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クリニック廃院時に想定されるコストと手続きについて

  • 医療継承コラム

こんにちは。メディカルプラスです。弊社では、継承をご検討中のクリニックさまから後継者の探索をご依頼いただく過程で、廃院時のコスト感や手続きについてのご質問をいただくことがございます。また医院継承コラム内の下記記事のアクセス・閲覧が多いことから、関心の高さも伺えます。

クリニックの廃院にコストはどのくらいかかる?

そこで今回の記事では廃院時に想定されるコストだけでなく、その「手続き」に焦点を当て、さらに詳しく説明していきます。すでに開業されている医師の方々だけでなく、継承開業を検討されている医師の方々にも、お役立ていただけますと幸いです。

廃院にはコストがかかり煩雑な手続きが必要

令和3(2021)年度の厚生労働省医療施設調査によると、全国の医療施設は180,396施設あります。内訳は「一般診療所」104,292施設・「歯科診療所」 67,899施設で、そのうち1年間で廃院をしている施設数は「一般診療所」が7,612施設、「歯科診療所」が1,252施設となっています。合計すると1年間で8,864施設ものクリニックが廃院している現状がありますが、クリニックを廃院する際には、思った以上にコストがかかり、煩雑な手続きが必要となってきます。
跡継ぎ問題などで悩んだ末、廃院を選択する院長先生が多く見受けられますが、クリニックを廃院することにメリットは殆どありません。では、コストと手続きについて見ていきましょう。

廃院した場合のコストについて

廃院を選択した場合、様々な名目でコストが発生し、約1,000万円前後の負担があるといわれます。①.廃業に関する法的手続きなどの費用②.什器備品や薬剤など医療廃棄物の処分費用③.医療機器などの処分費用④.不動産や内装の取り壊し・原状回復費用⑤.従業員の退職金支払いや残債務の弁済費用などによる支出 が主要なコストになります。これら全てを院長先生ご自身の手で行うことは大変難しく、時間も労力も必要になります。税理士や社会保険労務士の手助けを必要とすることも多いでしょう。その場合には、別途手数料が発生することになります。

廃業に関する法的手続きについて

廃業に関する法的手続きはやるべきことが非常に多いため、失念しないよう留意が必要です。先述の通り、専門家の手を借りることも視野に入れた方が良いかと思います。ここでは、廃業に関して必要となる手続きのうち、主要なものをピックアップして紹介いたします。

管轄の保健所:診療所廃止届、エックス線廃止届(診療用エックス線装置は、診療所廃止届と同日に提出)
地方厚生局:保険医療機関廃止届
各都道府県:麻薬施用者業務廃止届
福祉事務所:生活保護法指定医療機関廃止届
医師会:退会届
医師国民健康保険組合:資格喪失届
税務署:廃業等届出書、消費税事業廃止届出書(消費税の納税事業者の場合)、給与支払事務所等の廃止届出書、所得税の青色申告の取りやめ届出書
都道府県税事務所:事業廃止届出書
年金事務所:健康保険・労働厚生年金保険適用事業所全喪届、被保険者資格喪失届
労働基準監督署:労働保険概算・確定保険料申告書等
ハローワーク:雇用保険適用保険者廃止届、雇用保険被保険者資格喪失届

その他の手続やコスト

法的手続きの他にも、必要な手続きやコストがあります。

什器備品や薬剤など医療廃棄物の処分費用:医療廃棄物の専門業者へ支払う処分費用が生じます。
医療機器などの処分費用:老朽化した医療機器は廃棄が必要です。
不動産賃貸の退去費用:解約金等が生じるケースもありますので確認が必要です。
不動産の取り壊し・内装の原状回復費用:戸建て賃貸は更地、テナント賃貸はスケルトンにする必要が生じます。土地の形状や階層によって解体工事費用が異なるため注意が必要です。
残債務の弁済費用:リース代の残額支払や借入金の返済などが必要です。
従業員の退職金支払い:退職金の定めがあれば、規約に従い支払わなければなりません。

廃院しても続く保管義務

特定の情報や装置には廃院後も一定期間、保管の義務が発生します。

カルテの保管義務:5年間(医師法第24条
エックス線装置等の測定結果記録、放射線障害が発生する恐れのある場所の測定結果記録:5年間(医療法施行規則第30条の21,22
レントゲンフィルム:3年間(撮影した疾患の診療行為終了後から)(保険医療機関及び保険医療養担当規則第9条
向精神薬の廃棄:2年間(第1種向精神薬、第2種向精神薬の廃棄に限る) (病院・診療所における向精神薬取扱いの手引

【出典】厚生労働省より
*医師法
*医療法施行規則
*保険医療機関及び保険医療養担当規則
*病院・診療所における向精神薬取扱いの手引

廃院する場合には“人的対応”も必要

直接的なコストとは異なりますが、廃院をする場合には患者様と従業員等に対する告知や配慮も必要不可欠です。他院へ患者様を引き継ぐには約2か月~3ヶ月を見ておくことが必要となります。また、患者さんからの未収入金等があれば、回収業務を行わなければなりません。従業員も同様に職を失う事となりますので、廃院する約2か月~3ヶ月前には従業員に告知が必要となります。
廃院(閉院)による従業員の解雇は、雇用主都合による解雇となるため、整理解雇の4要件(①.人員整理の必要性②.解雇回避努力義務の履行③.被解雇者選定の合理性④.解雇手続きの妥当性)のうち「④.解雇手続きの妥当性」が重要なポイントとなります。従業員に対して解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得してもらうために説明を行う必要があります。余計なトラブルを起こさないためにも雇用主として十分な説明と誠実な対応をし、十分な心配りをすることが求められます。

廃院ではなく「第三者医院継承」を選択肢に

ここまでお伝えしてきました通り、廃院には多額のコストがかかると同時に、煩雑な手続きや各方面への配慮を十分に行う必要があります。近年では、こうした廃院のコスト面をデメリットと捉え、クリニックM&Aによる事業譲渡を行うケースが増えてきました。第三者へ医院継承した場合には「譲渡収入」が入りますので、コストという点で見れば廃院とは正反対のベクトルを向いていることになります。法的手続きは生じますが、近年では医院継承のニーズが高まるなか、医院継承を仲介・サポートするサービスが増えてきています。クリニックM&Aの件数も増加傾向にありますので、開業をお考えの先生は「最終的にクリニックをどうして行きたいか」を考えながら「第三者への医院継承」を選択肢に入れて経営をしていただき、また廃院をお考えの先生もクリニックM&Aによる「第三者への医院継承」を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。院長先生が長年にわたり大切に運営をされてこられたクリニックを、院長ご自身が納得できる後継者に託すためには、ぜひ早めの準備と検討をおすすめいたします。

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