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こんにちは。メディカルプラスです。
本日は「譲渡契約締結からクロージングを迎えるまでの引継ぎ期間に発生するトラブル」についてお伝えいたします。本コラムをお読みいただいている方には、すでに継承された先生、今まさに引継ぎされている先生、これから継承される先生がおられると思いますので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
引継ぎ期間の業務内容の解像度を高める
「引継ぎ期間に実施すること」と聞くと、患者さんや従業員の引継ぎ、保健所などの行政手続きが思い浮かぶかもしれません。これらは正しいですが、さらに具体的で詳細な計画を立てることが重要です。
なぜなら、クリニックの第三者継承で最もトラブルが発生するのは引継ぎ期間中だからです。最終契約締結まで、売主様と買主様は仲介者やFAコンサルタントの支援を受け、資料作成や分析、適切なアドバイス、各種業者との交渉など、徹底したサポートを受けています。
しかし、多くのコンサルティング会社は、譲渡契約締結までのサポートに限られており、その後の引継ぎは売主様と買主様が直接行うことになります。これまで中心となっていたコンサルタントがいなくなると、誰が何をどのように進めるべきか分からず、困惑することもあるでしょう。
そのため、「引継ぎ期間に実施すること」について解像度を高め、トラブルを未然に防ぎましょう。それでは、具体的な引継ぎ期間の実務内容について見ていきましょう。
引継ぎ期間の実務内容とは?
今回は個人クリニックの売主様と買主様に焦点を当て、引継ぎ期間に対応する一般的な業務を紹介します。一部重要な項目については注記も付けていますので、あわせてご覧ください。
個人クリニック:売主様
1. 患者さん・従業員への告知 買主様と相談し、伝え方やタイミングを決めましょう。 |
2. 既存取引先への解約告知 医療機器保守会社、連携施設、嘱託先、リース会社、不動産管理会社、広告代理店(HP管理会社)、検査会社、廃棄物処理会社、薬品卸会社、警備会社、清掃会社、金融機関、保険会社、医療機器回収業者、顧問先士業など。 【POINT】…買主様が既存取引先と再契約を結ぶ場合もあるため、取引先一覧を作成し、買主様に情報提供しながら解約を進めましょう。 |
3. 私物の整理 |
4. 医療機関としての届け出 ●診療所廃止届(保健所) 【POINT】…第三者継承の場合、保険診療の遡及請求を行いますので、廃止届と開設届の間を空けることはできません ●保険医療機関廃止届(地方厚生局) ●指定医療機関廃止届(市区町村) ●医師会退会届(所属医師会) ●資格喪失届(都道府県)※医師免許証を返納する場合 ●レントゲン廃止届(保健所)※レントゲンを使用している場合 ●麻薬取扱業者業務廃止届(都道府県)※麻薬を取り扱っている場合 |
5.個人事業主としての届け出 ●個人事業廃止届(税務署)※国民健康保険・国民年金に加入している場合 ●雇用保険被保険者資格喪失届(ハローワーク) ●消費税課税事業者選択不適用届出書(税務署)※自費診療売上1,000万円以上 ●健康保険の切り替え(医師会・協会けんぽなど) ●転送届(郵便局) |
個人クリニック:買主様
1. 患者さんへの認知 継承前の(常勤・非常勤)勤務 |
2. 既存従業員との面談・採用 既存従業員が全て残留するとは限りません。速やかに雇用状況を把握し、従業員と面談して残留の意思確認をしましょう。 |
3. 新規・既存取引先との折衝 医療機器保守会社、連携施設、嘱託先、リース会社、不動産管理会社、広告代理店(HP管理会社)、検査会社、廃棄物処理会社、薬品卸会社、警備会社、清掃会社、金融機関、保険会社、内装工事業者、顧問先士業など。 |
4. 医療機関としての届け出 ●診療所開設届(保健所) 【POINT】…テナントの収容人数に合わせた防火管理者講習を受けてください。 ●保険医療機関指定申請(地方厚生局) 【POINT】…遡及請求の申請ができるよう、引継ぎ期間中に勤務が必要となります。 ●指定医療機関申請(市区町村) ●医師会入会手続き(医師会)※入会希望があれば ●レントゲン設置届(保健所) 【POINT】…クロージング当日から診療するため、売主様の協力を得て事前に漏洩検査を実施しましょう。 ●麻薬施用者業務届(都道府県) 【POINT】…都道府県により管轄が異なるため注意しましょう。 |
