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整形外科医が知っておきたい開業の実情 ~その収益性と戦略とは~

  • 医療継承コラム

こんにちは。メディカルプラスです。本日は「整形外科医が知っておきたい開業の実情」をテーマに、整形外科開業医の収入水準にも言及しながらお伝えいたします。

ご自身のクリニックを開業したい思いがある一方で、今後さらに加速するとされている少子高齢化による人口減を懸念し、開業に対してプラスのイメージを思い描く事ができない整形外科医の方も多いのではないでしょうか。本記事では、整形外科医としての勤務医と開業医の年収の違いや開業する事のメリット・デメリット、開業で成功するための戦略等についてご説明してまいります。クリニックM&Aを検討されている皆さまのお役にたてますと幸いです。

現在の整形外科医の総数と整形外科クリニックの数

まず初めに、日本国内の整形外科医の総数と整形外科を標榜しているクリニックの数について見てみたいと思います。
令和4(2022)年の医師・歯科医師・薬剤師統計の概況より、日本国内の医療施設に従事する医師数は327,444人(病院:220,096人/クリニック:107,348人)であり、主たる診療科別の医師数は22,506人(病院:14,575人/クリニック:7,931人)が整形外科医と内科医に次ぐ2番目に多い人数となります。
一方、令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況より、整形外科クリニックの数は、12,439施設と39科目中5番目に位置しております。

上記数字の通り、整形外科医が非常に需要の多い専門職であり、高齢化社会に伴い、これからもますます重要が高まり、活躍の場が多くなる診療科目であることが分かります。

整形外科における勤務医と開業医の年収の違い

まずは、勤務医の平均年収を見ていきましょう。
少し前のデータになりますが、【労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」P.30】のデータによると整形外科医個人の平均年収は、12,899千円となっております。
一方で開業医全体の年収は、令和5年に実施された中央社会保険医療協議会の「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査)報告」によると、全診療科目平均年収は31,411千円となっており、整形外科をメイン科目として運営しているクリニックの平均年収は28,365千円となりますので全診療科目平均年収より低めとなっています(ただし個人クリニックのみ、医療法人は含まず)。これは外来診療収益やその他の医業収益から、給与や医薬品費、設備賃借料などの経費を引いた損益差額となり開設者個人の年収ではございませんのでご承知おきください。

この様に、勤務医と開業医の年収差は約2.2倍もありますので開業することで勤務医時代よりも多くの収入を得るチャンスがあるかと言えますが、開業医はその収入を確保するために様々な経営努力やマーケティング戦略が必要となります。

勤務医と開業医の違いを徹底比較!

整形外科開業のメリット

①.高い収入の可能性
開業をすることでクリニック運営に成功すれば、勤務医時代の年収よりもはるかに高い年収を実現することが可能です。

②.自由な診療時間の設定
開業医は自身の診療時間を自由に決めることができます。そのため、以前の勤務先や提携病院と手術室の使用許可を得ることで開業しても自身のクリニック休診日に引続き手術を行うことも可能です。また、激務から解放されることで診療とプライベートのバランスを取りやすくなりQOLも上がることでしょう。

③.専門性の発揮
自身の専門性や得意分野を活かし、特定の治療法や技術に特化することで、競合クリニックとの差別化が図ることで、競合クリニックがひしめく中であっても診療圏を超え、多くの患者様の受療ニーズを得やすくなります。

④.地域貢献
クリニックを開業することで、その地域に対する医療サービスの提供が可能になります。クリニック開業地は、物理療法が必要とされるエリアなのか?運動療法が必要とされるエリアなのか?の地域特性を見極め、地域住民のQOL向上と地域医療の向上の一翼を担うことができます。

⑤.経営の自由度
経営者としてクリニック運営を行うため経営戦略やマーケティング戦略、診療方針に関する決定権があり、自由度が高いです。勤務医では出来なかった集患対策や診療内容ついても試行錯誤しながら、より効率的な運営やサービスの提供が可能となります。

整形外科開業のデメリット

①.初期投資の負担
開業には、クリニックの規模や開業形態、導入機器、内装設備、人件費、マーケティング対策、運転資金などの大小で初期投資は変動いたしますが、おおよそ8,000万円~1億円が必要となるかと思われます。

