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連載コラム第1弾 《医院譲渡のポイント》

  • 医療継承コラム

本日は当社の仲介により埼玉県草加市にある「柳島クリニック」を継承開業された、吉川英志先生に寄稿いただきました連載コラム『クリニックを継承開業した経験から見えた医院継承とは?』をお届いたします。

今回のテーマは《医院を譲渡する際のポイント》についてです。

実際に継承開業された吉川先生ご自身が感じられた重要なポイントを語っていただいております。これから医院継承をご検討される先生方にとってご参考になる内容となっておりますので、是非最後までご覧ください。

皆様こんにちは。五輪真っただ中のこの時期いかがお過ごしでしょう。今年も早7月が終わり、半分以上が経過しましたが、年末までには昨年度の政府補助金が振り込まれるだろうかなどとやきもき、いえ、補助金などもう半分あきらめの境地に近い先生方もいらっしゃるのではないでしょうか。
余計な前置きはさておき、本日は医師の古書(医学書)、書籍事情について考えていきたいと思います。そんな雑談に絡めて、病医院継承ポイントのひとつに言及させて頂きたいと思いますので、お忙しい中、少し体と精神の緊張をほぐして、お付き合い頂けますと幸いに思います。

医師にとって医学書とは

早速ですが医師と医学書、医学雑誌とは切っても切れない縁があります。直近では、毎月送られてくる某医師会雑誌、各学会誌、たまに気の利いた総説やあるテーマを非常に良くまとめた書籍調の雑誌など、時に非常に便利で内容の濃い、良いものがありますが、実際にはどの程度そういった雑誌の内容にまで目を通されますか。私など、郵送で送られてくるものは、住所などの個人情報部分のみシュレッダーにかけて、他はゴミ箱にポイなんてことが度々ですが・・。論文を盛んに書いておられる先生、それにかかわる医局などには、以前は有名雑誌が毎週、毎月送られ、雑誌書架にNature、Scienceはじめ、Cell、Lancetなどなどとともに各科の重要な論文雑誌の表紙が見えるように飾られていましたし、教授室や書庫には、金色文字の英語タイトルの分厚い本が美しく並べられて、アカデミックな雰囲気を感じた時代もあったかと思います。時代は移り変わり、学術雑誌はオンラインでというのが一般的となり、図書館に行けば文献コピーし放題、マイナーなものも大学図書館同志の依頼でコピーを簡単に入手可能となり、美術書的英語版教科書の存在価値も低下したように感じます。デジタル化は二次元の世界にまで容赦なく浸透し、紙媒体を駆逐し、更に医学・医療の急速な進歩はそれに拍車をかけ、美しい装丁の医学書はパソコンのモニターにとって代わられてしまいました。

さて、まだお若い先生方も含め、学生時代、そして、研修医、学位・専門医取得、留学、その後のキャリアアップ、さらには開業といった医師・研究人生の重大な局面はもとより、日頃の研鑽においても、医学書(今後医学雑誌を含めてそう呼びます)とは常に縁が切れない状況であると思います。俺は、すべて頭の中に入れている、ちょっとだけネット検索すれば事足りる、「今日の○○指針」には従わない、「今日の○○薬」なんて使ったことがない、といった優秀な先生方も、今少しだけ古書、正確には昔使った医学書の話題にお付き合いください。

医学書への思い入れと買取査定

自宅や実家の部屋や書庫からふと学生時代に使った教科書がまとまって出てきた、見つかったなんて経験がおありかと思います。もちろん医学書ですから一冊一冊それなりのボリュームがありますし、書籍としては立派なものですが、もう不要だから買取に出してみようかと考えたことがある先生はどれくらいいらっしゃるでしょう。その時点で、買取の問い合わせ自体が面倒くさい、重過ぎてBOOK OFF まで運ぶ気力が失せる、といったことが原因でその場で挫折した先生も多いと思います。更に一歩進んで、実際に買取査定をしてもらった、という先生はかなり少数派ではないでしょうか。実は、そこで留まってしまい、その先に至らない理由というのがある訳でして、暗黙のうちにその事を了解してしまっているというのが現実と思います。すなわち、①二束三文の値段で買い取られる、②買い取り業者からすればただの売れない書籍・紙きれであるという認識がある、ということを知ってしまっているからに他ならないでしょう。裏を返せばそれは、自分自身が大変お世話になって、使い込んできた教科書であり、自身の医師としてのキャリアを支えてくれた医学書、医師国試や専門医試験など、この時だけはと勉強した証としての医学書であり、並々ならぬ想い入れがあるにもかかわらず、第三者の評価に値しないものとして取り扱われることへの拒否感からではないでしょうか。これらの点を今少し補足すれば、医学書は時代と共に内容が古くなってしまう、(医学・医療面の進歩によって)内容が変わったり、当然、一般の方々からはほとんど見向きもされず、売れることは無いというものです。それこそが、医学書が購入時高価(内容云々ではなく、買う人が少ないから高価にならざるをえない)であるにも関わらず、減価償却?著しいゆえんであり、漫画本以下に成り下がる時が来るということの理由です。