5. 個人事業主としての届け出 ●個人事業開業届(税務署) ●国民健康保険・国民年金加入届(市区町村) ●雇用保険加入申請書(ハローワーク) ●労災保険関係新規加入手続き(都道府県労働局) ●消費税の課税事業者の登録届出書(税務署) 【POINT】…自費診療の売上が1,000万円を超える場合は、譲受日から1ヶ月以内に申請が必要です。 |
6. 金融機関との交渉 |
これらは一般的なクリニック継承時に必要な手続きです。診療科目によっては、これ以外の申請が必要になるケースもあります。
引継ぎ期間中のトラブル実例
個人クリニックの継承では、譲渡契約締結からクロージングまでの間、売主様は自身のクリニック経営を、買主様は勤務をしながら多くの手続きを限られた時間で行わなければなりません。こうした手続きの中には、後々トラブルに繋がるケースもあります。今回は医療機器、従業員、建物(テナント)に焦点を当て、引継ぎ期間中に注意すべきトラブルの実例を紹介します。
ケース1:医療機器関係
◆譲渡資産の医療機器がリース物件で、契約終了後に返却する必要があった。
◆譲渡契約時には使用できていたレントゲン装置が経年劣化で故障し、交換部品がないため新規購入が必要となった。
◆電子カルテ会社が第三者継承時の対応方法を整備しておらず、システムの引継ぎに追加費用が発生した。
◆譲渡された医療機器の使用マニュアルがなく、使用方法に不安がある。
◆売主様が医療機器のメーカー担当者や連絡先を把握しておらず、問い合わせ先が不明だった。
ケース2:従業員関係
◆正社員からパートやアルバイトへの雇用形態変更希望や労働時間の変更希望が出てくる。
◆キャリアプランに不安を感じた従業員が要求をエスカレートさせる。
◆昇進・昇格の機会が減少するのではないかと不安を感じる従業員が出てくる。
◆買主様が従業員と初めて対面した際に、トラブルの原因となる方(パワハラ・モラハラなど)が判明する。
◆雇用契約書と実際の労働条件が異なっている。
◆買主様の診療方針に従わない従業員がいる。
◆雇用主の変更が理解されておらず、不当な請求をしてくる。
ケース3:建物(テナント)トラブル
◆テナントオーナーから新賃料(増額)が要求された。
◆老朽化が進み、譲渡契約締結後にテナント物件に瑕疵が判明し、別途費用負担が発生した。
◆譲渡契約前にテナントオーナーと条件について合意していたが、最終的には不利な条件でテナント賃貸借契約を締結することになった。
◆テナントオーナーが自己管理している物件のため、オーナーサイドの意向が強く交渉に時間がかかる。
◆引継ぎ期間中にMRI装置を導入しようとしたが、過重容量を超えてしまい設置できなかった。
まとめ
いかがでしたでしょうか。引継ぎ期間中に発生するトラブルを事前に認識し、具体的な対策を講じることが大切とお分かりいただけたかと思います。しかし十分に対策を講じたつもりでも、ご不安は尽きないものかと存じます。私たちメディカルプラスは、これまで多くのクリニックの継承を支援してきました。その経験から、引継ぎ期間中に発生する医療機器、従業員、建物(テナント)に関するトラブルの実例と、その対策を深く理解しております。これまでの支援を通じて、私たちがどれほどこのプロセスが複雑であるかを理解しているからこそ、お客さまに最適なアドバイスと調整を行い、徹底的にサポートすることが可能です。
メディカルプラスのアドバイザーは、M&Aの専門知識とクリニック特化の譲渡譲受で培った豊富な経験を持ち、常に先生方の立場に立って対応しております。どんな些細なことでも、皆さまの疑問や不安に耳を傾け、最善の解決策をご提案したいと考えております。その過程でこれまでに関わった全ての先生方からいただいた温かいお言葉が、私たちの支えとなっていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
*今回は「個人クリニックの譲渡引継ぎ」をテーマにお送りしましたが、近日中に「医療法人の譲渡引継ぎ」についてご案内できればと思います。
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