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クリニックM&Aに特化した仲介支援を行うメディカルプラスです。今回のコラムでは、クリニックM&Aの市場規模の現状と、その増加の背景について、最新のデータとともに詳しく解説します。後継者不足や経営環境の変化に直面しているクリニックの皆様にとって、M&Aは重要な選択肢といえることがご理解いただけるかと思います。ぜひご一読いただけますと幸いです。
M&Aという手段への理解度
近年クリニックM&Aが増加しつつありますが、それはまず時代のニーズに沿っているのが理由といえます。M&Aが増加した社会背景として2000年代後半には、日本企業が国内外での成長を求め、海外企業の買収に積極的になりました。2010年代に入ると、アベノミクスの経済政策と日銀の金融緩和政策による円安が進行し、日本企業が海外でのM&Aを行いやすい環境が整ったことにより、日本企業は北米やヨーロッパを中心に積極的な買収を行うようになりました。一方で国内市場においても、少子高齢化に伴う国内需要の縮小が懸念される中、企業は生き残りをかけた再編を進めるため、業界再編を伴うM&Aが活発化しました。
このような背景により経済産業省は、日本の産業競争力強化や経済成長を目的として様々なM&A支援策を展開しており、2022年11月に「公正な買収の在り方に関する研究会」を立ち上げ、2023年8月に経済産業省より発表された「企業買収における行動指針」においては、「敵対的買収」という用語から「同意なき買収」と変更するなど、よりニュートラルで客観的な表現を用いM&Aに関する議論をより建設的に進め、我が国におけるM&Aを健全な形で更に発展させていくことを示しています。
上記の社会動向から、今後もますますクリニックM&Aの市場規模は拡大し続けるでしょう。しかし一方で後継者が見つからないなどの理由から、不本意な廃業に至るケースも多々見られます。弊社でも多くのクリニック関係者とお話する機会がありますが、「いつの間にか昔知り合いだった先生が廃業していた」というエピソードを聞く事は少なくありません。地域の頼れるクリニックが廃業するというのは、多角度から非常に残念な状況だと言えるでしょう。
実際、医療機関(病院・診療所・歯科医院)経営事業者の休廃業・解散が急増しており、2023年度(2023年4月~2024年3月)は、倒産件数の12.9倍となる709件の休廃業・解散が確認され、過去最多を更新し10年前と比較して2.3倍に増えてしまったという結果となりました。
*参考:医療機関の 「休廃業・解散」 動向調査 (2023年度)
そもそもM&A自体に対する理解が希薄だと、「クリニックM&A」という選択肢が思い浮かばない可能性があります。市場規模としてM&Aが広がりを見せている中で理解を深められれば、クリニックの将来への選択肢を広げることができます。そこで本記事では、まず前提となるM&Aについてお伝えし、それからクリニックM&Aについてご紹介する形で展開してまいります。
M&Aと市場規模について
M&Aとは、「Mergers(合併)& Acquisitions(買収)」の略語です。もともとは経営に関する用語で専門的な雰囲気もほのかに漂い、聞きなれた単語とは言えないものでした。しかし近年では経済産業省より「企業買収における行動指針」が発表される等、「M&A」という用語は我々にとって非常に身近なものとなっているといえるでしょう。
実際、日本におけるM&Aは2023年に4,015件行われ、2021年から3年連続で4,000件を超える実施件数となりました(日本におけるM&Aの市場規模が拡大したことから、メディアで取り上げられ頻繁に耳にする機会も増加し、用語が広く一般に知られるようになってきたといえるでしょう。2000年に1,600件代だったほどに増加していることを見ても、いかにM&Aが増加傾向にあるかお判りいただけると思います。
なぜM&Aが年々増加しているのか
それではなぜ、M&Aが年々増加傾向にあるのでしょうか。
M&Aの増加は、特に中小企業で顕著にみられ、その要因の一つとして経営者の高齢化が上げられます。2025年までに、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の1/3)が後継者未定とされています。現状を放置すると、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性が示唆されていることから、第三者承継のニーズが顕在化する経営者は今後一気に増大する可能性が見込まれているのです。
*出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者における M&Aの現状と課題