②.収益が安定するまでの時間
新規開業当初は患者数が少なく、初月から収益黒字化でスタートすることは珍しいとされております。一般的な期間となりますが、新規開業で収益が安定するまでにはおおよそ1年~1年半はかかると言われるため、初期の収支が赤字になる可能性もあります。

③.経営の難しさ
クリニックの経営者として、知識やスキルも求められます。集患対策では、マーケティングを駆使し、スタッフの離職を極力少なくするために人事管理、財務管理の徹底を行いながら患者様へ医療の提供を行う必要があります。

④.医療リスクの負担
開業医として、自身の診療に対する医療リスクや責任を負うことになります。これにより、トラブルや訴訟リスクが増加する可能性があります。

⑤.地域競争の激化
開業地にもよりますが、主に都市部では、これからも新規開業する競合が増加することで競争が激化することが想定されます。新規競合に負けないような差別化やサービス向上に向けた努力による患者様からの信頼獲得が不可欠です。

整形外科開業戦略のポイント

整形外科を新規開業する目線で見て参りましたが、成功させるための戦略として下記5項目に注視することで新規開業でのスタートダッシュを目指してください。

新規開業の戦略

①.立地選定
開業する地域の人口動態や医療ニーズを十分に調査し、ターゲットとなる患者層が多い地域を選定することが重要です。患者層が明確であれば、物理療法がメインか運動療法がメインかの方針を決めやすくなるかと思います。

②.マーケティング戦略
デジタルマーケティングや地域密着型のプロモーションを行い、知名度を高めることが必要です。患者に対するアプローチ方法を検討し、効果的な宣伝活動を行います。

③.サービスの差別化
競合クリニックとの差別化を図るために、独自の診療メニューやサービスを提供することが求められます。例えば、最新の医療機器の導入や専門性の高い治療法を取り入れることが考えられます。

④.スタッフの採用と教育
優れた医療スタッフの採用と、その教育が重要です。スタッフの質が診療の質を左右するため、適切な人材を確保し、教育・研修を行うことが成功の鍵となります。

⑤.財務管理
開業初期には特に厳密な財務管理が求められます。予算管理や資金繰りの計画を立て、安定した経営基盤を築くことが必要です。

上記の注力すべきポイントを押さえ、ご自身が思い描いたレイアウトや医療機器の導入、経営方針・理念全て詰め込んだクリニックを立上げ地域医療に貢献することを選択される勤務医の先生方がいる一方で既に開業しているクリニックを継承開業する勤務医の先生が増えている現状もございます。下記に継承開業によるメリットについて触れさせていただきますのでご参考にしていただけますと幸甚でございます。

継承開業のメリット

①.地域医療の継続へ貢献
後継者不在のクリニックを第三者継承することで、そのクリニックが担ってきた地域医療の継続が確保されます。継承により大きな社会貢献を果たすことに繋がります。

②.設備・医療機器・従業員確保等、開業コストが抑えられる
クリニックの既存設備や医療機器をそのまま引き継いで活用し、既存の医療スタッフに引き続き勤務していただくことにより、設備投資や人材採用にかかる負担を軽減し、開業コストを最小限に抑えられます。

③.患者さんを引き継ぐため、開業初月から利益を見込める
「集患」は経営を左右する大きな要素ですが、継承開業は地域の住民にとって馴染みのあるクリニックを引き継ぐことになりますので、それまでの患者基盤をすぐに活用し、開業初月から利益を見込むことが可能です。

④.開業までの時間を短縮できる
ゼロからの開業は、設備・従業員採用・集患だけでなく、開業場所の選定や土地取得、戸建ての場合は建物建築など、複数の工程に時間を要します。一方、継承開業では短い準備期間でクリニックを開業することができます。

⑤.信用と実績を引き継げるため銀行融資が受けやすい
これまでの継承元の実績をバックボーンに、銀行融資が受けやすいことが多い傾向があります。

このように、既にその地で地域貢献を重ねてきたクリニックを継承し、患者様の声を聴きながら自身の理想と患者の理想をすり合わせながら双方の理想とするクリニックを作り上げていくというのも、1つの開業スタイルと言えるでしょう。是非「地域医療への貢献」という視点もお持ちいただき、開業をご検討いただければと思います。

継承開業とは?~継承開業のメリット・デメリット~

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