医院譲渡の壁「特殊性」と「想い入れ」~医院は医学書に似ている~

ここまで書いて来まして、お察しのつかれた先生もいらっしゃるかと思いますが、医学書はじめ、医療機器それに病医院、いずれもそれを売りに出す際に査定と売買価格の設定、それらと相反するかのような売主のそのものへの強い思い入れがあると思います。病医院の継承、M&A は事業、ビル・建物など一般の売買とはかなり趣を異にします。最近では、電通、エイベックスの自社ビルの高額な不動産売買が話題となりましたが、一般の企業、不動産などの売買と異なるのは、承継者や買い手が日本の、しかも医師に限られるということであり、それだけで相当限られた範囲の市場とならざるを得ないと考えた方が良いでしょう。その意味では、医学書同様、買い手は万人が対象ではありません。さらに病医院は価値のあるうちに売らなければ買い手が現れず、すなわち廃院を意味します。それは患者さんや職員にとっても不幸です。そんな事例の中には、継承の決断に至るまでにあまりに時間がかかりすぎて力尽きた、結局適切な継承者が現れなかったというような例もあるでしょうが、その裏には実は、売り手の想いとしての、今あるすべてをそのままの形で継承してもらいたい、継承者のある一部に足りない部分があって、妥協できない、なかなか最後の決断がつかない、金額に納得いきかねる(少々欲が出た)といった、今の自身の病医院への熱いこだわりと強すぎる想い入れが邪魔している場合があると思います。更には、病気や怪我で病医院が立ちいかなくなってから継承、売却を考え始めて既に時遅し、数十年前のやり方でずっとやってきた老医師が、継承を考えたが、ふたを開けてみたら、現在の医療とかけ離れ過ぎていたが故に継承者どころか管理院長すら見つからない、後者のような竜宮城のような病医院は、最近実際に耳目にした内容の所です。こうなってからでは医学書そのものです。

長くなりましたので、病医院の継承(売りに出す際)のポイントの2点を再度まとめておきましょう。

1)買い手は万人でなく医師のみに限られるという市場の狭さ

2)時期を逸すると売れなくなる

そうです、医学書に見てきた運命そのものが病医院にもあてはまってしまいます。

医院譲渡成功の秘訣

ここでもう一度先に書きました医学書への想い入れの記載を繰り返します。自身が使ってきた医学書を売らない理由とは、①二束三文の値段で買い取られる、②買い取り業者からすればただの売れない書籍・紙きれであるという認識がある、ということを知ってしまっているからに他ならないでしょう。裏を返せばそれは、自分自身が大変お世話になって、使い込んできた教科書であり、自身の医師としてのキャリアを支えてくれた医学書、医師国試や専門医試験など、この時だけはと勉強した証としての医学書であり、並々ならぬ想い入れがあるにもかかわらず、第三者の評価に値しないものとして取り扱われることへの拒否感からではないでしょうか。ただし、時に医学書は、後輩へと早期に譲渡されることで有効に活用されるといった例外もあると聞いております。

上の医学書のたとえは少し極端かも知れませんが、今まで自身が作り上げてきた病医院、立派に勤め上げてきた病医院を手放すことには、これまでの想い入れが強いのは当然でしょうが、一度決心が固まれば、医学書とは異なり、かなり満足のいく形で継承してもらうことが可能であり、それに伴う相応の金員も受け取ることができます。今年度になって非常に残念なことに、某市内50代の先生方お二人の訃報が届きました。医師といえども先の事は分かりません、したがって、継承のためにはある程度の準備をしておくことが必要ですし、ある程度の時間は必要です。

病医院を手放し継承してもらう決意をし、実際の行動に移し、成功させる際に重要なことは、

①決心の時期を誤らない事、

②十分な時間的余裕をもって準備を進めること、

③必要以上の欲のようなものは捨てること、

④そして親身になってサポートしてくれる良きパートナーに出会うこと、

以上のように結論できると思います。
蛇足ではありますが、④について少々言及させて頂きますと、私自身は医師であり、継承関係の業者の者ではありませんが、継承、M & A を扱う業者さんの何件かに実際に問い合わせをしたことがあります。今回のテーマからは少し逆方向の内容(事業買う立場)となりますがご了承ください。最近の開業は、この継承開業が非常に認知度を上げ、開業スタイルの主流に近い状況なのでしょうか、人気のある案件などに問い合わせをしても軽くあしらわれて終わりです。それすなわち、④の重要性そのものを意味することであり、信頼できるパートナー、親身になってくれる業者と出会えるか否かの問題です。メディカルプラスさんにはメディカルプラスさんにしかない、あるいはそこでしか実現されない親身さがあると思います。そういった専門且つ親身のパートナーによる目の行き届いたサポートが無いならば、継承やM & A は単にオークションへの素人出品です。使い古した医学書を自身でオークションにかけるのか、信頼できるパートナーに「継承」という形で託すのか。答はひとつではないでしょうか。

今回長々と書き記して参りました内容が少しでも多くの、閉院・廃院回避への動機となって、有効な継承に結びつくことを願って、筆を置くことにいたします。いつかまた是非お会いしましょう。

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