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連載コラム第2弾 《医院運営の三本柱》#2 保健部門①

  • 医療継承コラム

本日は当社の仲介により埼玉県草加市にある「柳島クリニック」を継承開業された、吉川英志先生に寄稿いただきました連載コラム『クリニックを継承開業した経験から見えた医院継承とは?』をお届いたします。

前回に引き続き《医院運営の三本柱》の保健部門➀をご案内いたします。

実際に継承開業された吉川先生ご自身が感じられた重要なポイントを語っていただいております。これから医院継承をご検討される先生方にとってご参考になる内容となっておりますので、是非最後までご覧ください。

「保健」に関する注意点I

それでは早速本論へ進めて参りましょう。

ポイント① 賃貸契約・設置機器

賃貸契約と設置機器・リース契約

病医院の開設には無論、医師免許、一般には保険医の登録が必要ですし、開設者、管理者、標榜科目、診療時間、従業者定員、病床や分娩に関わる状況などを開設届として管轄保健所に届け出る義務があります。その際、病医院の不動産に関わる賃貸契約書が必要です。建物の賃貸契約が成立せず、医院継承が成立しなかったという事例を耳目にしましたが、そこでは綿密な準備、挨拶や話し合いなど、十分な注意を払う必要があります。継承、開業をお考えの際は初めから是非医院継承専門のメディカルプラスさんを通じてご相談頂くことをお勧めします。

新規の土地では、遺跡発掘、慰霊碑や祠の移転、道路工事など思い掛けない事もあり得ます。オーナー側の問題ではありますが、工期の遅れなど影響は必至ですので注意が必要です。更に土地・建物、内装、X線設備について、細かな配置位置の図面、またX線機器の場合、診療用エックス線装置設置届という、機器性能の非常に細かな内容と、放射線漏洩線量測定報告書といって、それぞれの場所にX線がどれだけ漏れているかを実際測定した報告書を提出しなければなりません。ただし、極端に古い施設・設備の継承でなければ、まず問題はありませんし、メディカルプラスさんにお手伝いして頂けます。

次に、土地、建物の構造や資材、機器ですが、継承の場合、保健所が足を運んで土地、建物をチェックすることは実際ほとんどありません。現行では、流しの設置位置、個人情報の洩れに対する構造上の問題、床資材は血液などの滴下に対応しているかといった内容で、継承ではまず問題ありませんが、継承後の内装の変更時などには注意が必要です。新型コロナ感染症の流行時期には、部屋の改装ができるような余裕のある間取りは非常に有利ですし、駐車場も広ければ色々と利用価値があります。
あと、薬局が極端に近い場合などは規制がありましたが、数年前から薬局と病医院の間をフェンスで区切っての、一度公道へ出た上での行き来の必要が無くなり、門前薬局改め実質的には門内薬局(院内処方を意味するものではありません)も可となりましたが、一方で門前薬局はかかりつけ薬局と名称を変え、地域に開かれた薬局へ変貌しており、医療機関からの特定保険薬局への誘導の禁止(保健医療機関及び保健医療療養担当規則2条の5)の規定は未だに残っており、一応注意が必要です。

機器を継承する場合の一般的な注意点として、診療の中心をなすような機器がリースの状態でリース契約が残っている場合がありますが、機器のリース契約は多くの場合引き継げないと思った方が良いでしょう。勿論リースしている会社次第ですが、買取も不可であることもあり、最悪引き継げないこともありますので、早い時期に確認しておくのが良いでしょう。

施設基準と定期の届け出

開設届が受理されますといよいよ実際の診療が始まります。その後、定期的にチェックが入るものに施設基準があります。
医院継承の場合、小児科外来診療料(小児包括いわゆる「まるめ」)、ニコチン依存症管理料、在宅療養支援診療所、院内トリアージ実施料、オンライン診療料(後2者は現在まで特別な取り扱いになっております)など多くは書類上の問題ですが、各科、診療所と病院ではかなり様相が異なり、実際の施設・設備、人員が関わる場合(例えばコロナ禍でも電話による初診は不可、初診オンライン診療が必要となりました。開業前の病医院基準の感覚で禁煙外来をやりましたが、継承時の施設基準に無くすべて査定されましたなど)これらの再確認が必要です。

