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レセプトデータから読み解くクリニックの経営改善ポイント

  • 医療継承コラム

こんにちは。メディカルプラスです。
本日は「レセプトデータから読み解くクリニックの経営改善ポイント」をテーマにお伝えいたします。クリニックの運営において、レセプトは単なる請求書ではなく、日々の診療内容や患者の動向、さらには経営の健全性を映し出す「クリニックの健康診断書」とも言える重要なツールです。本記事では、レセプトをもとにどのように現状を把握し、改善へとつなげていくかについて展開してまいります。クリニックM&Aをご検討中の方の参考になりましたら幸いです。

レセプトの基本構造と種類:クリニック経営における役割とは

まず大枠として、レセプトの種類について確認していきましょう。レセプトは医療機関から発行される「医科入院レセプト」および「医科入院外レセプト」と、調剤薬局から発行される「調剤レセプト」、歯科から発行される「歯科レセプト」、急性期病院で用いる「DPC(Diagnosis Procedure Combination)レセプト」などがあります。

先生方もご存じのとおり、レセプトは医療機関が保険者(健康保険組合など)に対して、患者さんに対して行った医療行為の内容と費用を詳細に記載した明細書となっています。この明細書に基づき、保険者から医療機関へ診療報酬が支払われることになります。そこには「患者に対してどのような診断(傷病)、検査がなされ、治療が行われ、薬剤がどのくらい処方されたか」が記載されており、レセプトは一人一人の患者ごと、受診する医療機関ごと、請求単位の1か月ごと、レセプトの種類ごとに発行されます(そのため一人の患者に対し1枚とは限らず、複数発行されている場合があります)。

ではレセプトの役割についても、あらためて整理をいたします。レセプトの役割は①医療機関、②保険者、③患者と、それぞれの立場によって内容が異なります。

➀.医療機関にとって

●診療報酬の請求:
レセプトは、医療機関が保険者に対して診療報酬を請求するための最も重要な書類です。
●経営管理:
レセプトを作成・提出する過程で、医療機関は自らの診療内容や費用を把握し、経営管理に役立てることができます。
●医療の質の向上:
レセプトの作成は、医療行為の正確性や適切性を確認する機会となり、医療の質の向上に繋がります。

➁.保険者にとって

●診療報酬の支払いの根拠:
保険者は、レセプトの内容に基づいて、医療機関に対して診療報酬を支払います。
●医療費の適正化:
レセプトの内容を審査することで、医療費の適正化を図ることができます。
●医療に関する統計データの収集:
レセプトデータは、医療に関する様々な統計データの収集に利用されます。

➂.患者にとって

●医療費の明細:
患者さんは、レセプトの内容を見ることで、自分が受けた医療行為と、その費用を詳細に確認することができます。
●医療費の払い戻し:
誤った請求などが行われていた場合、レセプトの内容に基づいて、払い戻しを受けることができます。

このように、それぞれのレセプトの役割とは、最終的に医療制度の円滑な運営に不可欠なものです。上記➀にありましたように、クリニックにおけるレセプトは、現在の診療内容や費用などの現状を客観的に把握することができ、経営管理に役立てることができます。

*参考:厚生労働省「レセプトとは」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/04/dl/s0414-5i.pdf

レセプトに記載されている項目とその意味

レセプトを経営管理に活用するためには、まずその中にどのような項目が含まれているかを理解することが重要です。ここでは、改めてレセプトの項目を確認し、それが経営管理の視点でどのように役立つかをイメージしながら振り返ってみましょう。ここでは「医科レセプト」に記載されている具体的な項目をみていきます。

年月 診療年月
患者属性 患者ID、性別、年齢
傷病情報 標準病名、ICD10分類、疑い病名、診療開始日、診療実日数
薬剤情報 医薬品名、ブランド名、成分名、一般名、ATC分類、投与量、投与日数、処方回数、後発品、剤型、診療区分
診療行為 検査項目・回数、処置・手術内容
材料情報 医療材料名・数量

さらに、「診療区分」については、次のように詳細項目があります。

初診
再診
医学管理(外来栄養食事指導やニコチン依存症管理、生活習慣病指導管理などを行った場合に記載される)
在宅(在宅訪問看護・指導や在宅酸素療法指導管理、自己注射指導管理などを行った場合に記載される)
投薬(内服、頓服、外用、調剤、処方、麻毒、調基)
注射(皮下筋肉内、静脈内、その他)
処置
手術
麻酔
検査
画像診断
その他(精神科訪問看護・指導や放射線治療管理などを行った場合に記載される〕など

このように多くの項目に分かれておりますが、次項から「患者属性」「診療行為」の視点から解説いたします。

レセプトを活用した経営改善と対策:増患・増収を目指す

ここからはクリニックの現状をどのように分析し、経営改善に活かすかを見ていきましょう。

患者種別・診療報酬点数の確認

毎月の締めのタイミングで、月次収入を前年比などで確認されているかと思います。顧問税理士が月ごとに収入実績をまとめていることもあるでしょう。しかし、その収入を構成する「患者数」の増減については、どのように把握されていますでしょうか。

収入にどのような影響を与えているかを確認することは、非常に参考になります。例えば、社保本人の患者なのか、社保家族の患者なのか、国保の患者なのか、高齢者なのかなど、どの層の患者が多いかを確認し、各患者層の月別の増減を把握することは、クリニックの状態を分析する上で非常に重要です。さらに、各層の診療報酬の平均点がどのように変動しているか、患者一人あたりの平均点数がどのように推移しているかも併せて確認すると良いでしょう。
こうした分析を行うことで、例えば患者数が減少していても、平均点数が増加している場合、収入の減少がそれほど大きくないことを確認できるなど、クリニックの状況をより客観的に把握することができます。

改善と対策(増患・増収について)

一般的に、開業当初は社保家族の患者がまず受診する傾向があります。その後、その家族がクリニックの評判を聞き、次に社保本人が受診するという流れが続きます。そしてさらにその後、同居しているご両親など、国保の患者が受診するという順番で、患者が増えていくことがよくあります。

つまり、社保患者の割合が増加している場合、それはクリニックが増患のフェーズにあると考えられます。逆に、社保患者の割合が減少している場合、他のクリニックに患者が流れている可能性があると仮説を立てることができます。このように、具体的な数字を元に仮説を立て、それに基づいてクリニックの集患対策を講じることが重要です。

増収の観点から「検査」について触れてみたいと思います。例えば社保患者は昨今の健康意識の向上を背景に、個々の健康管理の意識や関心も高くなっていると考えられますので、血液検査などを通して定期的にフォローすることで平均点数の増減に関わってきます。あくまで一例ですが、国保の常連患者はあまり検査とかを好まれる方は少ないかも知れませんが、年に2回などと回数を決めて、平均的に平均点数を上げるような取り組みもあるかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はクリニックの現状を把握し、改善点を検討するための視点として、レセプトデータの活用についてご紹介いたしました。
月末月初のレセプト業務は診療後の貴重な時間を割いて行う大変な作業ですが、クリニックの経営状況を見直す絶好の機会でもあります。2024年6月から診療報酬が改定され、「特定疾患療養管理料」の算定対象から高血圧症・糖尿病・脂質異常症が除外され、これらの疾患は「生活習慣病管理料Ⅱ」に移行しました。このような背景からも、診療報酬点数に注目したクリニック経営の重要性がさらに増しています。レセプト分析を、先生のクリニックの分析や改善の一歩としてぜひお役だてください。

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