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医院継承(承継)、クリニック売買、医療法人M&Aのメディカルプラスです。
本日はクリニック継承の際の「クロージング」についてお伝えいたします。アドバイザーから継承についての説明を受けた際に、「クロージング」という言葉を聞き、疑問に思ったことのある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、クリニック継承時のクロージングについて、具体的かつ簡単にご説明して参ります。本記事がクリニックM&Aを検討されている方にお役に立てましたら幸いです。
クリニック継承におけるクロージングとは?
クリニック継承におけるクロージングとは、「第三者継承の最終段階であり、譲渡契約書(最終契約書)に基づいて、売主側は譲渡対象物および経営権を引渡し、買主側は譲渡対価の支払いを実行・完了する最終手続きのこと」を指します。
クリニック継承においては、最終契約締結からクロージング日前後に掛けて、法令や契約に従いさまざまな手続きを遂行する必要がある上に、行政上の手続きも必要になるケースが多いことが特徴です。どのような手続きが必要になるかは、医療法人譲渡や事業譲渡などのM&Aスキームによって異なるため、クロージングの工程については、売主・買主双方ともにスケジュール面も含めて条件交渉の段階で十分に検討・確認し、最終契約に反映することが必要です。
では実際にスキームごとのクロージング工程をご説明いたします。
医療法人のクロージングの場合
まず医療法人M&Aの場合、以下のようなクロージング前提となる必要書類および重要物品を事前に用意する必要があります。確認対象となる書類および物品は以下の通りです。
■売主側
● 臨時社員総会議事録(出資持分譲渡の承認、旧社員退社・新社員入社の承認)
● 役員辞任届
● 旧社員(役員)の印鑑証明書
● 医療法人の登記簿謄本
● 医療法人の実印
● 医療法人の銀行印
● 医療法人の印鑑証明および印鑑カード
● 医療法人の銀行通帳
● 医療法人のキャッシュカード、クレジットカード、鍵、セキュリティカード、ネットバンキング情報等の重要物品
■買主側
● 実印
● 印鑑証明
● 受領証
※なお、同日に役員変更登記の手続きを行う場合は以下の書類も用意する必要があります。
● 臨時理事会の議事録(新理事長選任に関する承認)
● 役員就任承諾書
● 理事長就任承諾書
● 新役員の印鑑証明書
● 新役員履歴書
● 医療法人の定款の写し(原本証明)
● 新理事長の医師免許証の写し
■クロージング実行に伴って売主側から買主側に引き渡す書類
● 法人設立書類一式
● 定款変更認可申請
● 各種規程(就業規則・退職金規程など)
● リース品契約書
● 議事録(過去のものすべて)
● 決算報告書(現存するもの)
● 総勘定元帳(現存するもの)
● 賃貸借契約書(テナント・社宅)
● 医師契約書・履歴書
● 現スタッフ契約書・履歴書
● 防火管理(防火管理関係書類)
● 契約書(金融機関やファイナンスとの金消契約・人材紹介業・産業廃棄物などの事業者)
■その他
● 最終譲渡契約書(出資持分譲渡契約書や基金譲渡契約書など)
● 時価純資産計算明細書
● 財産目録
● 新旧社員役員名簿
クロージングは銀行で行うことが多く、実行のために上記書類および重要物品に不備がないことを確認した上で、売主から買主へ書類および重要物品の引渡しを行います。それと同時に、買主からは売主に譲渡対価の支払決済を行い、着金確認と受領書の発行をもって無事にクロージング完了となります。
事業譲渡のクロージングの場合
医療法人のM&Aと事業譲渡ではクロージング手続きおよび流れが異なります。
個人クリニックの事業承継の場合、同日に全ての手続きを行うことはできません。
医療法人M&Aの場合、法人名義の債権及び負債(リース負債含む)、雇用契約や賃貸借契約などは、一般的には代表者の変更手続きのみで、そのまま引き継がれます。
一方、個人クリニックの場合は債権や負債、雇用契約、賃貸借契約などは売主個人名義であるため、原則的に引き継がれません。新たに契約を締結するか、あるいは契約名義の変更手続きなどをおこなう必要があります。また、保健所への開設届、厚生局への保険指定申請届出(要遡及請求)、公費など関係行政庁への届出、診療報酬支払基金なども、売主個人に与えられた許可であるため、その許可を買主にそのまま引き継ぐことは出来ず、買主は新たに各関係省庁への手続きが必要になります。
では事業譲渡のクロージングは具体的にどのような流れになるのでしょうか。
まず、最終契約で定めた事業譲渡日に売主から買主へ重要物品の引渡し(この場合の重要物品とは、クリニックの鍵やセキュリティ関係物、レジ機などが当たります。)を行い、それと同時に、買主からは売主に譲渡対価の支払決済を銀行振込で行い、着金確認と受領書の発行を実行することは医療法人のM&Aと大きな違いはありません。
しかし、前述した通り、クリニックの開設許可自体は譲渡できないため、行政上は売主のクリニックについては廃止をし、買主のもとで同じ場所に新たに診療所を開設するという扱いになります。そのため、最終契約書で定めた事業譲渡日から10日以内に行政に対して、売主はクリニックの廃止、買主はクリニック開設の届出をする必要があります。保険診療を行う場合には、厚生局に対して保険医療機関指定申請も行います。
また、買主が医療法人の場合は、開設する診療所(分院)が増えることになるため、買主側医療法人において定款変更が必要です。
定款変更には、社員総会決議と都道府県知事による認可が求められます。定款変更の認可が下りるまでには、通常1~3か月程度かかるため、定款変更認可申請は最終契約の締結後速やかに行う必要があります。なお、この期間は届出する都道府県によって大きく異なりますので、可能であれば最終契約前の基本合意期間などで予め都道府県に期間や必要書類の確認等の事前相談をしておくと良いでしょう。
クロージング実行のためには実行条件を満たしていることも必須
ここまでクロージング実行についてスキームごとにご説明して参りましたが、最終契約書で定められたクロージングを実行するためには、同じく最終契約書で定められた「クロージング実行条件」をクロージング実行日までに満たしていることも必要であり、クロージング実行日のためにいくら準備をしたとしても、実行条件を満たしていない場合、スケジュール通りにクロージングが実行されない可能性があるので要注意です。
この「クロージング実行条件」とはケースバイケースのため、売主・買主によってさまざま異なります。一般的に多い条件としては、“売主から買主への引継ぎ協力”や、“従業員の処遇対応”などが挙げられます。これらは最終契約書の作成段階で協議が必要になりますので、売主側・買主側ともに予め検討しておく必要があるものとご認識いただければと思います。
クロージングは売主・買主双方にとって新たなスタート
クリック継承におけるクロージングはM&Aプロセス上、最終最後の山場であり、決して気を抜いてはならない重要な局面であると考えられます。
なぜならば、売主側であれば自身がこれまで我が子のように大切にしてきたクリニックを譲渡して新たな人生のスタートを切ることとなり、買主側であれば売主の想いとともにクリニックを引継いで経営者としての人生を新たにスタートさせることとなるからです。
そのため、売主・買主双方ともに最終契約の時点からクロージングの実際の流れや手続きは入念に検討・確認・準備をし、新たな人生のより良いスタートを迎えていただけたらと思います。
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