他にも麻薬、酸素の購入・保管・取り扱い管理、医師届出票・看護従事者届、産業(医療)廃棄物管理票(都道府県知事)、計量法第23条の規定(はかり類の精度チェック)など定期的に書類の提出が求められます。更に、毎日の診療にかかせない電子カルテに関しては、細かな注意が必要です。まず、個人情報保護の観点から、機器盗難防止対策として鍵のかかる部屋への設置と部屋の施錠、パソコン自体の盗難(持ち出し)防止対策、内容のバックアップ、アクセスの制限(その場合のIDやパスワードの付与)、データ管理(追記、書換、削除の可不可と更新履歴、記録の確定)、以上それぞれへの防火対策、その他事細かく電子カルテを中心とする電子媒体のデータ保存に関する運用、管理規定を策定しなければなりません。

設備投資と物品管理

次に設備投資、物品管理に関して少々述べますと、継承の場合最初の設備投資は考えなくてよいと思います。
まずは従前のやり方で、むしろ患者さんをしっかり引き継ぐことが重要です。カルテに関しては、紙カルテを継承する機会も多いと思いますが、継承のタイミングで電子化するのは非常に有効です。レントゲンフィルムのCR化、心電図のデジタル化なども時代の流れから、また保管の観点から、電子カルテ同様、初期の設備投資に値する例外的なものと考えます。

薬剤の準備は継承開業後何を行うかで異なりますが、こちらも従前通りをしばらく継続するのが良いかと思います。長年ビタミン剤の注射を行っていた患者さんが継続で来院される場合など、従来保険診療がなされていた場合がありますが、継承開業を機に問題ありと指摘される場合がありますので、自費診療への切り替えなど悩ましい問題に直面します。

病院からの逆紹介は有難いものですが、一時的に特殊な薬剤の点滴や注射のお願いが来ることがあります。購入時の最小単位が大きいものはその期間終了とともにデッドストックになることが多く、甚だ迷惑なことがあります。
麻薬薬剤は1本の違いたりとも許してくれませんし継承する側が責任を問われます。酸素購入などは麻薬同様、後に書類提出が義務付けられています。小児ワクチンは予約制か否かの選択自体が難しい判断となりますが、ストック数の見極めが重要です。大量に保管していたものが、災害、停電などで使えなくなり、甚大な被害を被った話を卸業者さんから耳にしたこともあります(保険加入という対策があります)。

その一方で、ワクチンの供給制限が頻発していますが、これには裏事情を含め常に敏感に情報を察知・対応すべきで、供給制限前に大量発注し大きな利益に繋がったこと度々です。インフルエンザワクチンも、現場への供給は世間へのアナウンスと全く異なり、入札系大規模医療機関にすべて流れた残りの供給になり、11月には一度間違いなく不足します。納入価格も言い値ですから、継承開業であれ最初から仕入れ価格や入荷量など注意深い対応が必要です。新型コロナ感染対策では、後半には厚労省から多大な物資・物品の提供を受け感謝しておりますが、本当に大変だったのは昨年3~5月で、卸は完全に手を引き手に入らないやら高騰やら、大変な目に遭いましたが、今は昔です。消毒用エタノール、アル綿から防護具、N95マスクなど、備蓄は必要かも知れません。開業にあたっては、感染・免疫系の裏事情に精通することをお勧めします。いずれにしましても初めは少し控えめに(必要時には大胆に)やることをお勧めします。

「保健」に関する注意点II

さて、今回から2回にわたってお送りします医院運営の三本柱のひとつ「保健」に関する継承開業時の盲点の5つのポイントのうちのひとつが完結しました。残るポイント②カルテ記載③検査頻度④長期処方⑤混合診療・重複診療・勝手受診・代理受診につきましては次回に譲りますので、是非またここでお目にかかれますと幸いです。

続きは、関連コラムの《医院運営の三本柱》#3保険部門➁よりご覧ください。

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連載コラム第1弾 《医院譲渡のポイント》

連載コラム第2弾 《医院運営の三本柱》#1

連載コラム第2弾 《医院運営の三本柱》#3 保健部門②

連載コラム第2弾 《医院運営の三本柱》#4 労務・税務部門

【関連動画】

柳島クリニック 吉川英志先生 医院継承インタビュー

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