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医院継承(承継)、クリニック売買、医療法人M&Aのメディカルプラスです。
本日は旧法の持ち分あり医療法人のM&Aと新法の持分なし医療法人M&Aとの比較について説明いたします。平成19年の医療法改正後に設立された持分無し医療法人のM&A成約事例は相対的にまだ少ないのですが、今後は徐々に増えていくと思われます。
なぜ出資持分無し医療法人のM&Aは少ないのか?
持分無し医療法人のM&A成約事例が少ないのには、大きく分けて二つの理由があります。
一つ目の理由は、持分無し医療法人が売りに出されることが少ないということが挙げられるでしょう。新しい医療法人制度がスタートとしたのは平成19年4月であり、それからまだ十年ちょっとしか経過していません。開業時の医師の平均年齢がおよそ40歳ですので、医療法改正後の持分なし医療法人としてスタートした院長は50歳前後ということになります。まだM&A、事業譲渡を考える年齢的なピークに至っていないのものと思われます。あと10年後くらいになると、持分無し医療法人を設立した院長が60代前半になりますので、今後は持分なし医療法人M&Aも増えると予想されます。
二つ目の理由として、旧法の持分あり医療法人から持分無し医療法人への移行が進んでいないことが挙げられます。というのも、持分あり医療法人においては「財産権」が認められていることから、医師からの人気が根強いのです。国が持ち分無し医療法人への移行を勧めてはいますが、順調に進捗しているとは評価しづらい部分があります。
財産権=持分あり医療法人の方が有利?
持分あり医療法人は、出資持分(財産権)が認められている分、持分無し医療法人に比べて有利だと言わることがあります。
医療法人は非営利ですから、黒字により生じた利益を出資者に配当することができません。したがって、利益が蓄積されやすく、利益剰余金の金額が膨らんでいき、出資持分が高額になるケースが多くなります。
出資持分(財産権)が認められている持分あり医療法人であれば、第三者に経営権を譲渡する際、当初の拠出額と合わせて、利益余剰金の部分も分配を受けることができるという訳です。
これに対し、持分なし医療法人では、当初の拠出額しか受け取ることができず、利益余剰金については国などに寄付しなければなりません。創業者利益を受け取ることができないように見えますので、持分無し医療法人について不公平感を覚える医師が多いことも納得できます。
持分あり医療法人の財産権については以下のブログで詳しく解説しておりますのでご覧ください。
持分無し医療法人は相続税対策になることも
一見すると抵抗を感じる持分無し医療法人ですが、実は持分あり医療法人に比べて必ずしも損だと言い切ることはできません。
なぜならば創業者利益については、蓄積された利益剰余金を退職金として受け取ることができるためです。出資持分に対する払戻として受け取るか、退職金として受け取るのかという違いだけで、創業者利益部分については確保することができるのです。
それだけではなく親子承継ができる方に関しては、むしろ持分無し医療法人の方が税制面で有利といえる側面があります。蓄積された利益剰余金を退職金として受け取らなければ、その分だけ相続税の評価額をおさえることができるためです。金額にもよりますが、一般的に相続税の負担はかなり大きくなります。蓄積された利益剰余金をそのまま持分無し医療法人の内部に留保してお子様に相続すれば、有効な節税対策になります。
持分無し医療法人は持分あり医療法人に比べてマイナス面が強調されがちですが、必ずしもそうとは言い切れないということが、お判りいただけるのではないでしょうか。
ここまで述べたきた通り、医療法人を譲り受ける側が医師であれば、利益剰余金は将来医療法人から退職金として受け取ることが出来るため、必ずしも財産権がある必要はないと思います。一方、株式会社が医療法人を買収して医療経営をおこなう場合は、将来的なM&Aや譲渡を考慮すると持分あり医療法人の譲渡しやすいでしょう。なぜならば株式会社が資本を拠出して医療法人を買収しても、医療法人は利益剰余金の配当が禁止されており、株式会社が医療法人から退職金を受け取ることもできないため、出資額に応じた利益剰余金の払い戻し請求をするには医療法人を解散するしか方法がありません。その点持分あり医療法人であれば内部に蓄積された利益剰余金を出資持分の評価額にて反映し、出資持分を第三者にM&Aにより譲渡することができます。医師が医療法人をM&Aで買収する際も、将来的にM&Aにて譲渡を視野に入れている場合、持分あり医療法人であれば株式会社も買手候補者に含まれてくるため、買い手が見つかる可能性が高くなります。
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※本コラムは2020年6月22日に加筆修正いたしました。