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/hikitugigl/2019/191107hikitugigl03_1.pdf
廃業を選択すると多額のコストがかかる上、培ってきた技術も失われるほか、多くの従業員が職を失うことになりかねません。どんな時代であっても経営者にとって、できるだけ廃業という選択肢は避けたいものなのです。このような廃業にかかる多くの問題を解決する上で、自社の技術や組織を必要としてくれる他社に売る、というM&Aは大変有効な手段として認知されてきています。
また一方でグローバル経済が進行する中、内需成長が限界を迎えているほか、少子化が進んでいます。労働力不足の問題が表出していると並行し、新技術(IoTやAIなど)の台頭とそれへの対応など、経営環境はより厳しさを増しています。このような逆風が吹く中、事業規模や事業領域を拡大し、売上高を向上させたいと意気込んでも、自社努力だけでは理想的な経営成長曲線を描けないことが多々あります。この様な場合、自社を売りたいと考えている企業の「人・技術・歴史」を買う、というM&Aが有効な打開策になるのです。
このようにM&Aのニーズが増加することに比例し、仲介・FAを務めるM&A専門業者等のプレイヤーが増加しています。M&A登録支援機関登録制度ホームページの登録支援機関データベース上では、2010年代まで個人・法人での支援事業者数は1016件でしたが、2020年代では2429件と2020年代で支援事業者数が大きく増加したことがご理解いただけることでしょう。
*参照元:M&A支援機関登録制度 https://ma-shienkikan.go.jp/
事業者数が増えることで依頼者側の選択の幅が拡がった一方で、一部では問題のあるケースや事業者とのトラブルが発生しているとの声もあるのが実情です。依頼者側においても業務を委託する業者のサービス内容を理解し、信頼できる支援業者なのかを見極めることが重要であるといえます。
クリニックM&Aも年々増加傾向
ここまで一般企業(特に中小企業)のM&Aに関する市場規模・増加傾向について解説してきました。ここからは「クリニックのM&A」に目線を移していきましょう。
現在、開業医は大変に厳しい状況に置かれています。診療医療報酬の改訂に伴う高齢者の医者離れ、人手不足による営業業務や労務管理などの業務圧迫、子や親族の後継者不在問題などが代表的な問題点ですが、これらの諸問題は、先述の一般企業との共通項を見いだせるのではないでしょうか。すなわち、厳しい経営環境と医師全体の経営者高齢化・後継者不在問題、それに伴う廃業の選択という部分です。厚生労働省提供の資料からも、クリニックに従事する医師(開設者・代表者含む)の平均年齢は近年上昇傾向にあることが見て取れます。
*出典:令和4年医師統計結果の概要(厚生労働省)
ひと昔前までは、「廃業」を選ぶ開業医も多くいらっしゃいました。上述した医療機関の「休廃業・解散」動向調査(2023年度)では、診療所の休廃業・解散数は580件に対し倒産した件数は28件であり、過去最多となっております。ところが廃業には多額のコストがかかり、従業員が職を失ってしまうという問題があります。これらの問題点を解決できる方法があるのならばそちらを模索したいというのが、廃業を考える開業医の本音でしょう。
そこで、廃業の問題点をクリアにする「クリニックM&A」が昨今脚光を浴びているのです。既に様々な要因により、休廃業・解散のクリニックが増加していることから、将来的にさらに第三者継承のニーズが増加することが想定されます。
新規開業希望の医師が、後継者不在で苦しむクリニックを買収することで、譲受側は開業コストの減少を、譲渡側は譲渡対価の受領を期待できるようになります。一般企業において、諸問題を解決する手段として爆発的な増加を見せたM&Aですが、クリニックの現場においても、同じように諸問題を解決する有効な手段となりえますので、後継者問題を抱えながらも現役で頑張る医師の皆様はぜひ一度ご相談ください。
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弊社は地域医療の継続と発展への貢献を理念に、クリニックに特化したM&A支援を行っており、今後も地域医療を途絶えさせないための啓発に力を注いでまいります。ご相談は無料です。クリニックを譲渡したい方、逆に譲り受けたい方、M&Aを検討ているが何から始めたらよいかわからない方、第三者継承とはどういうものか理解を深めたい方、お気軽にこちらより【✉お問い合わせ】お問い合わせください。
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