早期の準備(家族間での相談などをしっかりと済ませること)
クリニックの事業継承を検討する際、①⼦供(親族含む)へ継承、②勤務医(知⼈や後輩)へ継承、③第三者へ継承、3つの選択肢があります。まずは親族に医師がいる場合、なるべく早く本⼈に継承する意思があるか確認することが⼤切です。「息⼦(親戚)は医師なので、いずれ継承するだろう。」と相談を先送りにして、いざ相談してみると「開業するつもりはない。」「診療科⽬が違うので継承できない。」「時期が合わない。」など、コミュニケーション不⾜により、想像とは違ったことが起こりえます。
第三者医院継承は、相談から成約まで2年以上掛かることもあり、なかには後継者が⾒つからず、廃院されるケースもあります。将来クリニックの継承をお考えでしたら、早めに⼦供や親族に意思確認を⾏い、継承する意思がなければ、早めに仲介業者に相談し、候補者を探し始めることでよい後継者に巡り会える可能性が⾼まります。
医療に特化した仲介会社へ依頼(多くの候補者の中から、良いご縁のある⽅を紹介)
クリニックの事業継承は⼀般企業の事業継承と⽐較して、患者情報の引継ぎや関係⾏政への届出のタイミングなど、医療制度に関する専⾨的な知識が必要になります。このように、医療特有の事情を理解したうえで、細かい⾏政との調整や⼿続きが必要になるのが、クリニック事業継承です。医療法⼈の定款変更を伴う場合は、⾏政に定款変更を申請し、⾏政の認可を得ることが必要になります。認可されなければ、そもそもクリニックの事業継承⾃体が成⽴しないということも考えられます。
加えて同じようなケースのクリニックの事業継承でも都道府県など管轄する⾏政によって⾒解が異なるケースがありますし、同じ都道府県であっても定款変更を依頼する⾏政書⼠によっても認可されることもあれば否認される可能性もあります。ここに医療法の特殊性と専⾨性が必要になります。
株式会社の場合でも、業種によっては⾏政の認可が必要な業種がありますが、株式会社に対して許認可を出しているため、例えば会社から許認可事業を事業譲渡しようとした場合、対象事業を運営会社が変わることになりますので許認可の引継ぎが認められないということも起こり得ると思います。
これまで述べてきた理由により、クリニックの事業継承は、それを専⾨的に⾏う業者であっても、定款変更を否認されるリスクがゼロではありません。ですので、クリニックの事業継承を専⾨的に⼿掛ける業者以外に依頼することは、あまり正しい選択とは⾔えませんし、業者に頼むのであれば信頼が置ける業者を探すことが重要になってきます。
患者が付いているうちに譲渡を検討(盛業しているうちに)
後継者は収益性の⾼い物件を探しています。つまり、既に収益性が悪化しているなど問題が表層化した案件ではなく、経営が順調に⾏われているクリニックの⽅が、事業継承が成⽴しやすいです。仮に経営が悪化してから後継者を探しても、⾒つからないということも考えられます。この場合には、残念ながら廃院を選択せざるを得ません。廃院には多額のコストがかかる他、地域医療へ与える影響や、スタッフが職を失うなど、多くの⽅⾯に気を割く必要があります。
このような観点からすれば、クリニック事業継承は、後継者問題やアーリーリタイアという問題が切迫化する前に、ある程度時間的な猶予を持って準備することが重要であると⾔えます。
譲渡条件(譲渡価格・賃料・譲渡資産など)を確りと整理、条件には幅をもたせて柔軟に考える
「条件整理よりもすぐに後継者を紹介してほしい。」と相談を受けることありますが、まずは、募集条件を決めることが⼤切です。クリニックの事業継承を専⾨とする事業者であれば、医療法⼈や個⼈医師など常に複数の継承希望者よりお問い合わせがありますので、候補者を紹介することは可能です。ですが、譲渡条件の整理が出来ていない状況で継承候補者と⾯談を⾏なっても、譲渡条件が整っていないため、条件が⼆転三転しトラブルになってしまいます。
また、候補者の出⾝⼤学や職歴などに拘り過ぎず、候補者の⼈柄もよく、継承に前向きとの印象を感じられましたら、候補者に寄り添い条件を緩和するなど、背中を押してあげることも事業継承成功のポイントです。