自粛疲れなどの結果、休日に外出する人も増え、お店で飲食するために待っている人で混雑している状況も見受けられます。常時、発熱者の対応に追われている医療者とは裏腹にワクチン接種が開始されたこともあって緩んでいることは間違いないでしょう。
さて、実際の新規感染者数はどのような推移なのでしょうか。厚労省のHPを見ると、2月下旬~3月上旬に底打ちしてゆっくり増加傾向のようです。さらに非常事態宣言も解除された影響が今後出てくるとますます感染者数は増加するかもしれません。従って、診療所でも気を引き締めて対応にあたる必要がありますね。
そうしたなか、埼玉県のとある市区町村にあるクリニックでは2月下旬より地区医師会を通じて4月からのワクチン接種開始に向けたアンケートや受け入れ態勢の構築におわれてきましたが、結局4月にワクチンの供給が行われるのは地域の中核市立病院の医療従事者のみという状況になったようで、医師会や行政を含めた情報や対応が二転三転しているといるというが実情のようです。
私の地域でも同様で、地域の新型コロナウイルス感染症を受け入れている中核病院の職員もまだワクチンを接種できておらず、4月以降であり、医師会へ確認すると、一般住民の方のワクチンは早くてもGW明けてからという状況になりそうです。日々ワクチンの供給などについてニュースが流れますが、日々報道は変化しているのでこれも確実とは言えないのが実情です。
ちなみに接種状況について心配されている方が多いのですが、厚労省のHPで毎日どのくらいの人にワクチンが接種されたのかを確認することができます。
新型コロナワクチンの接種実績|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
コロナ対応の弊害
昨年3月以降多くの医療機関ではコロナ禍による受診控えにより患者数が減少し、それに伴い売り上げも減少しています。また、受診控えによりがんや重大な病気の発見が遅くなってしまうことも度々あります。また、体調が悪くても受診するためにクリニックや病院に行くことで新型コロナウイルス感染症に患ってしまうのではないかと不安になり、結果的に状態が悪化してから救急搬送されるようなことも見られています。
さらに、発熱、咳、呼吸困難など新型コロナウイルス感染症を想起させるような症状があるだけで、様々な医療機関の受診を断られ、救急搬送においても以前問題になったようなたらい回しが起きてしまったということもありました。当初はコロナという未知のウイルスへの恐怖感から多くの医療機関が、発熱があり、新型コロナウイルス感染症を疑うような患者さんの診療に消極的でした。
しかしながら徐々に発熱外来を実施し、自施設でもPCRや抗原検査を用いて診断が行える病院やクリニックも出てきました。また、行政からの要請に応じて発熱外来を実施するクリニックも増えてきましたが、従業員が風評被害を恐れて発熱外来に反対するケースも多いようです。
実際に発熱外来を行っている病院やクリニックの職員のお子さんが通園している幼稚園や保育園から通園を拒否されたりなどの差別的行動も見られました。このような状況から発熱外来の実施に際しては従業員とのコンセンサスを取ることも課題になっています。
病院やクリニックの経営者としては、職員が安心して安全に勤務できることが最終的に職員のモチベーションを高め、医療の質を高めてくれることにつながるため悩ましい状況です。
しかしながら自施設でPCRや抗原検査を行えることは、職員の体調不良時などには早期に診断が可能となるということは一つのメリットになります。
ワクチンの接種開始および発熱外来がクリニック再建の一手となりうるか
早ければ4月以降、新型コロナウイルス感染症診療を行っている専門医療機関以外の病院やクリニックの医療従事者や一般の方もワクチン接種が始まる予定となっています。実際に各自治体では接種のシミュレーションを行い、密にならないように広い施設を確保して、接種に備えています。もちろん、医療従事者は自施設でワクチン接種を行うことが多いでしょう。
しかしながらワクチン接種に関しても従業員からの反対が出るケースも多いようです。実際にコロナ診療を行っている医療機関でも事前アンケートを取ると、接種できない持病などがないにも関わらず一定数のスタッフがワクチン接種をしたくないという希望を出しています。
その理由は風評を懸念する内容や打ったことの無い初めてのワクチンなので副反応が心配、また今後何か身体に影響が出るのではないかと心配で打ちたくないということなのです。これは一般の方と同様医療従事者であっても正しいワクチンの知識を啓蒙する必要があることを示しています。
また、インフルエンザワクチンの時もそうでしたが、なぜかワクチン接種は医師が接種してほしいという希望が時折あります。他のワクチンでも普段から看護師が接種していますし、筋肉注射という投与方法もこれまでも他の注射薬にもあるので特別なことはないのです。
こうした背景の中でクリニックの経営面は今後改善していくのでしょうか。ワクチン接種が普及することで、少しずつコロナ以前には戻れないものの日常的に体調が悪い、健診で異常を指摘されたときに、身近なクリニックへ受診できるようになるのではないでしょうか。
発熱外来の体制を整えることで、これまで風邪などで気軽に受診できていた方がかかりつけのクリニックへこれまで同様受診できるようになり、クリニックとしても経済面の回復が得られます。また、発熱外来を行うことで国から補助金の交付を受けることが可能になり、それも経営の一助になります。
「令和2年度インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業」について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
このような体制の中で、定期的な健診やワクチン接種のために受診することができ、生活習慣病やその他多くの病気も早期発見、治療が可能となります。クリニックも受診控えが解消することで、これまで来院したいと思っていた患者さんの受診により、経済面の回復も可能となるでしょう。さらにコロナ禍でより必要性を増したオンライン診療なども上手に取り入れながら、健全な経営にもつなげられると考えられます。
コロナ禍でもそうでなくても、加齢とともに様々な病気を経験していくものですから、以前のように気軽に受診できるような世の中になることを願うばかりです。
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